結論:最速はアントネッリ。ルクレールがそれを追い、ハミルトン/フェルスタッペン/ラッセルが第2グループ
今回の比較基準は、**「新品C2で24周+新品C1で20周を走った場合の平均持続ペース」**とした。
C3の終盤スティントは短く、ピット、トラフィック、終盤処理の影響が大きいため、レース全体の実力比較にはほぼ使っていない。
数値は、最速推定のアントネッリを0.0秒/周とした相対差である。小数第1位までの表示なので、0.1〜0.2秒程度の差は同一グループとして読むべきだ。
| 順位 | ドライバー | 推定ペース差 | 信頼度 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | キミ・アントネッリ | 0.0 | B+ | 最速評価。序盤は抑えられたが、解放後のC2ロングとC1短期が非常に強い |
| 2 | シャルル・ルクレール | +0.3 | A | 最もクリーンな基準車。速いが、アントネッリには届かない |
| 3 | ルイス・ハミルトン | +0.6 | B | C1では強いが、C2でトップ2に遅れる |
| 4 | マックス・フェルスタッペン | +0.6 | A- | ラッセルとほぼ同等。ただし総合ではわずかに前寄り |
| 5 | ジョージ・ラッセル | +0.7 | A- | 短いC1は速いが、持続ペース換算ではフェルスタッペンの後ろ |
| 6 | ランド・ノリス | +0.9 | B | 第1スティントは汚れ気味。ハジャー/ピアストリよりやや前 |
| 7 | アイザック・ハジャー | +1.0 | A- | 後半C2が良好。ノリスとの差は大きくない |
| 8 | オスカー・ピアストリ | +1.0 | C | 早期ピットと長いC1で読みにくい。ハジャーと重なる |
| 9 | アービッド・リンドブラッド | +1.6 | B+ | ローソンと同等か、わずかに前 |
| 10 | リアム・ローソン | +1.6 | A- | 中団上位で安定 |
| 11 | ガブリエル・ボルトレト | +1.8 | A- | リンドブラッド/ローソンから一段後ろ |
| 12 | ピエール・ガスリー | +2.1 | A- | コラピントより明確に前 |
| 13 | フランコ・コラピント | +2.3 | A- | ガスリーから0.2秒/周前後後ろ |
| 14 | カルロス・サインツ | +2.7 | B- | C2は悪くないが、全体としてはこの集団 |
| 15 | オリバー・ベアマン | +2.7 | B- | サインツ/オコンと同一クラス |
| 16 | エステバン・オコン | +2.8 | B- | 集団内の影響が大きく、細かい順位づけは難しい |
| 17 | セルジオ・ペレス | +3.4 | B- | C1で苦しんだ |
| 18 | バルテリ・ボッタス | +3.8 | B- | ペレスからさらに一段後ろ |
| 19 | フェルナンド・アロンソ | +4.8 | C | 持続ペースが厳しい |
| 20 | ランス・ストロール | +5.0 | C | アロンソと同レンジだが、わずかに後ろ |

参考扱い
以下の2人は、信頼度が著しく低いためメイン表には含めていない。
| ドライバー | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| アレックス・アルボン | 参考値のみ | 序盤から多ストップで、標準的なC2/C1比較に乗せにくい |
| ニコ・ヒュルケンベルグ | 参考値のみ | レース距離が短く、評価可能なクリーンラップが不足している |
アルボンとヒュルケンベルグは、単純に「遅かった」と結論づけるより、この分析条件では十分に定量化できないと見るべきだ。
分析の前提
フューエルエフェクト
燃料補正は、1周あたり0.053秒で計算した。
基準ラップはレース中盤の26周目相当とし、各ラップタイムを以下の形で補正した。
燃料補正タイム = 実ラップタイム + 0.053 × (Lap – 26)
つまり、序盤の重い燃料で走ったラップは軽く補正され、終盤の軽い燃料で走ったラップは重く補正される。これにより、L5とL40のような燃料搭載量の異なるラップを、同じ土俵に近づけて比較できる。
比較基準を「C2 24周+C1 20周」にした理由
今回のイギリスGPでは、各車の主要なレースペース評価に使えるのは、ほぼC2とC1である。
C3は終盤に短く使われたケースが多く、以下の理由で主評価から外した。
- スティントが短く、タイヤを使い切るアタックに近い
- ピットイン/アウトラップの影響が大きい
- 終盤のクルージング、トラフィック、ポジション確定後のペース管理が混ざりやすい
- レース全体の持続力より、短期的なタイヤ差が強く出る
一方で、C2とC1は多くの車が長く使っており、レース全体の力関係を比較するにはこちらの方が適している。
そこで本稿では、C2で24周、C1で20周を走る想定を基準にした。
これは単なるスティント平均ではない。短いスティントを全開で走ったドライバーのタイムを、そのまま20周や24周に引き伸ばすことはしていない。逆に、長いスティントでタイヤを守っていたドライバーについても、単純に生平均だけで遅いと判断していない。
見るべきなのは、そのドライバーがそのタイヤで、基準距離を走った場合にどの程度のペースを持続できたかである。
どう分析したか
1. まず全車の累積タイムから前後関係を再構成
ラップタイムを積算し、各ラップ終了時点での順位、前車との差、後車との差を再構成した。
これにより、あるドライバーがそのラップでクリアエアだったのか、前車の1秒以内で抑えられていたのか、あるいは前車から自然に離されていったのかを確認した。
ダーティエアの扱いは機械的には決めていない。目安としては以下のように見た。
- 1.0秒以内:強いダーティエア、または攻防の影響が出やすい
- 1.0〜1.5秒:中程度の影響があり得る
- 1.5秒以上:基本的には自力ペースに近い
ただし、1.0秒以内だから必ず除外、とはしていない。
前車に付いていたが、徐々に離されていった場合、それは「前車に抑えられた」というより、その車自身の限界が出ていた可能性が高い。一方で、前車を抜こうとして長く1秒以内に入り続け、タイヤを傷めた後にペースが落ちた場合は、その車本来の持続ペースとしては扱いにくい。
2. ピット、アウトラップ、明らかな異常ラップを除外
ピットインラップ、アウトラップ、明らかに大きく落ちたラップは、基本的にペース評価から外した。
また、単発で異常に速いラップもそのまま評価しない。DRS、トウ、バッテリー消費、オーバーテイク直後などで一時的にタイムが跳ねることがあるためだ。
重要なのは、1周だけ速いことではなく、そのペースをスティントとして成立させられるかである。
3. スティントの「形」を見る
同じ平均タイムでも、意味はまったく違う。
例えば、あるドライバーがスティント序盤に速く、その後大きく落ちた場合、単純平均ではそれなりに見えるかもしれない。しかし基準距離が長ければ、その走り方は持続しない。
逆に、序盤を抑えて入り、後半にペースを上げた場合、生の前半だけを見て「遅い」とは言えない。タイヤを残した結果として後半が速いなら、それも含めてレースペースである。
そのため、各スティントについて以下を見た。
- 序盤に飛ばしすぎていないか
- 中盤の落ち幅はどれくらいか
- 後半にデグラデーションが出ているか
- その落ち方はタイヤ由来か、トラフィック由来か
- 短いスティントを長い基準へ引き伸ばしても成立するか
- 長いスティントで守ったペースを、過小評価していないか
上位勢の分析
アントネッリ:序盤の詰まりを除くと、最速評価が妥当
アントネッリは、レース序盤にハミルトンの後ろで抑えられていた。ここをそのまま本人のペースとして扱うと、評価を誤る。
特に第1スティント序盤は、前車との距離が近く、アントネッリが自由に走れていたとは言いにくい。したがって、この区間はアントネッリの本来ペースを測る材料としては重く扱わない。
一方で、ハミルトンの影響から解放された後のC2は非常に強かった。ルクレールとの同条件比較では、アントネッリはC2で明確に速い。
その後、C1に替えると、若いC1でルクレールに対して大きくタイムを削った。ただし、ここはタイヤ年齢差が非常に大きいので、そのまま「1秒以上速い」とは見ないが、それでも、驚異的なペースであることは間違いない。
総合すると、アントネッリはこのレースで最も強いレースペースを示したと見ていい。
序盤に抑えられた分を適切に除外すると、ルクレールに対して約0.3秒/周前後の優位があったと推定する。
ルクレール:最も信頼できる基準車
ルクレールは、この分析で最も扱いやすいドライバーだった。
極端なトラフィックや特殊な戦略に左右される区間が比較的少なく、C2とC1の両方で長めの評価材料がある。
その意味で、ルクレールは「最速」ではないが、このレースの基準車として非常に優秀だった。
ハミルトン:C1は強いが、C2でトップ2に届かない
ハミルトンは少し評価が難しい。C1ではラッセルやフェルスタッペンの近くで走る時間が長く、タイムが汚れている区間も多い。したがって、生のC1平均だけで評価すると過小評価になりやすい。
ただし、第1スティントのC2を見ると、ルクレールやアントネッリに対して明確に遅れている。
C1では悪くないが、C2の持続ペースまで含めるとトップ2とは差がある。
結論としては、ハミルトンはフェルスタッペン/ラッセルと同じ第2グループ。トップ2の直後だが、アントネッリやルクレールと同列には置けない。
フェルスタッペンとラッセル:ラッセルの短期C1を過大評価しない
第1スティントのC2では、フェルスタッペンがラッセルの後ろで攻勢。ここは素直にフェルスタッペン優勢と見るべきである。
一方、ラッセルはC1の短い区間で非常に速く見える。しかし、これはタイヤが若く、スティントも短めで、攻撃的に使える条件だった。
この速さをそのまま「C1を20周走る基準」に引き伸ばすと、ラッセルを過大評価する。
フェルスタッペン ≒ ラッセル、ただしわずかにフェルスタッペン寄りが結論となる。
丸めるとフェルスタッペンは+0.6、ラッセルは+0.7だが、この差はかなり小さい。
ノリス、ハジャー、ピアストリ
ノリス:第1スティントは汚れ気味だが、グループ先頭
ノリスは、第1スティントでハジャーの後ろにいる時間が長かった。
前車との差はかなり近く、単純なC2平均を見ると本来より遅く見える可能性がある。
そのため、ノリスのC2第1スティントは、生の数字をそのまま評価していない。後半のC2やC1の内容も合わせると、ハジャーやピアストリよりわずかに前に置くのが妥当だ。
ただし、差は大きくない。ノリスは第3グループの先頭ではあるが、トップ5とは明確な差がある。
ハジャー:後半C2が良く、ノリスに近い
ハジャーは後半C2の内容がかなり良かった。
ノリスとの差は表の数字ほど絶対的ではなく、状況次第ではかなり重なる。
一方で、C1の持続ペースまで含めると、ノリスの方をわずかに前に置くのが自然だ。
ハジャーは「中団上位」ではなく、ピアストリやノリスに近い位置で評価すべき内容だった。
ピアストリ:数字は出せるが、信頼度は低い
ピアストリは早期にピットへ入り、長いC1を走る展開になった。
このため、他車との比較条件がきれいに揃いにくい。
C1序盤のペースは悪くない。ただし、長く使う必要があったため、中盤以降の見え方は戦略とトラフィックの影響を強く受けている。後半C2も評価材料にはなるが、全体として確信度は高くない。
そのため、ピアストリはハジャーとほぼ同じレンジに置くが、信頼度はCとした。
「ハジャーより明確に遅い」とも、「ノリスと同等」とも断定しない方がよい。
中団の分析
リンドブラッド、ローソン、ボルトレト
この3人は比較的きれいに序列が出る。
ローソンとリンドブラッドはかなり近い。C2ではほぼ同等、C1ではリンドブラッドがわずかに良い。加えて、リンドブラッドは前車の影響を受ける場面もあり、純粋ペースではローソンより少し上に見てもよい。
ボルトレトはこの2人から一段後ろ。
大きく崩れているわけではないが、C2とC1を合わせた持続ペースではリンドブラッド/ローソンに届かない。
整理すると、
リンドブラッド ≳ ローソン > ボルトレト
という評価になる。
ガスリーとコラピント
C2でもC1でも、ガスリーの方が安定して速い。
コラピントが極端に悪いわけではないが、両コンパウンドを合わせるとガスリーが0.2秒/周前後前にいる。
ここはかなり明確に、
ガスリー > コラピント
と見てよい。
サインツ、ベアマン、オコン
この3人は順位を細かく刻むべきではない。
サインツはC2では悪くない。
ベアマンは前車に詰まる時間があり、生タイムだけでは評価しにくい。
オコンも集団内での影響が大きく、クリアな持続ペースを取り出しにくい。
中心値としてはサインツ、ベアマン、オコンの順に並べたが、実際にはほぼ同一クラスと見るべきだ。
この3人の差は、表の順位よりも不確実性の方が大きい。
ペレス、ボッタス、アロンソ、ストロール
下位グループは比較的はっきりしている。
ペレスはC1で苦しみ、上の中団グループには届かない。
ボッタスはさらに一段後ろ。
アロンソとストロールはロングランでかなり厳しく、終盤まで含めた持続ペースでは大きく遅れている。
このグループは、
ペレス > ボッタス > アロンソ ≳ ストロール
という並びでよい。
まとめ
最終的な勢力図は以下の通りである。
アントネッリ
→ ルクレール
→ ハミルトン/フェルスタッペン/ラッセル
→ ノリス/ハジャー/ピアストリ
→ リンドブラッド/ローソン/ボルトレト
→ ガスリー/コラピント
→ サインツ/ベアマン/オコン
→ ペレス/ボッタス/アロンソ/ストロール
このレースは、単に「誰の平均ラップが速かったか」ではなく、どのタイヤを、どの状況で、どれだけ持続可能な形で使えたかを見る必要がある。その意味で、アントネッリの内容はかなり強い。序盤に抑えられながら、レース全体の持続ペースでは最も高い水準にあった。
インタラクティブグラフ
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- 塗りつぶしの点:前が空いている状態(クリアエア)でのラップを示す。
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