※5/29追記:全車の走行状態をこちらのページで公開
スペインGPでは2~3回のストップが主流のレースとなり、かつフェルスタッペンが序盤にコースオフ、ルクレールも中盤でリタイアしたことで、両者の力関係が直接測れない状態となった。これに加え、一部チームのスティント毎、タイヤ毎の競争力の変化も大きく、メルセデス勢は過去5戦の傾向通りチームメイト間でもスティント毎の力関係の変化が出た。
これによりレースペース分析を正確に行うのは極めて困難な状態となり、分析結果の公開がモナコGP後となる事も予想され、先に、
①現状最も妥当と思われる結論
②確実性が高いことは何か
③疑わしいことは何か
のみを簡単にまとめて公開する判断に至った。詳細な分析内容の公開については未定である。
1. 分析結果
1.1 結果と簡単な説明
現状最も妥当と考えられる結論を表1に示す。
表1 レースペース総合
まず、前提条件を説明しよう。
後半のスティントにおいて、フェルスタッペンとペレスの差は0.8秒とも0.4秒とも言えるというのが困ったところだが、この結論は0.4秒の方を採用した上で、且つその差が第1スティントでも同様だった前提だ。
また後半のスティントでペレスがラッセルを0.4秒上回っているのは比較的確かだが(表4)、これも第1スティントでも同様だった前提だ。こちらはペレスのラッセルに対する攻勢からある程度の信憑性がありそうだと考えた。
他にも0.8秒の方を採用した上で、第1スティントでも同様だった場合や、第1スティントのフェルスタッペンが9周目までラッセル程度にはプッシュしていた場合など、種々の仮想の世界観を試したが、これが最も現実を説明しやすい理論だった。
1.2 まとめ
この表を信じるならば、やはりルクレールとフェルスタッペンは接近しているが、第1スティントでルクレールが新品だったことで、万事順調ならばおそらくルクレールが余裕を持って勝利を掴んだだろう。やはりデグラデーションの大きなトラックでは、予選での戦い方がレースでアドバンテージを握る鍵となりそうだ。
またハミルトンは特に後半スティントで非常に高い競争力を発揮している。メルセデスはバーレーンでもレースペースが速かったことを踏まえると、タイヤに優しいマシンで、デグラデーションの大きなトラックに強いのかもしれない。
そして中団勢ではいつも通りボッタスがトップ。アルピーヌ勢が続き、疑問符付きではあるがマクラーレンのノリスも近いところにつけた。
2. 各タイヤでの比較(信憑性が高いことと低いこと)
次に第1スティントでソフトタイヤを履いたドライバー達のレースペース比較を示す。
表2 第1スティントでのソフトタイヤでのレースペース
この表単体は比較的信憑性の高いものだ。ハミルトン(実質的な第1スティント)は序盤ではラッセルと同程度で、ルクレールには遠く及ばないパフォーマンスだった。これが無線で垣間見えたモチベーションの問題なのか、今季のメルセデスにしばしば見られるスティント毎の競争力の変動なのかは不明だ。
続いて第2スティント以降のソフトとミディアムのレースペースを示す。
表3 第2スティント以降のソフトタイヤでのレースペース
表4 第2スティント以降のミディアムタイヤでのレースペース
これらの表も、それぞれ単体で見れば信憑性が高いと考えて問題ない。ただし注意が必要なのは、前述の通りフェルスタッペンとペレスの関係は0.4~0.8秒と曖昧であることだ。これが最も妥当だとは考えているが、両表とも0.1~0.2秒ほどフェルスタッペンが上に移動してもおかしくは無いだろう。またその場合、表3ではペレス以外の全ドライバーが平行移動するが、表4ではフェルスタッペンと一緒に平行移動するドライバーはいない。
またマクラーレン勢のタイムに「※」を付けているが、非常に複雑な状況となっており、諸々を加味すると確実に言えるのは、
・ノリスはリカルドより0.8秒速い
・2人揃って、タイヤに関係なく第2スティントで遅く、第3スティントで速い。
・総合するとソフト、ミディアム共にノリスがハミルトンの1.5秒落ち、リカルドが2.3秒落ち
といったところだ。
また第2スティントと言いながら、実質的な第1スティントのマグヌッセンも一応含めており、クエスチョンマーク付きとした。
第2スティント以降の勢力図をまとめると以下の通りとなる。
表5 第2スティント以降のレースペース
表3,4共にデータがあるドライバーは平均を、そうで無いドライバーはフェルスタッペンからの差をそのまま組み込んだ。ハミルトンはフェルスタッペンとの0.1秒差をそのままにした。
前述の通り、マクラーレン勢は表3,4よりこちらの方が信用が置けるデータだ。
その上で、表2の第1スティントのデータと総合した結果が最初に示した表1の結論となる。前述の通り、フェルスタッペンとペレスの0.4秒差がそのままの前提だ。
また、総合する上での操作として、第1スティントは短いため、単に足して2で割る平均ではなく、(表5×2+表2)/3を用いた。
注意点として、マクラーレン勢は前述の通りレースが進むにつれて競争力が上がっており、ライドハイト等セットアップの特性だとすれば、第1スティントではさらに低い競争力だったと思われ、実際その兆候は見受けられる。よって、第1スティントを含めた値はもう少し低くなっていた可能性はある。
また、アルボンとマグヌッセンは片方の表にしかいないが、そこでのチームメイトと互角という関係を反映した。これはチームメイト間で(マクラーレン勢と他チームのような)スティントによる大きな傾向の差は生まれないという前提に基づいたものだ。開幕からの傾向を見る限り、例えばメルセデスにはこの前提が当てはまらなそうだが、ウィリアムズとハースに関してはとりあえずこの操作でも良いと判断した。
Analyst: Takumi