今回はミハエル・シューマッハがフェラーリでの初戴冠を決めた2000年の日本GPをお届けする。
まず図1にシューマッハとハッキネンのレースペースを示す。
第1スティントではハッキネンがその差をじわじわと広げる展開となった。
まずグラフを一見して分かるように、2人のラップタイムの安定性は特筆すべきものがある。さらに、絶対的なペースも極めて速い。燃料搭載量を換算すると、ハッキネンはクルサードを0.4秒、シューマッハはクリアエアを得たバリチェロを1.0秒上回っており、両者ともマシンのポテンシャルを存分に引き出していた。そしてハッキネンとシューマッハの差自体は全くの互角だった。タイトルを争う2人による非常にハイレベルなスティントだったと言えるだろう。
22周目、ハッキネンが先にピットへ。ここでマクラーレンは6.8秒と短めの静止時間で送り出す。これは給油量を少なくしてシューマッハの前をキープしようという判断と思われる。
23周目にはシューマッハもピットイン。ここではハッキネンよりやや長い7.4秒で送り出す。この判断は極めて的を射ている。グラフからも明らかなように新品タイヤを履いたハッキネンの第2スティントの頭は、重い状態でも第1スティント終盤の軽い状態と遜色ないペースを発揮している。加えて前述の通りマクラーレンがピットストップを短くしてきたことで、ここでの逆転はかなり難しくなっていた。したがって、「強引に給油量を少なくするも逆転できず、2回目は先に入ることになる」リスクを冒すより「2回目での逆転の確率を上げる」を選択する方が賢いと考えられる。
第2スティントでは雨の影響で非常に不規則なコンディションとなった。雨が強くなるほど競争力を発揮したのはシューマッハで、ハッキネンがタイムを落としている際に、シューマッハの落ちが相対的に少ないことが読み取れる。3周分軽いハッキネンとしてはここで引き離せなかったのが痛かった。
37周目にはハッキネンがピットへ。雨脚が強まる中、互いにトラフィックやブルツのスピンの影響を受けながらも、軽い状態でプッシュを続けたシューマッハが40周目のピットストップを終え逆転に成功した。
レース最終盤には路面が乾き、ハッキネンがシューマッハに詰め寄ったが、時既に遅し。シューマッハが好敵手の猛追を退けてトップチェッカーを受け、フェラーリ移籍後初のチャンピオンを獲得した。
Writer: Takumi