• 2024/11/21 15:31

2022年オーストリアGP レビュー(2)〜中団争いで輝きを見せたのは…!?〜

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 Part 1ではルクレールとフェルスタッペンの優勝争いに着目したが、こちらではメルセデス以降の激しい戦いにフォーカスし、グラフを交えて紐解いていこう。

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1. メルセデスはまだ2強には及ばず

 モントリオールやシルバーストーンで非常に高い競争力を発揮したメルセデス。今回も予選で光るスピードを見せたが、レースペースはどうだったのか?ルクレール、ハミルトン、オコン、アロンソのレースペースを図1に示す。

図1 ルクレール、ハミルトン、オコン、アロンソのレースペース

 ハードタイヤのスティントを見てみよう。第2スティントのクリアエアの部分の比較で、ハミルトンはルクレールに近いペースを見せている。ただし、デグラデーションの大きい展開で2周のタイヤ履歴の差は大きく、その分を換算するとルクレールの0.5秒落ち程度だった。またアロンソはルクレールの0.7秒落ち、オコンが0.9秒落ちとなっている。

 よって今回は、2強に接近するよりかは中団の先頭に近いペースだったと言える。大きな問題はだいぶ解決したようだが、パフォーマンスを安定して発揮するという観点ではまだまだ発展途上なのかもしれない。

2. アロンソの炎の追い上げ

 続いてはアロンソのレースを振り返ってみよう。アロンソは19番手から追い上げて、ピットストップ1回分を失うトラブルがありながらも10位入賞を果たした。

 まずはレースペースについて前出の図1を見ると、第2スティントのクリアエアの部分(33周目から数周、41周目以降)で、非常に小さなデグラデーションを示していることが分かる。上位勢が軒並みグラフが右肩下がりになる一方でアロンソのタイムは上がり続けており、30周のロングスティントの最後までそれを維持している。

 第2スティント後半でのペースは、ハミルトンのスティント終盤と互角、17周新しいタイヤのオコンの僅か0.2秒落ちという驚異的なもので、VSCでピットアウトした瞬間にはノリスの3.6秒後方の9番手につけていた。

 ここから新品のミディアムタイヤで、オコン、ラッセル、シューマッハ、マグヌッセン、ノリスを追う戦略だったが、残念ながらトラブルにより2周連続のピットストップとなってしまった。

 それでもアルボンとボッタスを抜いて入賞したわけだが、これがなかった場合、オコンまで届いた可能性もある。グラフを見る限り、ライバル勢を掻き分けながらでも平均で1:09.0程度で走れていた可能性は十分にあり、10周あれば15秒ほど前にいたオコンにギリギリ追いつく計算になる。

 表1に今季のアロンソとオコンのレースペース比較を示す。

表1 アロンソとオコンのレースペース比較

 序盤戦は、アロンソのキャリアでも殆ど見られないチームメイトに対する遅れが見られ、非常に心配な状況が続いていたが、モナコ以降では卓越したレースクラフトと共に本来の強力なレースペースが戻ってきている。

 ルクレールやフェルスタッペンの非常に高度なバトルが光っているが、ここにアロンソが加わることがあれば想像を絶するものが見られると思われるだけに、アルピーヌの競争力向上は大きな期待が寄せられる部分だろう。

3. 輝いたシューマッハ

 昨年はマゼピンに圧勝したものの、今季はマグヌッセンという非常に強力なチームメイトを得て、遅れを取っていたシューマッハ。しかし今回はスプリントレースでマグヌッセンより速いことを示唆するレース展開を見せ、レースでも明確にチームメイトを上回った。図2にシューマッハとマグヌッセンのレースペースを示す。

図2 シューマッハとマグヌッセンのレースペース

 第1スティントでは終始マグヌッセンの後ろで我慢していたシューマッハ。しかし第2スティントでは28周目から少し前方との間隔が開くと、そこからの数周で自身がマグヌッセンより速いことを証明。ライバルチームとも戦う上で、ハースは2人の順位を入れ替えることを決断した。

 この前後の両者クリアエアでのペースは、マグヌッセンのタイヤが1周古いことを考慮しても、シューマッハが0.2秒ほど上回っており、今季初めてチームメイトを上回るレースペースを発揮した。

 またシューマッハはオコンとも争える位置まで来ていた。図3にシューマッハとオコンのレースペースを示す。

図3 シューマッハとオコンのレースペース

 両者クリアエアの第2スティント後半、シューマッハはオコンとイーブンペースと言ってよく、43周目時点で約2.5秒後方を走っていた。

 ここでアンダーカットを狙いに行ったものの、僅差でストロールの後ろになり、引っかかってしまったことで、ゲームオーバーとなってしまった。この時のシューマッハのピットレーンタイムは22.880秒となっており、これはかなり遅い。ルクレールは静止時間2.4秒でピットレーンタイム21.319秒となっているため、シューマッハの作業時間は4秒前後かかっていたと推測される。

 これが無ければオコンとのアンダーカットを賭けた攻防が見られたわけが、昨年までは無かったこうした「見えない敵とのバトル」に挑戦できるまでにハースのマシンは進歩を遂げてきた。この分野は父ミハエルが非常に得意としていたこともあり、前戦でのvsフェルスタッペン、今回のスプリントでのvsハミルトンなどのコース上での戦いと共に注目していきたいところだ。

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Writer: Takumi