• 2024/12/13 01:28

2021年エミリア・ロマーニャGP分析

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1. 分析結果と結論

 タイヤのデグラデーションや燃料搭載量などを考慮し、全ドライバーのレースペースの力関係を割り出すと表1(ウェットコンディション)および表2(ドライコンディション)のようになった。

Table1 ウェットコンディションでのレースペースの勢力図

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Table2 ドライコンディションでのレースペースの勢力図

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※疑問符がつく部分はオレンジ色で示した

 ハミルトンのウェットでの力は不明だが、ダメージを負った状態にも関わらずフェルスタッペンの背後を追走できており、実際は表1のトップに来たと考えられる。またウェットではフェラーリ、特にルクレールの競争力が非常に高いのも興味深い。

 ドライコンディションでのレースペースについては、ミディアム勢とソフト勢が混在する中での比較なので、純粋なドライバーとマシンのパッケージの力関係にはならないかもしれない点と、ハミルトンとガスリーのクリーンラップのサンプルが少ない点は注釈しておこう。ソフト勢もオレンジで示した。

 ドライではバーレーンGPと比較しても、さほど大きな変化は無さそうだ。フェルスタッペンとハミルトンの2人が抜け出し、ペレスが続いている。ベストオブザレストのガスリーが2強から1秒以内に入り、ノリスが1秒、中団の後方は2秒近い差という状態も前戦と同様だ。

特筆すべきはハースのシューマッハだ。ドライではシューマッハがマゼピンに大差をつけるのみならず、ライコネンと同等、リカルドに肉薄するペースを見せた。ハースの戦闘力からすれば驚異的なペースだったと言える。

2. 分析内容の詳細

 以下に分析の内容を示す。フューエルエフェクトは0.05[s/lap]で計算した。

 また、各ドライバーのクリーンエアでの走行時を比較するために、全車の走行状態をこちらの記事にまとめた。

各ドライバーの使用タイヤはこちらのピレリ公式より

2.1 チーム毎の分析

 まずチームメイト比較を行う。グラフは上にウェットコンディション時を、下にドライコンディション時を示した。

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Fig.1 レッドブル勢のレースペース

 ウェットではフェルスタッペンが圧倒的に速く、平均して1.0秒のペース差があった。また、ドライではタイヤが異なるが、ペレスが自分のペースで走れている場面では、フェルスタッペンとの差は0.4秒程度だった。

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Fig.2 メルセデス勢のレースペース

 チームメイト同士のレースペースは比較不能だった。

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Fig.3 マクラーレン勢のレースペース

 ウェットでは17周目にスワップしてからノリスの競争力が高く、平均1.1秒ほどのペース差があった。また、ドライでは0.7秒程度の差だった。

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Fig.4 フェラーリ勢のレースペース

 サインツはウェットで一時ルクレールと同等のペースで走れているように見えるが、ルクレールは余裕を持っており、タイヤを持たせているのに対し、サインツはそこそこのタレが見受けられた。両者クリーンエアになってからの13周で5.6秒ほど差が開いており、2人の差は0.4秒程度だった。ドライでは両者ダーティエアで比較不能。

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Fig.5 アストンマーティン勢のレースペース

 ウェットでは比較不能。ドライでは、ミディアムのストロールとソフトのベッテル共にデグラデーションが皆無だった。タイヤが異なるため参考値だが、ストロールの方が0.5秒ほど速かった。

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Fig.6 アルファタウリ勢のレースペース

 ウェットではガスリーのタイヤが異なり、比較不能。ドライではガスリーが自分のペースで走れている周回が少なく、直接の比較は難しい。

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Fig.7 アルファロメオ勢のレースペース

 ウェットではライコネンの方が0.2秒ほど速かった。ドライでは逆にジョビナッツィが0.4秒ほど勝るペースを発揮した。

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Fig.8 アルピーヌ勢のレースペース

 アロンソはウェットでオコンにやや離された印象があるが、最初に距離が開いてからは同等かやや上回るペースのため、意図的に距離を置いたと考えるのが自然だろう。

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Fig.9 ハース勢のレースペース

 ウェットではタイヤの履歴が違い、7周の差を評価する術が現状こちらには無いので、比較はしないこととした。ドライでの差は1.2秒というところだろう。

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Fig.10 ウィリアムズ勢のレースペース

 比較可能なデータは無かった。

2.2 チームを跨いだ分析(ウェット)

 今回はハミルトンが若干のダメージを負いながらも、フェルスタッペンより競争力が高いことを伺わせる展開だった。前にフェルスタッペンがいたため、ハミルトンの力の真値は不明だが、そのことは念頭に置いた上で全体図を見ていこう。

 図11にフェルスタッペン、ルクレール、ノリス、ストロールのレースペースを示す。

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Fig.11 フェルスタッペン、ルクレール、ノリス、ストロールのレースペース

 ルクレールは上手くタイヤを最後まで持たせ、フェルスタッペンとは平均0.6秒のペース差だった。
ノリスはクリーンエアを得た17周目以降で見る必要があるが、ルクレールから0.5秒落ち程度だった。
またストロールは、ルクレールから2.0秒落ちのペースだった。

 次にストロール、ラッセル、ライコネン、角田を図12で比較する。

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Fig.12 ストロール、ラッセル、ライコネン、角田のレースペース

 ラッセルとライコネン、角田はストロールとイーブンペースだった。ライコネンはスティント最後にラッセルの2秒以内に追いついているが、ここはラッセルが1周遅いタイムを記録しているため、ハミルトンのケースとは区別し、このように評価した。

 続いてストロール、オコン、シューマッハを図13で比較する。

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Fig.13 ストロール、オコン、シューマッハのレースペース

 オコンは何周か本来のペースで走れていないと考えられ、やや比較が難しいが、本来のペースで走れている部分で比較すれば、ストロールとイーブンペースだった。
 シューマッハはストロールから0.7秒落ちだった。ちなみに21周目からドライタイヤに履き替えている。また、ガスリーの最終スティントは非常に競争力が高く、タイヤの履歴を踏まえても0.4秒のアドバンテージがあった。

 以上を総合し、表1の結論を得た。

2.3 チームを跨いだ分析(ドライ)

 図14にフェルスタッペン、ハミルトン、ノリス、ストロールのレースペースを示す。

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Fig.14 フェルスタッペン、ハミルトン、ノリス、ストロールのレースペース

 ハミルトンのクリーンエアが43、44周目程度しか無いので、あくまで参考値になるが、フェルスタッペンから0.1秒落ち程度と考えられる。ちなみに他の他の多くのGPにも言えることだが、ホームストレートでDRSとスリップを使用してオーバーテイクすると、本来のポテンシャルより速いタイムが出るので注意が必要だ。
 ノリスはソフトタイヤながら安定したペースを刻み、フェルスタッペンから1.0秒落ちのペースだった。
 またストロールはスティント前半が非常に控えめながら、後半ではフエルエフェクト以上にタイムを上げている。53周目にはリカルドに追いついて自分のペースで走れていないが、このままタイムが線形に上がっていったと仮定すればノリスとの差は0.2秒程度と言えるだろう。

 次にフェルスタッペン、ガスリー、ライコネン、シューマッハを図15で比較する。

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Fig.15 フェルスタッペン、ガスリー、ライコネン、シューマッハのレースペース

 ガスリーは50、51周目しか参考にならないが、フェルスタッペンから0.9秒落ちと言える。
ライコネンとシューマッハはイーブンペースで、共にフェルスタッペンの1.9秒落ち程度だった。

 続いてノリスと角田の比較だ。

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Fig.16 ノリスと角田のレースペース

 ソフトタイヤ同士だが、角田のペースが序盤はノリスと0.3秒差程度から始まり、その後角田がタイムを落としたり、ベッテルを攻略した後も暫くペースが戻らなかったりと判断が難しい。一応ここではノリスの0.3秒落ちを本来のペースとしておこう。

 以上を総合し、表2の結論を得た。