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2006年 フランスGPレビュー 【シューマッハ独走もレースペースはアロンソ】

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 このシリーズでは、現在FIAでラップタイムが公開されている最古の年2006年からのレースを振り返ってみよう。

 開幕から続くシューマッハvsアロンソの構図。スペインGPからカナダGPまで4連勝したアロンソに対し、アメリカGPで一矢報いたシューマッハは、ここフランスGPでも競争力を見せ、チームメイトのマッサと共に予選でフロントローを独占した。今回もグラフを交えて、シューマッハ、アロンソ、マッサのレース内容を分析する。

 なお、最初に1. レースのあらすじ、次に2. 詳細な分析、記事末尾に3. まとめを記した。あらすじまとめのみで概要が分かるようになっているので、詳細分析は読み飛ばしていただいても問題ない。

目次

  1. レースのあらすじ
  2. 詳細なレース分析
  3. まとめ

1. レースのあらすじ

 予選ではシューマッハがポールポジション、マッサが2番手で、フロントロウを独占したフェラーリ勢。アロンソは3番手につけた。

 スタートでの3人の順位変動はなく、シューマッハは2番手マッサとの差を少しずつ広げていく。今回は路面温度が非常に高く、特にブリヂストン陣営はタイヤの性能劣化が危惧されたが、シューマッハは上手く管理し、15周目にはマッサと6.4秒、アロンソと8.3秒までギャップを広げた。

 そして16周目、まずはマッサからピットイン。静止時間は7.0秒だ。一方のアロンソは翌周17周目にピットイン。静止時間は8.0秒のと多めの燃料を積む。シューマッハも翌周18周目にピットへ。6.7秒の静止時間でコースへ戻って行く。

 第2スティントでもシューマッハはマッサ、アロンソとの差を確実に広げていく。しかし、マッサはより重い状態のアロンソを突き放せないまま34周目を迎え、2回目のピットストップとなってしまう。

 一方のアロンソは42周目まで引っ張り、変則2ストップ戦略に切り替えた。ここからチェッカーフラッグまで走り切る作戦だ。

 ここで大量のガソリンを積み重くなったアロンソに対して、ピットストップ1回分のギャップを築きたい3ストップのマッサ。しかし思うようにペースが上がらず、53周目に最後のピットストップを終えるとアロンソの後ろになっていた。

 シューマッハは危なげないポールトゥウィンで今季4勝目。アロンソはフェラーリの一角を切り崩し2位を獲得した。

2. 詳細なレース分析

 まず、図1にシューマッハとアロンソのレースペースを示す。

画像1を拡大表示

Fig.1 シューマッハ、アロンソ、マッサのレースペース

 第1スティントのシューマッハのペースは、マッサを0.3秒ほど上回っている。フューエルエフェクトを考慮すると0.4秒程度となるが、このシューマッハとマッサのペース差により、マッサの後ろに引っかかっていたアロンソはシューマッハに9秒離されてしまった。

 実はそこからのアロンソのペースは、フューエルエフェクトとデグラデーションを加味するとシューマッハを0.2~0.3秒ほど上回っており、レースでは非常に競争力があった。第1スティントでついた差と、効率の悪い変則的2ストップ戦略により、シューマッハの独走を許してしまった形と言える。

 フューエルエフェクトとデグラデーションが大きく、ピットストップロスタイムが短いサーキットで2ストップにした判断には、一見疑問符が付くが的確な判断だった。これはフェラーリの新品タイヤ効果を警戒しての判断だったと考えられる。1回目のピットストップでアロンソはマッサの1周後に入ったが、マッサの新品タイヤの爆発力はグラフからも見て取れ、同じ戦略では逆転不可能だっただろう。そこで、多少効率が悪くともポテンシャルで上回っていれば前に出られる2ストップ作戦に切り替えたと思われる。

 マッサの第2スティントはシューマッハの0.3秒落ちで、第1スティントと似たり寄ったりのパフォーマンスだった。しかし、第3スティントではシューマッハの0.6秒落ち、同じタイミングで第2スティントを走っていたアロンソの0.9秒落ちと、非常にパフォーマンスが悪かった。グラフからも、かなりタイヤの扱いに苦しんでいたように見受けられる。

 対してシューマッハはスティントの始めでは抑えて入り、その後ペースアップしてからもラップタイムを上下させて、時折タイヤを冷やしているような形跡が見られる。非常にタイヤに厳しかったフランスGPにおいて、柔らかいタイヤでポールポジションを獲得し、レースではそれを上手く使ったシューマッハが、マッサとのペース差を活かして完勝を納めた、そう総括できるレースだったと言えるだろう。

3. まとめ

3.1 レースレビューのまとめ

以下にフランスGPレビューのまとめを記す。

(1) 燃料搭載量やタイヤが同条件ならば、アロンソがシューマッハを0.2秒ほど上回っていた。

(2) アロンソは予選で遅れを取り、軽い燃料で3番手となってしまったことでシューマッハへの勝負権を失ってしまった。一方で、効率の悪い変則2ストップ戦略をレースペースの良さでカバーし、マッサを逆転することには成功した。(図1)

(3) 路面温度が高くタイヤに厳しい条件で、シューマッハはスティントの中でも安定したパフォーマンスを発揮し、スティント毎の出来不出来もなく、タイヤマネジメントの点でマッサと大きな差があることを見せつけた。

3.2 上位勢の勢力図

 上位勢のレースペースをフューエルエフェクトやタイヤのデグラデーションを加味して算出すると、勢力図は表1のようになる。

Table1 上位勢の勢力図

スクリーンショット 2022-01-21 18.56.41を拡大表示

 シューマッハのレースペースは本気で走っていた第1スティントを基準にした。マッサはスティントによって出来不出来があり、それらを平均した。

 スペインGP、イギリスGP、カナダGPでは、シューマッハがアロンソと互角以上の力を有していながら、予選のポジションが祟って大敗を喫してしまったが、今回はルノーが同じ形になってしまった。ただし、上記3レースではフェラーリが燃料を積みすぎたことが問題だったが、今回のルノーは戦略面ではシューマッハより軽く、タイヤを含めたレース重視のセットアップそのものが敗因となってしまった。

 2006年シーズンは、アロンソとフィジケラの差、そしてシューマッハとマッサの差が大きく、予選でライバルのチームメイトの後ろになってしまうと、第1スティントの時点で勝敗が決してしまいやすい。したがって、予選-決勝のパフォーマンスバランスを取ったセットアップと、ライバルチームの力を正確に読み切り、フロントローを確保しつつレースを有利に戦える燃料搭載量を選択する事が非常に重要となってくる。