1. 分析結果
タイヤ・燃料・ダーティエアや全力で走る必要性などの諸条件を考慮に入れると、レース全体でのペースの力関係について、定量的にわかる範囲で、以下のことが言えた。
表1 ミディアムタイヤでのレースペース

表2 ハードタイヤでのレースペース

さらにこれらを総合すると、レース全体でのペースの力関係も以下のように理解することができるだろう。
表3 全体のレースペース


※注意点
ピアストリは第1スティントの終盤でフェルスタッペンについていけなくなっているが、序盤にかなり接近して走っていたため、ダーティエアがタイヤを傷めたと考え、第1スティントでのペースを定量的に結論づけるのは不適切と判断した。
また、サインツは第2スティントでクリアエアを得ていたが、アルボンにDRSを与えるために故意にペースを落としていたため、ここも分析対象から外した。
また、ストロールの第2スティントは有効な周回数が少ないが、L43,44はリプレゼンタティブな値と捉え、ノリスと比較した。
分析結果を振り返って
マクラーレン勢とフェルスタッペンの差は小さく、やはりレッドブルは、主にフロントリミテッドのトラックにおいて、条件がハマればトップで戦う力がありそうだ。
アントネッリは絶対的なペースではラッセルに離されたが、非常にデグラデーションが小さく、まだタイヤを使いきれていないことが推測される。これは新人ドライバーに見られる傾向で、今後改善していくだろう。
ハジャーのペースは未知数(とはいえ、ウィリアムズ勢より明確に速かった)ながらも、ローソンが優れたペースを見せており、やはり今季のレーシングブルズには競争力がありそうだ。
また、2年前には表彰台の常連だったアストンマーティンだが、今やペース不足が深刻な状況となっている。アロンソが何とか中団に持っていっているが、ストロールは最後方争いになってしまっており、非常に厳しい状況と言えるだろう。
2. 分析方法について
フューエルエフェクトは0.08[s/lap]とし、グラフの傾きからデグラデーション値を算出。タイヤの履歴からイコールコンディションでのレースペースを導出した。スティントの長さも考慮し、同じスティントの長さを走った場合のペースを算出している。計算方法は以下の通りである。
・両ドライバーのデグラデーションが一定の場合


・デグラデーションが途中で変化する場合



また、クリア・ダーティエアやスティントの長さ、プッシュするインセンティブなどのレース文脈も考慮している。定量的に導出できないドライバーについては結論を出さず、信頼できる数字のみを公開する方針としている。
また、スティント前半でダーティエアでも、途中からクリアエアになっており、かつ前半のダーティエア内でもタイヤを労われていて極端なペースダウンでもない場合、スティント全体をクリアエアのように扱ってよいと考え、当サイトではその状態をオープンエンドクリアエア(OEC)と定義している。
また、分析対象はドライコンディションのみに限定している。
今回は予選で使用したソフトと新品ソフトの差、スクラブ済みと新品のミディアム・ハードの差は無視することとした。
3. 分析内容
以上の分析手法に基づき、以下の知見を得た。タイヤコンパウンドはアルファベット表記、ドライバーは3文字表記にて略式で記述する。
- Mにて、VERはRUSより0.4秒速かった
- Mにて、RUSはANTより0.4秒速かった
- Mにて、VERはSAIより1.3秒速かった
- Mにて、VERはLECより0.3秒速かった
- Hにて、NORはSTRより2.0秒速かった
- Hにて、PIAはVERより0.1秒速かった
- Hにて、VERはRUSより0.4秒速かった
- Hにて、VERはANTより0.7秒速かった
- Hにて、VERはHAMより0.7秒速かった
- Hにて、PIAはLECより0.3秒速かった
- Hにて、VERはLAWより0.7秒速かった
- Hにて、VERはALOより1.3秒速かった
- Hにて、VERはBEAより1.4秒速かった
- MとHにて(連立方程式を解く形で)、NORはLECより0.1秒速かった
- Mにて、NORはSTRより1.3秒速かった
これらを総合し、表1~3の結論を得た。
4. インタラクティブグラフ
さて、これらの分析の背景情報を把握するには、各車のペースグラフとギャップグラフを見るのが有効だ。自身で、ラップタイム比較を可視化して確認したり、より深い洞察を行ったりしたい方には、こちらのグラフを使っていただければ幸いだ。
各車のペースグラフとギャップグラフをインタラクティブな形にしており、ボタン操作で見たいドライバーだけを表示できる。ラップタイムグラフにおいて、ダーティエアのラップ(前方2秒以内に他車がいる)は各データ点を白抜き、クリアエアのラップは塗りつぶしてあるため、レース文脈も把握しやすい。右上のボタンでダウンロードやズームなども可能だ。
ぜひ、ご活用いただきたい。
Lap Times
Gap to Leader
Takumi