• 2024/4/18 23:06

2022年オーストラリアGP レースペース分析

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1. 分析結果と結論

 先に分析結果を示す。分析の過程については次項「2. レースペースの分析」をご覧いただきたい。

表1 ミディアムタイヤでのレースペース

 ミディアムタイヤでは、グレイニングおよびデグラデーションに苦しむレッドブル勢を尻目に、ルクレールが圧倒的なスピードを見せた。

 また、リカルドはノリスの後方から離れずついて行っており、互角か僅差で上回っていたと考えられる。

表2 ハードタイヤでのレースペース

 ハードタイヤでは、ペレスが非常に高い競争力を見せた。フェルスタッペンと同等のペースで走るラッセルを追い回し、36周目に仕留めたことからも今回のペレスの出来の良さは明白だった。

 また、アルボンはルクレールから1.2~1.5秒落ちの間にいる。一方、競争力が高かったと思われるアロンソはデグラデーションを評価する術が見つからず、結論を出すのは不適切と考えた。

 そしてハミルトンはラッセルの後方で同等のペースで走っており、ミディアムの時と同じくラッセルと互角か0.1秒ほど速い程度だったのではないだろうか?

表3 全体のレースペースの勢力図

 総合すると、レース全体のペースの勢力図はこのように結論づけて良いだろう。

 ハミルトンはソフトでのラッセルに対する0.1秒のアドバンテージをそのまま当てはめた。レッドブル勢とメルセデス勢はミディアムタイヤでは苦戦したものの、ハードではかなり競争力があった。ちなみにノリス、ガスリー、オコンらのハードタイヤでの競争力は正確な数値を出すのは無理だが、おおよそミディアムでのペースと大差なさそうなのはグラフから見て取れる。よってそのままの数値で表3に組み込んだ。

 今回はオーバーテイクが難しいサーキットサーキットということもあり、クリアエアでの走行が少ないドライバーが多く、定量的な比較が可能なのは9人に止まった。定性的な話では、リカルドはノリスと互角か少し速そうだということと、アルボンがノリスの前後あたりにいそうだということは言えそうだ。

2. レースペースの分析

 以下に分析の内容を示す。フューエルエフェクトは0.07[s/lap]で計算した。

 また、各ドライバーのクリアエアでの走行時を比較するために、全車の走行状態をこちらの記事にまとめた。

各ドライバーの使用タイヤはこちらのピレリ公式より

2.1 チームメイト比較

 まずはチームメイト同士の比較を見ていこう。

図1 フェルスタッペンとペレスのレースペース

 ミディアム同士の第1スティントでは、フェルスタッペンが0.2秒ほど上回っている。

図2 ハミルトンとラッセルのレースペース

 ミディアム同士の第1スティントでは、ハミルトンが0.1秒ほど上回っている。

図3 アロンソとオコンのレースペース

 SC直前の数周は共にハードタイヤで、オコンが平均0.28秒ほど速い。アロンソのタイヤがレーシングスピードで12周分古いことを、デグラデーション0.07[s/lap]で考慮すると、実力的にはアロンソが0.6秒ほど上回っていたと言える。

 ただし、サンプルが少ない上に、タイヤ履歴の差が大きいことによる有効数字の関係上の疑問符がつき、ガスリーを追走中のデグラデーションの値は憶測の域を出ないと言うのが正直な所だ。

図4 アルボンとラティフィのレースペース

 レース後半のVSC後では、ハードタイヤ同士でアルボンが1.16秒上回っている。アルボンのタイヤがレーシングスピードで19周分古いことを、デグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、実力的にはがアルボンが1.5秒ほど上回っていたと言える。

 ただし、こちらもアルピーヌ勢と同じくアルボンの38周目までのデグラデーションが憶測の域を出ない。最もアルボンのデグラデーションは0.00~0.02の間ではあると考えられるので、ラティフィとの差は1.2~1.5秒程度とある程度絞ることができる。

 最後にマクラーレン勢の第2スティントも比較は可能のように見えるが、前後が大きく開いている中で、2人共に全開走行していたとは考えにくく、比較は不適切と考えた。

2.3. チームを跨いだ比較

 ここからはライバルチーム同士で比較を行っていく。終始クリアエアのルクレールとミディアムタイヤで比較可能なドライバー達から見ていこう。視認性の観点からグラフは2分割した。

図5 ルクレールとの比較(ミディアム1)
図6 ルクレールとの比較(ミディアム2)

 フェルスタッペンの第1スティントはルクレールの0.8秒落ち程度だ。また、ハミルトンは1.0秒落ち、ノリスは1.4秒落ち、オコンとガスリーは2.0秒落ちとなっている。

 さて、続いてはハードタイヤでルクレールと比較可能なドライバーたちを見ていこう。

図7 ルクレールとの比較(ハード)

 フェルスタッペンの第2スティントは、平均でルクレールの0.48秒落ち程度だ。フェルスタッペンのタイヤが4周古いことを、デグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、実力的にはルクレールが0.4秒ほど上回っていたと言える。

 ラッセルの第2スティントは、平均でルクレールの1.13秒落ちだ。ルクレールのタイヤが1周古いことを、デグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、実力的にはルクレールが1.1秒ほど上回っていたと言える。ちなみに平均を取ったのはルクレールがある程度プッシュしており、ラッセルもクリアラップだった29,30周目を採用している。サンプル数は少ないが、VSC後の流れから補助線を引いてくると、この2周はラッセルのレースペースの代表値として相応しいと判断できた。

 SC明けからVSCまで(ルクレールは第2、ラティフィは第3スティント)では、ラティフィは平均でルクレールの2.68秒落ちだ。ルクレールのタイヤが1周古いことを、デグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、実力的にはルクレールが2.7秒ほど上回っていたと言える。

 最後にペレスの第2スティントをラッセルと比較してみよう。

図8 ペレスとラッセルのレースペース

 VSC後で見ると、ペレスがラッセルを平均で0.21秒ほど上回っている。ペレスのタイヤが3周古いことを、デグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、実力的にはペレスが0.3秒ほど上回っていたと言える。

 これらを総合し、表1~3の結論を得た。

Analyst: Takumi