• 2024/11/21 15:26

2013年日本GP レビュー

 今回はベッテルとレッドブルの戦略が見事なコンビネーションを見せた2013年日本GPを振り返っていこう。

 F1TV 日本GP

 なお、最初に1. レースのあらすじ、次に2. 詳細な分析を記した。

1. レースのあらすじ

 予選結果は以下の通りとなった。

POSDRIVERCARQ1Q2Q3
1Mark WebberRED BULL RACING RENAULT1:32.2711:31.5131:30.915
2Sebastian VettelRED BULL RACING RENAULT1:32.3971:31.2901:31.089
3Lewis HamiltonMERCEDES1:32.3401:31.6361:31.253
4Romain GrosjeanLOTUS RENAULT1:31.8241:31.5651:31.365
5Felipe MassaFERRARI1:31.9941:31.6681:31.378
6Nico RosbergMERCEDES1:32.2441:31.7641:31.397
7Nico HulkenbergSAUBER FERRARI1:32.4651:31.8481:31.644
8Fernando AlonsoFERRARI1:32.3711:31.8281:31.665
9Kimi RäikkönenLOTUS RENAULT1:32.3771:31.6621:31.684
10Jenson ButtonMCLAREN MERCEDES1:32.6061:31.8381:31.827
11Sergio PerezMCLAREN MERCEDES1:32.7181:31.989
12Paul di RestaFORCE INDIA MERCEDES1:32.2861:31.992
13Valtteri BottasWILLIAMS RENAULT1:32.6131:32.013
14Esteban GutierrezSAUBER FERRARI1:32.6731:32.063
15Pastor MaldonadoWILLIAMS RENAULT1:32.8751:32.093
16Daniel RicciardoSTR FERRARI1:32.8041:32.485
17Adrian SutilFORCE INDIA MERCEDES1:32.890
18Jean-Eric VergneSTR FERRARI1:33.357
19Max ChiltonMARUSSIA COSWORTH1:34.320
20Charles PicCATERHAM RENAULT1:34.556
21Giedo van der GardeCATERHAM RENAULT1:34.879
22Jules BianchiMARUSSIA COSWORTH1:34.958

 決勝ではグロージャンがスーパースタートで一躍トップへと躍り出る。2番手はウェバー、3番手にベッテルと続いた。

 1回目のピットストップでは11周目にウェバーが最初に動いたが、グロージャンは3.3秒のギャップを築いており、翌周反応してウェバーの前に戻ることができた。対するベッテルは14周目まで引っ張り、2台の後ろでコースに戻った。

 第2スティント終盤には、ウェバーがグロージャンの背後に迫り、25周目にピットへ。対するグロージャンはこれに反応せず、29周目にピットへと向かった。

 グロージャンをアンダーカットしたウェバーは、ハイペースで飛ばしてリードを拡大していく。一方のベッテルは37周目まで引っ張り、グロージャンの後ろでコースへと戻った。

 ここからベッテルはあっという間にグロージャンに追いつき、41周目にオーバーテイク。

 一方ウェバーは42周目に3回目のピットストップを行い、グロージャンの後方でコースに戻った。

 3ストップの利点を活かし、新しいオプションタイヤで追い上げるウェバーだったが、グロージャンの背後で決め手を欠き、なかなかオーバーテイクに至らず。52周目にようやく交わしたが、ベッテルは遥か前方に行ってしまった。

 優勝はベッテル。ウェバーが2位に入り、3位にグロージャンというリザルトなった。

 以下に決勝結果を示す。

POSDRIVERCARLAPSTIME/RETIREDPTS
1Sebastian VettelRED BULL RACING RENAULT531:26:49.30125
2Mark WebberRED BULL RACING RENAULT53+7.129s18
3Romain GrosjeanLOTUS RENAULT53+9.910s15
4Fernando AlonsoFERRARI53+45.605s12
5Kimi RäikkönenLOTUS RENAULT53+47.325s10
6Nico HulkenbergSAUBER FERRARI53+51.615s8
7Esteban GutierrezSAUBER FERRARI53+71.630s6
8Nico RosbergMERCEDES53+72.023s4
9Jenson ButtonMCLAREN MERCEDES53+80.821s2
10Felipe MassaFERRARI53+89.263s1
11Paul di RestaFORCE INDIA MERCEDES53+98.572s0
12Jean-Eric VergneSTR FERRARI52+1 lap0
13Daniel RicciardoSTR FERRARI52+1 lap0
14Adrian SutilFORCE INDIA MERCEDES52+1 lap0
15Sergio PerezMCLAREN MERCEDES52+1 lap0
16Pastor MaldonadoWILLIAMS RENAULT52+1 lap0
17Valtteri BottasWILLIAMS RENAULT52+1 lap0
18Charles PicCATERHAM RENAULT52+1 lap0
19Max ChiltonMARUSSIA COSWORTH52+1 lap0
Lewis HamiltonMERCEDES7DNF0
Giedo van der GardeCATERHAM RENAULT0DNF0
Jules BianchiMARUSSIA COSWORTH0DNF0

2. 詳細なレース分析

 まずはベッテル、ウェバー、グロージャンのレースペースを図1に示す。

図1 アベッテル、ウェバー、グロージャンのレースペース

 スタートで2,3番手となってしまったレッドブル勢。しかしベッテルにはグロージャンよりも長く引っ張らせる2ストップ作戦を、ウェバーには先手先手で動く3ストップ作戦を採用し、どちらも成功させて1−2フィニッシュという完璧なレースを実行した。

 まずベッテルだが、第2スティント後半、ウェバーがいなくなってからはハイペースで飛ばし、グロージャンとの差を0.7秒ずつ詰めた。タイヤがグロージャンより2周新しいことを考慮しても、ベッテルが実力で0.5秒上回っていた計算になる。

 グロージャン目線では、ここで追いつかれたことで、アンダーカットを阻止するために29周目という早めのストップを行わざるを得なかったという所だろう。この辺りも、相手を追い込む戦略とそれを実行できるベッテルのコンビネーションが光る。

 ここでグロージャンに追いつくタイミングがもう少し遅れると、グロージャンの2回目のピットストップも遅くなり、第3スティントがより短くなってタイヤ的に楽になってしまう。グロージャンに”不均一な”2ストップ作戦を採らせて苦しめるためにも、あのタイミングでのペースアップはお見事だった。

 グロージャンがいなくなってからのベッテルはさらにペースを上げ、1:37.0前後を連発。これは新品に履き替えたグロージャンより0.2秒しか劣っておらず、タイヤの差を加味するとベッテルが1.3秒速かったことになる。スティント前半でグロージャンがマネジメントに徹していた一方で、ベッテルはスティント終盤でプッシュのタイミングだったとは言え、これは大きな差だ。

 さらにベッテルは、第3スティントでグロージャンを交わした際、実質的にはペース面でのアドバンテージは0.8秒前後だった。にも関わらず一発で仕留めたのは素晴らしいとしか言いようがない。これが優勝を大きく手繰り寄せた一手だ。

 一方のウェバーは、グロージャンより1.5秒前後速かったにも関わらず、なかなか抜けなかったことが敗因の一つだ。

 ウェバーのペース自体はレースを通じてベッテルの0.1秒落ち程度で、ウェバーにも勝機はあった。例えば終盤にベッテルが中々グロージャンを交わせず、より新しいタイヤを履くウェバーが2台を纏めて抜き去るという展開は十分にあり得た。

 しかし、2011年以降のベッテルは「ここで抜かないと戦略が機能しなくなる」という局面で一発で仕留め、戦略の効果を最大化する走りをしてきた。対するウェバーは遅いマシンの後ろで長い時間を費やしてしまう傾向が多々見られ、それが今回のレースでも出てしまった。

 鈴鹿マイスターベッテルが、ペース面のみならず、レースクラフトでも強さを見せたレースと言えるだろう。

 またレッドブルとしても2台で戦略を分け、尚且つそのどちらも成功させる、というファインプレーだった。

 オーバーテイクを得意とするベッテルに2ストップを、タイヤの差が大きくオーバーテイクがしやすい3ストップはウェバーに採らせたのも、両ドライバーの特性を加味した名案だったと考えられる。例えば2台の戦略を逆にすると、2ストップのウェバーはグロージャンをなかなか抜けず、3ストップのベッテルはそこに追いついてもDRSトレインで抜けない可能性が出てくる。ベッテルが抜けても1-3、抜けなければ2-3のリスクがより高まってしまう。

 その観点からも、ベッテルに2ストップ、ウェバーに3ストップは1-2フィニッシュへの最短距離だったと考えられるだろう。

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Writer: Takumi