• 2024/11/21 15:28

2021年モナコGP分析

1. 分析結果と結論

 タイヤのデグラデーションや燃料搭載量などを考慮し、全ドライバーのレースペースの力関係を割り出すと表1のようになった。

Table1 レースペースの勢力図

スクリーンショット 2021-12-02 23.48.28を拡大表示

※疑問符がつく部分はオレンジ色で示した

 レース展開からもフェルスタッペンが最速だったのは頷ける結果だ。またペレスのレースペースも疑問符付きではあるがボッタスと接近しており、今回のレッドブルには競争力があった。またサインツが中断トップで上位勢に肉薄している点も興味深い。

 また、ライコネンのレースペースはサインツに肉薄、ノリスを上回っており、非常に印象的だった。競争力に欠けるミディアムタイヤで第1スティントを戦いながらも、スティント終盤ではリカルドやアロンソでは見られないスティント終盤でのタイムの伸びも見せた。さらに第2スティントでもリカルドを上回るペースを見せており、予選で上位グリッドを獲得していれば上位入賞もありえたレースだった。

  注意点としては、フェルスタッペン、ペレス、オコンのレースペースを求める際、本来は二次関数で求めるべき所を、パラメーター不足によりシンプルな概算を適用したため、若干の誤差がある可能性があり、疑問符つきの意味でオレンジ色で示した。タイム表示の基準となるフェルスタッペンが怪しい事で各ドライバーのレースペースの絶対値は怪しくなったが、ペレスとオコン以外の相対的な位置関係はある程度正確な分析となったはずだ。

 リカルドとノリスの0.2秒差は、互いにどの程度プッシュしているか不明な第2スティントを参考にしているため、やや疑問符がついていたが、リカルドを基準にしたアロンソやラッセルは妥当な位置におり、これを結論として問題ないだろう。

2. 分析内容の詳細

 以下に分析の内容を示す。フューエルエフェクトは0.04[s/lap]で計算した。

 また、各ドライバーのクリーンエアでの走行時を比較するために、全車の走行状態をこちらの記事にまとめた。

各ドライバーの使用タイヤはこちらのピレリ公式より

2.1 チーム毎の分析

 まずチームメイト比較を行う。

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Fig.1 レッドブル勢のレースペース

 ペレスの第1スティント終盤は、それまでタイヤを労っていた事の影響が大きい。疑問符付きでシンプルなモデルで考えると、実力的にはフェルスタッペンの0.4秒落ち程度のペースだったと考えられる。
また第2スティントはフェルスタッペンが本気で走ってはいないため、比較は不適切と思われる。

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Fig.2 フェラーリ勢のレースペース

 比較可能なデータは無かった。

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Fig.3 マクラーレン勢のレースペース

 リカルドの第2スティントの一時的なクリーンエアの部分はノリスと同等のペースだ。6周新しいタイヤをデグラデーション0.04[s/lap]で考慮すると、実力的にはノリスが0.2秒ほど上回っていたと考えられる。

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Fig.4 アストンマーティン勢のレースペース

 戦略が異なり比較は不適切と言える。

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Fig.5 アルファタウリ勢のレースペース

 比較可能なデータは無かった。

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Fig.1 メルセデス勢のレースペース

 比較可能なデータは無かった。

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Fig.5 アルピーヌ勢のレースペース

 戦略が異なり比較は不適切と言える。

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Fig.8 アルファロメオ勢のレースペース

 戦略が異なり比較は不適切だった。

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Fig.9 ウィリアムズ勢のレースペース

 第2スティントでラティフィがクリーンエアで走行している際は、ラッセルの本来考えられるペースと同等だ。その後背後につけていることや第1スティントでの展開から考えて、ラティフィに若干分があるようにも見えるが、詳細のほどは不明だ。

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Fig.10 ハース勢のレースペース

 第1スティントではシューマッハが0.3秒ほど速いペースだ。第2スティントでは0.4秒ほどだが、シューマッハが3周新しいタイヤを履いていることをデグラデーション0.04[s/lap]で考慮すると、実力的には0.3秒ほどとなる。

2.2 チームを跨いだ分析

 図11にフェルスタッペン、ボッタス、サインツの比較を示す。

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Fig.11 フェルスタッペン、ボッタス、サインツのレースペース

 ボッタスは、第1スティントをトータルで見て、フェルスタッペンの30周目までのペースの0.1秒落ち程度だ。
 フェルスタッペンの第1スティント終盤は、前が開けてから0.8秒ほどタイムアップしている。スティントを通して後ろに合わせてタイヤを労っていたことを踏まえると、疑問符付きでシンプルな概算(実際は二次関数)で考えて、実際は0.4秒ほど遅かったと思われるが、それでもボッタスを0.5秒凌駕していたことになる。

 サインツは第2スティントでフェルスタッペンの0.2秒落ち程度だ。2周古いタイヤをデグラデーション0.04[s/lap]で考慮すると、実力的には0.1秒落ち程度だが、フェルスタッペンがどの程度余力を持っていたかは不明だ。また第1スティントではピットストップ直前までサインツはボッタスの真後ろにつけていたが、ボッタスのピットストップ後、特にタイムが上がっていない事からボッタスとイーブンペースと評価しても良いだろう。ただし、ボッタスのピットストップ失敗によりプッシュする必要性が無かったことは加味するべきで、疑問符付きとしたい。

 続いて、サインツ、ノリスを比較してみよう。

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Fig.12 サインツ、ノリスのレースペース

 第1スティントでは、ノリスはサインツの0.2秒落ち、第2スティントでも0.2秒落ちで、2周古いタイヤをデグラデーション0.04[s/lap]で考慮すると、実力的には0.3秒程度と言える。これはサインツがフェルスタッペンにプレッシャーをかけるためプッシュしていたのに対し、ノリスはペレスから順位を守り切るだけでよかったため、リスクを犯さなかったためと思われる。従って第1スティントの0.2秒を両者の差としよう。

 続いて、ガスリーとベッテルをボッタスと比較してみよう。

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Fig.13 ガスリー、ベッテル、ボッタスのレースペース

 ガスリーは第1スティントでボッタスの0.2秒落ち程度だ。またベッテルは第1スティント、第2スティント共にガスリーと同等と言える。

 続いてジョビナッツィとシューマッハをボッタスと比較する。

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Fig.14 ジョビナッツィ、シューマッハ、ボッタスのレースペース

 ジョビナッツィの第1スティントはボッタスの0.6秒落ちだった。
また、シューマッハはトラブルが出るまでジョビナッツィの1.5秒落ちだった。

 続いてジョビナッツィとオコンを比較する。

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Fig.15 オコン、ジョビナッツィのレースペース

 オコンはジョビナッツィがピットに入ってから0.4秒ほどタイムを上げている。フェルスタッペンやペレスと同様にシンプルなモデルで考えると、実力的には0.2秒ほどオコンにアドバンテージがあったと考えられる。

 続いてミディアムスタート勢について、まずはリカルドとライコネン、アロンソを比較してみよう。

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Fig.16 リカルドとライコネン、アロンソのレースペース

 リカルドはピットストップまでライコネンの0.2秒落ち程度だ。ただしその後ライコネンがスティント後半でタイムアップしていることを考慮すると、0.3秒程度に補正した方が妥当と思われる。

 また、アロンソは第1スティント全体でライコネンの0.4秒落ちだった。

 続いてラッセルをリカルドと比較してみよう。

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Fig.17 リカルドとラッセルのレースペース

 第1スティントでは、ラッセルはリカルドの0.6秒落ちだった。

 以上を総合し、表1の結論を得た。