こちらのページではアロンソ、ライコネン、シューマッハという懐かしい顔ぶれが表彰台を独占した2012年ヨーロッパGPを振り返っていこう。
なお、最初に1. レースのあらすじ、次に2. 詳細な分析を記した。
1. レースのあらすじ
まず、予選結果は以下の通りとなった。
POS | DRIVER | CAR | Q1 | Q2 | Q3 |
---|---|---|---|---|---|
1 | Sebastian Vettel | RED BULL RACING RENAULT | 1:39.626 | 1:38.530 | 1:38.086 |
2 | Lewis Hamilton | MCLAREN MERCEDES | 1:39.169 | 1:38.616 | 1:38.410 |
3 | Pastor Maldonado | WILLIAMS RENAULT | 1:38.825 | 1:38.570 | 1:38.475 |
4 | Romain Grosjean | LOTUS RENAULT | 1:39.530 | 1:38.489 | 1:38.505 |
5 | Kimi Räikkönen | LOTUS RENAULT | 1:39.464 | 1:38.531 | 1:38.513 |
6 | Nico Rosberg | MERCEDES | 1:39.061 | 1:38.504 | 1:38.623 |
7 | Kamui Kobayashi | SAUBER FERRARI | 1:39.651 | 1:38.703 | 1:38.741 |
8 | Nico Hulkenberg | FORCE INDIA MERCEDES | 1:39.009 | 1:38.689 | 1:38.752 |
9 | Jenson Button | MCLAREN MERCEDES | 1:39.622 | 1:38.563 | 1:38.801 |
10 | Paul di Resta | FORCE INDIA MERCEDES | 1:38.858 | 1:38.519 | 1:38.992 |
11 | Fernando Alonso | FERRARI | 1:39.409 | 1:38.707 | |
12 | Michael Schumacher | MERCEDES | 1:39.447 | 1:38.770 | |
13 | Felipe Massa | FERRARI | 1:39.388 | 1:38.780 | |
14 | Bruno Senna | WILLIAMS RENAULT | 1:39.449 | 1:39.207 | |
15 | Sergio Perez | SAUBER FERRARI | 1:39.353 | 1:39.358 | |
16 | Heikki Kovalainen | CATERHAM RENAULT | 1:40.087 | 1:40.295 | |
17 | Daniel Ricciardo | STR FERRARI | 1:39.924 | 1:40.358 | |
18 | Jean-Eric Vergne | STR FERRARI | 1:40.203 | ||
19 | Mark Webber | RED BULL RACING RENAULT | 1:40.395 | ||
20 | Vitaly Petrov | CATERHAM RENAULT | 1:40.457 | ||
21 | Pedro de la Rosa | HRT COSWORTH | 1:42.171 | ||
22 | Narain Karthikeyan | HRT COSWORTH | 1:42.527 | ||
23 | Charles Pic | MARUSSIA COSWORTH | 1:42.675 |
先行逃げ切りを得意とするベッテルがポールポジションを獲得、地元のアロンソは11番手に沈み、12番手のシューマッハと共にレースでの追い上げが期待される展開となった。
レースではベッテルが大逃げを打つ。ハミルトンはベッテルに引き離され、後方のグロージャンから攻め立てられる展開に。ハミルトンの後方はトレイン状態となり17番手のウェバーまでが大差なく連なる序盤となる。
序盤数周にわたってヒュルケンベルグの後方で少し距離をおきタイヤを労っていたアロンソ。しかし9周目には、ペースの落ちてきたヒュルケンベルグの背後に迫り、攻めのモードに転じる。
そして10周目にグロージャンがハミルトンをパス。12周目にはアロンソがヒュルケンベルグをパス。クリアエアを得て、レースが動き始めた。ライコネンも13周目にマルドナードを交わしている。
ハミルトンは13周目にピットへ。第2スティントはハードタイヤで引っ張るシューマッハのトレインを抜けていく所から始まる。
アロンソの勢いは止まらず、14周目にはマルドナードを交わし、あっという間にライコネンの背後へ。
ここで小林、ライコネン、マルドナードがピットへ。ザウバーの作業が遅く、ライコネンが小林を逆転する。そしてまだタイヤが生きていたアロンソは翌周ピットに入ると、ライコネンの前へ。オーバーカットに成功する。
ハミルトンは16周目にシューマッハを交わしクリアエアに。アロンソ、ライコネンらはこれからシューマッハトレインの攻略だ。シューマッハの後ろにはセナとウェバーがおり、DRSトレインを形成している厄介な状態だ。
ベッテルは後ろを見ながらの余裕のレース。16周目にピットストップを行い、首位で復帰した。グロージャンも同時にピットストップ。こちらも順調に2番手、ハミルトンの前をキープしてのコース復帰だ。
アロンソは18周目のターン2でアウトから豪快にウェバーをパス。バックストレートではセナを抜き去ると、シューマッハの背後へ。シューマッハは激しく抵抗するが、最終コーナーでブロックラインを取らざるを得ず、ホームストレートでアロンソがスリップストリームへ。ターン2でアウトから仕掛け、ブロックラインのシューマッハは立ち上がりがきつい。クロスラインを取ったアロンソはシューマッハの左に並びかけ、ターン4でインを取る。シューマッハも寄せるが、ブレーキングで前に出たアロンソに軍配が上がった。
ここでシューマッハとウェバーはピットへ。今回パフォーマンスの悪いミディアムタイヤを消化して、ソフトに履き替えた。
ライコネンも20周目にセナを交わすが、ここで抜かれたセナと隙をついて仕掛けた小林が接触。フロントウィングを壊した小林はここで上位争いから脱落してしまう。
レースは28周目、ベルニュとコバライネンの接触によりセーフティカーが導入。上位ではベッテル、グロージャン、ハミルトン、アロンソ、ライコネン、マルドナードがこの機にピットストップを行う。そしてハミルトンはピットストップに時間がかかり、アロンソがこれを逆転した。
一方で、リカルド、ロズベルグ、シューマッハやウェバーらはステイアウトを選択した。これによりセーフティカー明けの順位は、ベッテル、グロージャン、アロンソ、リカルド、ライコネン、ハミルトン、ロズベルグ、シューマッハ、ウェバー、マルドナードとなった。
セーフティーカー明けではアロンソがグロージャンを、シューマッハがロズベルグをパス。さらにバックストレートではベッテルがスローダウンする傍でハミルトンがライコネンをオーバーテイク。1周を終えただけで順位は、アロンソ、グロージャン、リカルド、ハミルトン、ライコネン、シューマッハ、ウェバーとなった。
その後ステイアウトを選択したリカルドは順位を落とす一方、シューマッハは好ペースを維持。ライバルのウェバーが38周目にピットストップを行う一方、41周目まで引っ張りソフトタイヤに交換した。
そして41周目、グロージャンがまさかのストップ。これによりアロンソは4.0秒後ろのハミルトンとの戦いとなった。
そこからのアロンソはハミルトンとの差を3.5~4.0秒でキープしつつ、タイヤを最後まで持たせることに専念。一方のハミルトンは終盤タイヤがキツくなってしまい、55周目にはライコネンがこれを交わした。
一方、シューマッハはSC時にタイヤを交換したライバル勢を尻目に、新しいソフトタイヤで追い上げ。ペトロフ、バトン、ペレス、ディレスタを次々とオーバーテイクした。
そしてハミルトンの後ろにはマルドナードが迫る。56周目、バックストレートエンドで並んだ2台は接触。ハミルトンはバリアへ、マルドナードはフロントウィングを無くすこととなった。
それとほぼ同時にヒュルケンベルグを交わしていたシューマッハは、絡んだ2台を交わして3番手へ。2010年のF1復帰後唯一の表彰台獲得となった。
グロージャンのリタイア後、レースを完璧にコントロールしたアロンソが優勝、ライコネンが2位へ。現フェラーリのエースと、元フェラーリのエース2人による夢の表彰台が実現する形となった。
決勝結果は以下の通り。
POS | DRIVER | CAR | LAPS | TIME/RETIRED | PTS |
---|---|---|---|---|---|
1 | Fernando Alonso | FERRARI | 57 | 1:44:16.649 | 25 |
2 | Kimi Räikkönen | LOTUS RENAULT | 57 | +6.421s | 18 |
3 | Michael Schumacher | MERCEDES | 57 | +12.639s | 15 |
4 | Mark Webber | RED BULL RACING RENAULT | 57 | +13.628s | 12 |
5 | Nico Hulkenberg | FORCE INDIA MERCEDES | 57 | +19.993s | 10 |
6 | Nico Rosberg | MERCEDES | 57 | +21.176s | 8 |
7 | Paul di Resta | FORCE INDIA MERCEDES | 57 | +22.866s | 6 |
8 | Jenson Button | MCLAREN MERCEDES | 57 | +24.653s | 4 |
9 | Sergio Perez | SAUBER FERRARI | 57 | +27.777s | 2 |
10 | Bruno Senna | WILLIAMS RENAULT | 57 | +35.961s | 1 |
11 | Daniel Ricciardo | STR FERRARI | 57 | +37.041s | 0 |
12 | Pastor Maldonado | WILLIAMS RENAULT | 57 | +54.630s | 0 |
13 | Vitaly Petrov | CATERHAM RENAULT | 57 | +75.871s | 0 |
14 | Heikki Kovalainen | CATERHAM RENAULT | 57 | +94.654s | 0 |
15 | Charles Pic | MARUSSIA COSWORTH | 57 | +96.551s | 0 |
16 | Felipe Massa | FERRARI | 56 | +1 lap | 0 |
17 | Pedro de la Rosa | HRT COSWORTH | 56 | +1 lap | 0 |
18 | Narain Karthikeyan | HRT COSWORTH | 56 | +1 lap | 0 |
19 | Lewis Hamilton | MCLAREN MERCEDES | 55 | DNF | 0 |
Romain Grosjean | LOTUS RENAULT | 40 | DNF | 0 | |
Sebastian Vettel | RED BULL RACING RENAULT | 33 | DNF | 0 | |
Kamui Kobayashi | SAUBER FERRARI | 33 | DNF | 0 | |
Jean-Eric Vergne | STR FERRARI | 26 | DNF | 0 |
2. 詳細なレース分析
2.1. アロンソの完勝
まずはアロンソとライバル勢のレースペースを見てみよう。
第1スティントのアロンソは、ヒュルケンベルグの後方でタイヤを温存し、抜いてからは自分のペースで走っているが、このペースでもベッテルには遠く及んでいない。第2スティントを見ても、今回のフェラーリにベッテルやグロージャンと争えるだけの競争力はなかった。
しかしハミルトン相手には、第2スティントでグングンと差を詰め、2回目のピットストップでマクラーレンが失敗したことも手伝って逆転に成功した。ただし、第2スティントのアロンソのペースはデグラデーションを考慮した値でマッサを0.4秒ほど上回っている。これがマッサ並みのペースならば、そしてシューマッハトレインをあっという間に捌いたテクニックがなければ、逆転には至っていなかっただろう。
そして第3スティントも興味深い。序盤ではグロージャンからポジションを守るため、ハイペースで飛ばしたが、グロージャンがいなくなると、器用に4秒後ろのハミルトンと同じペースで走ってコントロールしている。
今回はタイヤに非常に厳しいコンディションの中、中途半端なタイミングでセーフティカーが入ったため、本来より長い距離の第3スティントとなってしまった。その中でタイヤが終わってしまえばハミルトンのように氷の上を走っているような状態に陥ることとなる。「勝てるだけの最小限のペースで走る」ことを見事に実行したアロンソの完勝だった。
そして触れておかなければならないのは、アロンソの強みの一つ「近接戦闘能力」だ。今回もシューマッハトレインをズバズバと捌いていき、タイムロスを最小限にとどめた。そしてセーフティーカー明けではグロージャンをアウトから交わし、本来届かないはずの順位を掴みに行っている。
18周目にウェバーを交わす際は、17周目の最終セクションでラインを変え、最終コーナーでウェバーのイン側へ。よく見るとこの最終コーナーの立ち上がりでアロンソの中間加速がウェバーを凌駕しているのが分かる。これは、アロンソがウェバーを追い回しながらもKERSを余らせて(相手には使わせて)いたことによる考えられる。
シューマッハとのバトルでも、最終コーナーをシューマッハが警戒せざるを得なくすることで、ホームストレートで詰め寄った。しかしシューマッハのブレーキングが深く、ウェバーと同じようにアウト側から被せることが無理と判断すると、クロスラインで2つ先のコーナーのインを取りに行った。
そしてグロージャンとのバトルでは最終コーナーを思いっきりアウト側から入ることで、同様にホームストレートで真後ろにつけた。
アロンソの近接戦闘能力は歴代最強クラスと言ってよく、遥か先のコーナーまで計算してのKERSやDRSの使い方、ラインの創意工夫など引き出しは無尽蔵だ。特に2011年あたりからは一層磨きがかかってきており、この時点で現役最強と呼ばれていたのも頷ける。
2.2. シューマッハ6年ぶりの表彰台
図2に久々の表彰台を獲得したシューマッハとヒュルケンベルグ、そしてアロンソのレースペースを示す。
シューマッハはハードタイヤでスタートし、ペースが伸び悩んだが、第2スティントでソフトを履くと、同じソフトタイヤのアロンソを上回るペースを見せた。セーフティカー出動時にはステイアウトしたが、レース再開後もそのハイペースをキープした。これにより後続との差を開き、尚且つピットストップを遅らせて、ウェバーよりも3周新しいタイヤで第3スティントを戦うことに成功した。
ベッテルのペースからも今回のレッドブルのスピードは群を抜いており、ウェバーからポジションを守り切るには、可能な限りタイヤ履歴の差が欲しかった。だからこそ、リカルドを交わした直後の37周目からのハイペースには戦術的に非常に価値があった。
第3スティントでは前方のドライバーたちを交わしつつ、後方のウェバーに対するディフェンスもあり、非常に難しいレースだったが、ヒュルケンベルグを大きく上回るペースで周回。一時は 15秒以上あったヒュルケンベルグとの差もあっという間に縮まり、56周目にオーバーテイクして表彰台へと繋げた。
前述の通り、中途半端なタイミングで出動したセーフティカーによって、各車長い最終スティントとなってしまったが、メルセデスはあえてセーフティカー中のストップチャンスを無視し、本来のウィンドウでタイヤを履き替えた。これにより、各車が揃ってペースに苦しむ中、ハイペースを刻み続けることができた。ヒュルケンベルグのペース自体はアロンソからも大きくは離されていないが、ラスト数周で崖を迎えてしまっており、かなりのペース差があったことが読み取れる。
因みにシューマッハは、レースを上手くやって退けただけでなく、土台となるペースも素晴らしかった。図3にロズベルグとの比較を示す。
まず第1スティントでは、ソフトのロズベルグに対して、ハードのシューマッハが僅差(0.3秒落ち程度)のペースを見せている。クリアエアかといえば両者微妙な所だが、真のペースはほぼ発揮できている状況だ。
一方で第2スティントでは、ソフトのシューマッハがハードのロズベルグを大きく凌駕しており(1.0秒程度)、総合するとシューマッハはロズベルグを明確に上回っていることになる。連立方程式を解けば0.4秒程度の差だ。
表彰台自体はハミルトンとマルドナードに助けられた部分もあるが、土台のペースの良さ、アロンソやウェバーとのバトル、終盤のオーバーテイクショーと、シューマッハらしさが詰まったレースだったと言えるだろう。
Writer: Takumi