• 2024/4/27 19:12

2022年ベルギーGP レースペース分析

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1. 分析結果と結論

 先に分析結果を示す。分析の過程については次項「2. レースペースの分析」をご覧いただきたい。

表1 ミディアムタイヤでのレースペース

 ミディアムタイヤでは表2のような勢力図になった。

表2 ハードタイヤでのレースペース

 ハードタイヤでは表3のような勢力図になった。

表3 全体のレースペースの勢力図

 総合すると、レース全体のペースの勢力図はこのように結論づけて良いだろう。

 フェルスタッペンが圧倒的な速さを見せた。通常はサインツと近いペースになるペレスがルクレールと互角のペースを見せていることからも、レッドブルのマシン自体も競争力が高かったことが伺える。

 また中団ではオコンが好ペースを見せた。後方からの追い上げとなったアルファタウリ勢もレースペースが良く、角田がガスリーに迫るペースを見せている点も興味深い。

2. レースペースの分析

 以下に分析の内容を示す。フューエルエフェクトは0.10[s/lap]で計算した。

 また、各ドライバーのクリアエアでの走行時を比較するために、全車の走行状態をこちらの記事にまとめた。

各ドライバーの使用タイヤはこちらのピレリ公式より

 また、今回は予選で使用したソフトと新品ソフトの差をバーレーンGPの1.5倍の0.3秒とした。その他については差は無視することとした。

 またスティント前半でダーティエアでも、途中からクリアエアになっており、かつ前半のダーティエア内でもタイヤを労われていて極端なペースダウンでもない場合、スティント全体をクリアエアのように扱ってよく、当サイトではその状態をオープンエンドクリアエア(OEC)と定義している。

2.1 チームメイト比較

 まずは明確に比較可能なチームメイト同士で見ていこう。

Fig.1 フェルスタッペンとペレスのレースペース

 両者ミディアムの第2スティントでは、フェルスタッペンが平均0.99秒上回っている。ペレスのタイヤが1周古いことを、デグラデーション0.30[s/lap]で考慮すると、実力的にはフェルスタッペンが0.7秒ほど上回っていたと言える。

Fig.2 ルクレール、サインツのレースペース

 両者ミディアムの第2スティントで、サインツが平均0.86秒上回っている。ルクレールのタイヤが7周古いことを、デグラデーション0.17[s/lap]で考慮すると、実力的にはルクレールが0.3秒ほど上回っていたと言える。

Fig.3 ガスリーと角田のレースペース

 ガスリーの第2スティントと角田の第3スティントの重なっている部分は両者ミディアムで、角田が1.0秒上回っていると言えそうだ。ガスリーのタイヤが7周古いことを、デグラデーション0.15[s/lap]で考慮すると、実力的にはガスリーが0.1秒ほど上回っていたと言える。

Fig.4 アルボンとラティフィのレースペース

 アルボンの第2スティントとラティフィの第3(実質的第2)スティントの重なっている部分は両者ハードで、ラティフィが0.5秒上回っていると言えそうだ。アルボンのタイヤが5周古いことを、デグラデーション0.26[s/lap]で考慮すると、実力的にはアルボンが0.8秒ほど上回っていたと言える。

Fig.5 シューマッハ、マグヌッセンのレースペース

 両者ミディアムの第2スティントで、シューマッハが平均0.67秒上回っている。マグヌッセンのタイヤが3周古いことを、デグラデーション0.25[s/lap]で考慮すると、実力的にはマグヌッセンが0.1秒ほど上回っていたと言える。

 また、両者ハードの第3スティントで、シューマッハが平均1.14秒上回っている。マグヌッセンのタイヤが3周古いことを、デグラデーション0.14[s/lap]で考慮すると、実力的にはシューマッハが0.7秒ほど上回っていたと言える。これは状況から見てもマグヌッセンがコントロールしていたと考えるのが自然だろう。

2.3. チームを跨いだ比較

 ここからはライバルチーム同士で比較を行っていこう。

Fig.6 フェルスタッペン、サインツ、ラッセル、角田のレースペース

・フェルスタッペンとサインツ

 両者ソフトの第1スティントで、フェルスタッペンのサインツに対するペースアドバンテージは、抜いてきている部分を含めれば平均1.00秒、クリアエアの9,10周目に限れば0.88秒だ。サインツが中古のソフトであることを加味して0.6~0.7秒ほどの差と言えるかもしれないが、この値をどこまで信じて良いかは正直なところ疑問符がつくだろう。

 また、両者ミディアムの第2スティントでは、フェルスタッペンが平均1.95秒上回っている。サインツのタイヤが4周古いことを、デグラデーション0.25[s/lap]で考慮すると、実力的にはフェルスタッペンが1.0秒ほど上回っていたと言える。

・ラッセルとサインツ

 一方、両者ミディアムの第2スティントでは、ラッセルが平均0.53秒上回っている。サインツのタイヤが2周古いことを、デグラデーション0.25[s/lap]で考慮すると、実力的には2人は互角だったと言える。

 また、両者ハードの第3スティントでは、ラッセルが平均0.37秒上回っている。サインツのタイヤが4周古いことを、デグラデーション0.10[s/lap]で考慮すると、実力的には2人は互角だったと言える。

・ラッセルと角田

 一方、両者ミディアムの第2スティントでは、ラッセルが平均0.48秒上回っている。ラッセルのタイヤが5周古いことを、デグラデーション0.10[s/lap]で考慮すると、実力的にはラッセルが1.0秒ほど上回っていたと言える。

Fig.8 オコン、ベッテル、ガスリー、アルボンのレースペース

・オコンとベッテル

 両者ハードの第2スティントでは、ベッテルが平均0.05秒上回っている。オコンのタイヤが2周古いことを、デグラデーション0.10[s/lap]で考慮すると、実力的にはオコンが0.2秒ほど上回っていたと言える。

 また、両者ミディアムの第3スティントでは、オコンが平均0.15秒上回っている。オコンのタイヤが1周古いことを、デグラデーション0.27[s/lap]で考慮すると、実力的にはオコンが0.4秒ほど上回っていたと言える。

・ベッテルとアルボン

 両者ハードの第2スティントでは、ベッテルが1.1秒上回っていると言って良いだろう。アルボンのタイヤが4周古いことを、デグラデーション0.26[s/lap]で考慮すると、実力的にはベッテルが0.1秒ほど上回っていたと言える。

・ガスリーとアルボン

 両者ハードの第2スティントでは、互角と言って良いだろう。タイヤも同等となっている。

 一方で、両者ミディアムの第3スティントでは、ガスリーが平均0.18秒上回っている。ガスリーのタイヤが4周古いことを、デグラデーション0.15[s/lap]で考慮すると、実力的にはオコンが0.8秒ほど上回っていたと言える。ただし、これは第2スティントの力関係と整合性が取れず、アルボンの最終スティントはディフェンスに徹していたことが影響していると考えられる。

Fig.9 オコン、ベッテル、シューマッハ、マグヌッセンのレースペース

・ベッテルとマグヌッセン

 両者ハードの第2スティントでは、ベッテルが平均0.98秒上回っている。マグヌッセンのタイヤが3周古いことを、デグラデーション0.25[s/lap]で考慮すると、実力的にはベッテルが0.2秒ほど上回っていたと言える。

・オコンとシューマッハ

 両者ミディアムの第3スティントでは、オコンが平均0.77秒上回っている。シューマッハのタイヤが2周古いことを、デグラデーション0.12[s/lap]で考慮すると、実力的にはオコンが0.5秒ほど上回っていたと言える。

 これらを総合し、表1~3の結論を得た。

Analyst: Takumi