• 2024/11/21 15:29

2023年 前半戦レビュー(2)〜各チームのパフォーマンス分析〜

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 前半戦レビューPart1では、全10チーム20人のドライバーの予選ペースとレースペースについてチームメイト比較を行った。今回はそこで得られた知見も用いながら、各チームの競争力、そしてマシンパフォーマンスについても考察していこう。

1. 各チームの競争力

 まずは各チームの予選およびレースにおけるペース比較を行おう。

 表1に予選、表2にレースペースの比較を示す。それぞれのレースにおいて各チームの速い方のドライバーを基準とした。予選・レース共にドライコンディションに限り、レースに関してはタイヤ、燃料、レース展開上の文脈を考慮して比較した。

表1 予選ペースの平均

 

表2 レースペースの平均

 

1.1 予選とレースの傾向

 まず気づくのは、殆どのチームは予選よりもレースでレッドブルとの差が開いていることだ。今季のレッドブルは予選はある程度妥協してレースに重きを置いたアプローチを採っており、それがこの表に顕在化した形だ。

 その中でアルファタウリのみがレースでレッドブルとの差を縮めている。アルファタウリも今季はレース型のチームで、逆に言えばグリッドポジションの悪さ故に、レースでの強さを活かしきれないもどかしさがある。後半戦では予選・決勝でバランスの取れたセットアップ、そしてクリアエアで走れる空間を探し出して有効活用する戦略が、このチームにとっての鍵となるだろう。

 上位チームではメルセデスがレース型のマシンと言えるだろう。一方、フェラーリは予選から決勝にかけてレッドブルに対して0.4秒失っており、予選型のマシンということになる。

1.2 開発競争の変遷

 上記はあくまで前半戦を通しての平均値で、各チームがずっと同じような勢力図を保ってきたわけではない。そこで、上位5チームのレースペースのパワーバランスの変遷を見てみよう。

図1 レッドブルとその他4チームのレースペースの差

 マクラーレンの躍進が一際輝いている。カナダGPまでを見れば中団でも下位を争う程度の力しかなかった。しかしオーストリアGP以降はレッドブルに最も接近するチームとして活躍している。

 一方、アストンマーティンの失速はデータからも明確に読み取れる。3戦連続でのレッドブルと1.0秒差は序盤戦では考えられなかった事態だ。スパ・フランコルシャンは差のつきやすいサーキットであり、ここでの1.0秒差はまだマシだが、依然としてフェラーリとメルセデスに上回られており、後半戦の開発競争で遅れてしまわないかが気掛かりな所だ。

 フェラーリやメルセデスは多少の浮き沈みはあれど、基本的にはレッドブルとの差を少しずつ詰めていっているようだ。

2. ドライバーの力を考慮した分析

 さて、F1ではドライバーの力も大きな割合を占めている。レッドブルがペレス2人だった場合や、アストンマーティンがストロール2人だった場合を想定してみると、顕著に見えてくるだろう。

 当サイトでは歴代のドライバー達のチームメイト比較を行うことで、ドライバー個人の力量についてある程度の知見を得てきた。加えて、前半戦レビューのPart1では今季のチームメイト同士の比較も行っており、ここからドライバーの力を抜きにしたマシンの純粋なパフォーマンス差を計算することができる。その結果が表3,4だ。

表1 予選ペースの平均(ドライバー均一化)

 

表2 レースペースの平均(ドライバー均一化)

 

参考:
歴代トップドライバーの予選ペース
歴代トップドライバーのレースペース

 まず注意点として、特にノリスと角田、そして特にアルボンについてはまだ評価が定まっておらず、暫定的な数値を前提に推論せざるを得なかった。そのため、マクラーレン、アルファタウリ、ウィリアムズについては多少の疑問符と共に見ていただきたい。

 今季のフェルスタッペンの走りが素晴らしいのは勿論だが、レッドブルのマシンの優位性も相当なものだ。またレッドブル、メルセデス、フェラーリ、アストンマーティンに関しては、基準となるエースドライバーの力量が殆ど変わらないため、マシンの差がそのまま総合的な力の差に結びついてきやすい。

 一方、中団チームのドライバーはフェルスタッペンの0.3秒落ち前後のドライバーが多い。これにより、表1,2には実際のマシン性能差よりも大きな差となって現れてきている。

3. 後半戦の展望

 さて、ここまで振り返ってきた通り、前半戦ではレッドブルのマシンの圧倒的優位をフェルスタッペンという特別なドライバーがブーストし、圧倒的優位を築いた。ドライバーズランキングでは2位のペレスに125ポイント差、コンストラクターズでもメルセデスに256ポイント差をつけており、両タイトルの獲得はほぼ間違いないだろう。

 レッドブルのシーズン全勝や、フェルスタッペンの連勝、シーズン最多勝記録更新など歴史的快挙にも注目が集まるが、それを止めうる最有力候補として、前半戦で下位を走っていたマクラーレンが浮上してきたというのが何とも面白い。

 フェルスタッペンとレッドブルが記録を打ち立てるのか?マクラーレン、メルセデス、フェラーリ、アストンマーティン、或いはその他のダークホースがそれを阻止するのか?見どころたくさんの後半戦のは、8月25日にザンドフールトで開幕する。

Writer: Takumi

Created with Midjourney (AI Art Gallery)