• 2024/11/21 15:21

2006年 スペインGPレビュー 【見た目上はアロンソの完勝も…】

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 開幕戦バーレーン、イモラ、ニュルブルクリンクと続いた、シューマッハとアロンソの非常に高度なチャンピオン対決。舞台は低中高速コーナーがバランス良く組み合わさったバルセロナへとやってきた。今回も2人の闘いをグラフを交えて振り返っていこう。

 なお、最初に1. レースのあらすじ、次に2. 詳細な分析、記事末尾に3. まとめを記した。あらすじまとめのみで概要が分かるようになっているので、詳細分析は読み飛ばしていただいても問題ない。

目次

  1. レースのあらすじ
  2. 詳細なレース分析
  3. まとめ

1. レースのあらすじ

 予選でフロントロウを独占したルノー勢。レースでもアロンソ、フィジケラの順で、3番手のシューマッハを引き離して行く展開となった。

 アロンソの1回目のピットストップは17周目、この時点でシューマッハに13秒ほど差をつけていた。シューマッハはそこから6周引っ張り、23周目にピットへ。フィジケラの前に出ることには成功したが、アロンソとは依然として10秒差。その差は2回目のピットストップ前までに13秒に広がり、アロンソが母国GPで圧勝を飾った。

2. 詳細なレース分析

 あえて結論から書くと、今回のフェラーリはトータルの競争力では決して劣ってはいなかったにも関わらず、燃料を積みすぎたことで本来のスピードとはかけ離れた大敗を喫してしまった。図1に2人のレースペースを示す。

画像1を拡大表示

Fig.1 アロンソとシューマッハのレースペース

 まずは予選だ。アロンソはシューマッハに0.342秒の差をつけたが、第1スティントの長さはシューマッハの方が6周も長く、フューエルエフェクトを0.09[s/lap]で考えれば、実際の予選パフォーマンスはシューマッハが0.2秒ほど上回っていたことになる。

 またレースペースの観点でも、第1スティントで見ればアロンソが0.6秒ほど上回っているが、これもフューエルエフェクトを考慮すると実力的にはアロンソの優位は0.1秒程度になる。

 よって、今回は予選パフォーマンスのフェラーリ、レースペースのルノーという構図だった。そのため、フェラーリとしては軽めの燃料で前を抑え、ピットストップのタイミングでは、軽い燃料や新品タイヤの効果を活かして順位を守る方向性で行った方が勝機があった。しかし予選に強いパッケージだったにも関わらず、燃料を積みすぎてしまうというチグハグな戦略により、実力以上に大差がつく展開となってしまった。

 通常、燃料を多めに積む戦略は、予選ではライバルに劣るが、レースペースに自信がある場合に採るものだ。よって、フェラーリはルノーとの力関係を見誤った可能性が高い。Q2ではトップタイムを出したシューマッハだったが、ルノー、特にアロンソに余力があると踏んでいたのだろうか?今回は予選でのフィジケラのパフォーマンスが良く、Q3でも燃料搭載量の差を考えるとアロンソを上回っていた。そのこともフェラーリの判断を鈍らせた可能性がある。

 逆に言えば、アロンソの予選が苦しい中で、フィジケラより1周軽くしてやることでアロンソにポールポジションを獲らせたルノーの判断は見事だった。レースになればアロンソのレースペースは非常に優れており、フィジケラを0.4秒上回っていただけに、仮にアロンソがフィジケラの後ろになっていたら、折角のペースを活かすことができず、シューマッハが1回目のピットストップで逆転、圧勝を飾っていたと思われる。

 また、17周目のピットストップというタイミングは均等割より5周軽く、この量ならば予選でフェラーリの前に行けると踏んだのだろう。軽い状態でガンガン飛ばして行くというアグレッシブな戦略は見事に機能した。

 そのため、ルノーサイドとしてはアロンソをフィジケラより軽くすることで勝てたレース、フェラーリサイドとしては、あと4~7周軽くしていれば接戦に持ち込めたレースと総括できるだろう。

3. まとめ

3.1 レースレビューのまとめ

以下にヨーロッパGPレビューのまとめを記す。

(1) 燃料搭載量やタイヤが同条件ならば予選ではシューマッハがアロンソを0.2秒、レースではアロンソがシューマッハを0.1秒上回っていた。

(2) フェラーリ&シューマッハは予選で強いパッケージにも関わらず、燃料を重くしたことでポールポジションを捨ててしまい、勝負権を失ってしまった。燃料を多く積むのが有効なのは、自身の方がレースペースで優れている場合だ。

(3) アロンソの予選はフィジケラにすら負ける可能性があったが、フィジケラよりも軽い燃料で確実にポールポジションを獲らせ、フェラーリ勢を突き放したルノーの戦略面でのファインプレーが大勝利を呼び込んだ。

3.2 上位勢の勢力図

 上位勢のレースペースをフューエルエフェクトやタイヤのデグラデーションを加味して算出すると、勢力図は表1のようになる。

Table1 上位勢の勢力図

スクリーンショット 2022-01-18 13.17.31を拡大表示

 アロンソとシューマッハの比較は第1スティントで行った。ちなみに、第2スティントではシューマッハが0.2秒上回っていたが、互いの給油量が分かっていたため、アロンソがペースをコントロールしていた可能性が高い。

 戦略で大きな差がついたものの、今回もアロンソとシューマッハが互いのチームメイトを明確に上回るパフォーマンスを示し、予選・決勝を通して僅差の力関係となった。総合力が試されるバルセロナでのこの結果は、2006年シーズンのアロンソvsシューマッハの激闘の縮図と言えよう。