こちらのページではアロンソとクビサがピット戦略を駆使して戦った2008年の日本GPをお送りする。
なお、最初に1. レースのあらすじ、次に2. 詳細な分析を記した。
1. レースのあらすじ
予選結果は以下の通りだ。
PP ハミルトン
2位 ライコネン
3位 コバライネン
4位 アロンソ
5位 マッサ
6位 クビサ
スタートではライコネンの加速が良く、一度は先頭に躍り出る。しかしハミルトンがブレーキを遅らせすぎてオーバーラン、外側にいたライコネンが押し出される形となり両者ともに後退してしまう。
後続もこれに釣られる形で大混乱となり、これをうまく切り抜けた6番手スタートのクビサがトップへ、4番手スタートのアロンソが2番手となる。
レースはコバライネンのリタイアやハミルトンとマッサの接触もあり、クビサとアロンソの一騎討ちへ。アロンソはクビサに食らいついて離れずに第1スティントを進めた。
そしてクビサは17周目に1回目のピットストップ。9.2秒の静止時間でコースへと戻った。アロンソは翌18周目にピットへ。静止時間は7.7秒。短めのストップでクビサの前に出ることに成功した。
アロンソはクビサより軽い状態で猛プッシュ。1周0.5秒以上のペースで差を広げ、ギャップは10秒以上に。そして43周目に自身が、46周目にはクビサが2回目のピットストップを終えると、アロンソは首位をキープすることに成功した。
レースはこれにて決着。アロンソは非力なマシンながら、前戦シンガポールGPに続き2連勝となった。
2. 詳細なレース分析
最初にアロンソ、クビサのレースペースを図1に示す。
Fig.1 アロンソ、クビサのレースペース
アロンソは第1スティントではクビサの背後につけているが、最初はやや距離をとり余裕を持ってついて行っている。そして、スティント終盤の3周でクビサより速いペースを刻んで背後に忍び寄った。これによってピットストップでの逆転のチャンスを広げた形だ。
ただしピットタイミングの差はわずか1周。同等の給油量ではピットレーンの出口で接戦となってしまうことが予想されたため、ルノー&アロンソはクビサよりも1.5秒短い静止時間にすることで確実に前に出ることを選んだ。
しかしこれにより2度目のピットストップではアロンソが先に入ることになる。クビサに着いてこられたら再度逆転されてしまうのだ。無線でもエンジニアから「クビサは我々より5周長い。地獄のようなスプリントが必要だ!」との指示が飛ぶ。
ここからのアロンソは圧巻で、グラフを見ても非常に安定してハイペースを刻んでいる。クビサに対しては0.5秒以上のペース差で、タイヤと燃料の差を考慮しても0.4秒ほどの差があった。
この「地獄のスプリント」により2度目のピットストップを終えても前に留まることに成功した。チームメイトのピケJrはクビサと大差ないレースペースで、アロンソのドライバーとしての能力が遺憾無く発揮されたレースだった。
Writer: Takumi