• 2024/4/26 05:17

ハンガリーGP分析

1. 分析結果と結論

 先に分析結果を示す。分析の過程については次項「レースペースの分析」をご覧いただきたい。

Table1 全体のレースペースの勢力図

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Table2 チームメイト比較(速かった方に✅マーク)

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 ライバル不在の中ハミルトンが圧倒的な速さを見せたが、アロンソも1.0秒差以内で続いており、優勝したオコンと比べてもかなり競争力があった。

 オコンはミディアムでの競争力が相対的に高く、ハードに履き替えてからサインツが0.2秒、アロンソが0.3秒オコンとの差を詰めている。ラティフィもオコンほどではないものの、ミディアムで高い競争力を示している。特にラッセルに対しては大幅に競争力を増している。オコンとラティフィの共通点はクリーンエアだ。ミッキーマウスサーキットの呼び声の通り、乱気流の影響が非常に大きかった可能性が考えられる。

2. レースペースの分析

 以下に分析の内容を示す。フューエルエフェクトは0.06[s/lap]で計算した。

 また、各ドライバーのクリーンエアでの走行時を比較するために、全車の走行状態をこちらの記事にまとめた。

各ドライバーの使用タイヤはこちらのピレリ公式より

2.1 チームメイト同士の比較

 最初に直接の比較が可能なチームメイト同士を見ていこう。

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Fig.1 アロンソとオコンのレースペース

 第1スティント後半でアロンソがクリーンエアを得てからは、アロンソが0.4秒ほど上回っている。それまでのオコンのデグラデーションが0.02[s/lap]と小さいため、アロンソのデグラデーションが0.01[s/lap]なら8周(オコンと明確に異なるペースで周回している部分)で0.1秒と考えられる。よって実力的には0.3秒程度と言えるだろう。
 第2スティントで比較すると、アロンソがクリーンエアの部分では、オコンを0.8秒ほど上回っており、その後のサインツに対する攻勢から鑑みても、無理なハイペースでは無かったと思われる。オコンのタイヤが2周古いことを、デグラデーション0.04[s/lap]で考慮すると、実力的には0.7秒程度と言える。

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Fig.2 ガスリーと角田のレースペース

 第2スティントで、ガスリーが0.6秒ほど上回っている。角田のタイヤが8周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には0.1秒程度と言える。

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Fig.3 ラッセルとラティフィのレースペース

 ラッセルの第1スティントはアロンソにそれなりに接近して走り、15周目付近から引き離されており、クリーンエアになってからのペースをラティフィと直接比較して問題ないだろう。すると0.3秒ほどラティフィが上回っている。
 一方、第2スティントではラッセルが0.4秒ほど上回っている。ラッセルのタイヤが2周古いことは、デグラデーション0.01[s/lap]のため考慮する必要がない。

2.2 ライバルチーム同士の比較

 続いて、チームを跨いだ比較を行う。まずは、オコン、ラティフィ、ジョビナッツィを第1スティントで比較してみよう。

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Fig.4 オコン、ラティフィ、ジョビナッツィのレースペース

 ラティフィはオコンの1.0秒落ちと言える。
 また、第2スティントでは、オコンの1.6秒落ちだ。ラティフィのタイヤが14周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には0.8秒程度と言える。

 また、ジョビナッツィは第1スティントでオコンの0.5秒落ちだ。

 続いて、サインツとアロンソの比較を見てみよう。

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Fig.5 サインツとアロンソのレースペース

 第1スティントで比較すると、アロンソはクリーンエアになってからサインツの0.3秒落ち程度だが、アロンソはスティントを引っ張ることを考えてデグラデーション0.05[s/lap]で走行しているのに対し、サインツは激しくプッシュしてグラフが右肩下がりとなっている。これを考慮すると0.1秒程度の差だったと思われる。
 一方第2スティントではアロンソの0.5秒落ち程度と考えられる。サインツのタイヤが7周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には0.1秒程度と言える。

 続いて、オコン、ハミルトン、ガスリーを比較してみよう。

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Fig.6 オコン、ハミルトン、ガスリーのレースペース

 ガスリーは第1スティント終盤でオコンと同等だ。スティント前半でのガスリーはアロンソとは異なり、前方に接近して走っていたため、オコンとタイヤの状態は似たり寄ったりと考えて良いだろう。

 また32周目からのハミルトンはガスリーを0.8秒上回っている。ハミルトンのタイヤが11周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には1.4秒程度と言える。

 続いて、オコン、ライコネン、シューマッハを比較してみよう。

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Fig.7 オコン、ライコネン、シューマッハのレースペース

 第2スティントで、ライコネンはオコンの1.1秒落ちだ。ライコネンのタイヤが22周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的にはライコネンが0.2秒上回っていたと言える。

 また、シューマッハは第1スティントでオコンの1.7秒落ちだ。
 一方、第2スティントではオコンの1.3秒落ちとなっている。シューマッハのタイヤが3周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には1.1秒程度と言える。

2.3 各タイヤでの勢力図

 これらを踏まえると、2種類のタイヤでの勢力図は以下の通りとなった。

Table3 ミディアムタイヤでのレースペース

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Table4 ハードタイヤでのレースペース

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 これらを総合し、表1の結論を得た。また一方のタイヤでしか、競争力を評価できていないドライバーについては、オコンの競争力がハードよりミディアムで0.2秒上がっている事を前提として、平均値を割り出した。またラッセルとラティフィの平均値は、レース全体におけるハードタイヤの比重の大きさを鑑みての四捨五入を行った。