今回も開幕戦オーストラリアGPと同じく、アロンソとライコネンがそれぞれ異なる戦略を駆使して戦った2013年のスペインGPを振り返っていこう。
なお、最初に1. レースのあらすじ、次に2. 詳細な分析を記した。
1. レースのあらすじ
予選は結果は以下の通りとなった。
POS | DRIVER | CAR | Q1 | Q2 | Q3 |
---|---|---|---|---|---|
1 | Nico Rosberg | MERCEDES | 1:21.913 | 1:21.776 | 1:20.718 |
2 | Lewis Hamilton | MERCEDES | 1:21.728 | 1:21.001 | 1:20.972 |
3 | Sebastian Vettel | RED BULL RACING RENAULT | 1:22.158 | 1:21.602 | 1:21.054 |
4 | Kimi Räikkönen | LOTUS RENAULT | 1:22.210 | 1:21.676 | 1:21.177 |
5 | Fernando Alonso | FERRARI | 1:22.264 | 1:21.646 | 1:21.218 |
6 | Felipe Massa | FERRARI | 1:22.492 | 1:21.978 | 1:21.219 |
7 | Romain Grosjean | LOTUS RENAULT | 1:22.613 | 1:21.998 | 1:21.308 |
8 | Mark Webber | RED BULL RACING RENAULT | 1:22.342 | 1:21.718 | 1:21.570 |
9 | Sergio Perez | MCLAREN MERCEDES | 1:23.116 | 1:21.790 | 1:22.069 |
10 | Paul di Resta | FORCE INDIA MERCEDES | 1:22.663 | 1:22.019 | 1:22.233 |
11 | Daniel Ricciardo | STR FERRARI | 1:22.905 | 1:22.127 | |
12 | Jean-Eric Vergne | STR FERRARI | 1:22.775 | 1:22.166 | |
13 | Adrian Sutil | FORCE INDIA MERCEDES | 1:22.952 | 1:22.346 | |
14 | Jenson Button | MCLAREN MERCEDES | 1:23.166 | 1:22.355 | |
15 | Nico Hulkenberg | SAUBER FERRARI | 1:23.058 | 1:22.389 | |
16 | Esteban Gutierrez | SAUBER FERRARI | 1:23.218 | 1:22.793 | |
17 | Valtteri Bottas | WILLIAMS RENAULT | 1:23.260 | ||
18 | Pastor Maldonado | WILLIAMS RENAULT | 1:23.318 | ||
19 | Giedo van der Garde | CATERHAM RENAULT | 1:24.661 | ||
20 | Jules Bianchi | MARUSSIA COSWORTH | 1:24.713 | ||
21 | Max Chilton | MARUSSIA COSWORTH | 1:24.996 | ||
22 | Charles Pic | CATERHAM RENAULT | 1:25.070 |
決勝では5番手スタートのアロンソが、ターン3でライコネン&ハミルトンの2台を大外刈りでオーバーテイク。ロズベルグ、ベッテルに次ぐ3番手に着ける。
1回目のピットストップではアロンソがベッテルをアンダーカット。13周目にロズベルグを交わしてトップへ躍り出る。また後ろにいたベッテルとマッサもこの周でロズベルグをパス。その後ろのライコネンは15周目に交わした。
ここからはアロンソ、ベッテル、マッサ、ライコネンが、それぞれチェッカーまでクリアエアで走る展開となった。
優勝は4ストップのアロンソ、3ストップを選択したライコネンが2位に入り、アロンソと同様の戦略のマッサが3位、フェラーリ勢より第2スティントを引っ張ったベッテルは、マッサに逆転を許して4位となった。
以下に決勝結果を示す。
POS | DRIVER | CAR | LAPS | TIME/RETIRED | PTS |
---|---|---|---|---|---|
1 | Fernando Alonso | FERRARI | 66 | 1:39:16.596 | 25 |
2 | Kimi Räikkönen | LOTUS RENAULT | 66 | +9.338s | 18 |
3 | Felipe Massa | FERRARI | 66 | +26.049s | 15 |
4 | Sebastian Vettel | RED BULL RACING RENAULT | 66 | +38.273s | 12 |
5 | Mark Webber | RED BULL RACING RENAULT | 66 | +47.963s | 10 |
6 | Nico Rosberg | MERCEDES | 66 | +68.020s | 8 |
7 | Paul di Resta | FORCE INDIA MERCEDES | 66 | +68.988s | 6 |
8 | Jenson Button | MCLAREN MERCEDES | 66 | +79.506s | 4 |
9 | Sergio Perez | MCLAREN MERCEDES | 66 | +81.738s | 2 |
10 | Daniel Ricciardo | STR FERRARI | 65 | +1 lap | 1 |
11 | Esteban Gutierrez | SAUBER FERRARI | 65 | +1 lap | 0 |
12 | Lewis Hamilton | MERCEDES | 65 | +1 lap | 0 |
13 | Adrian Sutil | FORCE INDIA MERCEDES | 65 | +1 lap | 0 |
14 | Pastor Maldonado | WILLIAMS RENAULT | 65 | +1 lap | 0 |
15 | Nico Hulkenberg | SAUBER FERRARI | 65 | +1 lap | 0 |
16 | Valtteri Bottas | WILLIAMS RENAULT | 65 | +1 lap | 0 |
17 | Charles Pic | CATERHAM RENAULT | 65 | +1 lap | 0 |
18 | Jules Bianchi | MARUSSIA COSWORTH | 64 | +2 laps | 0 |
19 | Max Chilton | MARUSSIA COSWORTH | 64 | +2 laps | 0 |
Jean-Eric Vergne | STR FERRARI | 52 | DNF | 0 | |
Giedo van der Garde | CATERHAM RENAULT | 21 | DNF | 0 | |
Romain Grosjean | LOTUS RENAULT | 8 | DNF | 0 |
2. 詳細なレース分析
2.1. アロンソの母国優勝の3つの要因
まずはアロンソ・ライコネン・マッサのレースペースを図1に示す。
アロンソの勝利には大別して3つの要因がある。
1つは純粋なペースだ。
フェラーリ自体も、マッサが自力でベッテルに勝てる程度の競争力があった。しかし今回のライコネンのペースはかなりのもので、アロンソの腕が生んだコンマ数秒が違いを生んだ。
クリアエアを得た13周目以降で見ると、アロンソはマッサに対して第2スティントで0.6秒、第3スティントで0.9秒ほど上回るペースを見せている。タイヤのデグラデーションを換算しても0.4秒と0.6秒という大差で、アロンソの持つ純粋なスピードが勝利を手繰り寄せたことが分かる。
アロンソは、この年ここまでのレースでも、オーストラリアGPで0.4秒、中国GPで0.9秒の差をつけてチームメイトを上回っており、この驚異的なレースペースによってリザルトを大きく変えてきた。それがここ母国スペインでも遺憾無く発揮された形だ。
2つ目の要因は、1周目でのポジションアップから9周目のアンダーカットまでの流れだ。
1周目にハミルトンとライコネンをまとめて交わしたことでベッテルの背後につけ、それが9周目のアンダーカットへと繋がった。ここで第2スティントがベッテルの後方で始まり、その後も抜けなかった場合、実際のレースでベッテルに対して築いていた4秒のマージン+1秒程度は無かったことになる。
3つ目の要因は、ライコネンが時折タイムロスをしたことだ。
ライコネンは23,24周目にベッテルに引っかかって、1秒以上ロスしている。また次のピットストップを終えた29周目にも再びベッテルに引っかかってしまった。さらにこの時はベッテルが周回遅れのDRSを使えたこともあり、33周目のターン1まで後ろに留まることになってしまった。
ベッテルや周回遅れの居場所まではコントロールできないため、ライコネンにとっては不運だったと言えるだろう。ただしライコネンは30周目のシケインで縁石に乗せすぎており、これが無ければ31周目のターン1でパスできていたと思われるので、ここは勿体なかった部分だ。何れにせよ、この3周強で4秒近く失っているのは非常に痛い。
実際のレースでは、アロンソは39周目にライコネンを交わし、ライコネンが3回目のピットストップを迎える45周目にはその差は10.6秒に広がっていた。しかし、要因2と要因3の5+5=10秒が無ければ、ライコネンは45周目付近でアロンソに交わされた時点でピットイン、アロンソをアンダーカットして最終スティントで守り切るという展開に持ち込めた筈だ。
まとめると、1周目のアグレッシブな走りで順位を上げ、9周目にベッテルをアンダーカット、13周目にロズベルグを交わして、早々とクリアエアを得たアロンソが、ハイペースを活かしきって4ストップ作戦を成功させたレースと総括できるだろう。
2.2. ベッテルvsマッサはなぜ逆転した?
このレースを見ていて、第2スティントでマッサを引き離していたベッテルが、同じ4ストップにも関わらず何故最終的にマッサの後ろになったのか、疑問を持った方も多いのではないだろうか?本ページではその部分にも着目してみよう。
図2にベッテル、マッサ、ウェバーのレースペースを示す。
ベッテルは第2スティントまでは順調だった。しかし問題は第3スティント以降だ。
第2スティントのベッテルはウェバーより平均1.4秒ほど速い。これはタイヤの差を換算してもベッテルが0.3秒ほど速かったことを意味している。
しかし第3スティントになると、燃料が軽くなったにも関わらず、同じくプライムタイヤの自身の第2スティントと殆ど変わらないペースでしか走れていない。このスティントではタイヤの差を換算するとウェバーの0.5秒落ちのペースだ。そして当然マッサに対しても、3周新しいタイヤにも関わらず殆ど変わらないペースだ。さらに38周目には崖を迎えてしまい、3ストップを諦めざるを得なくなっている。
その後の第4スティントでもペースが上がらず、最終スティントでようやく息を吹き返したが、勝負アリだった。
対するマッサはアロンソには遅れを取ったものの、全てのスティントで力を出し切っており、これが3位表彰台に繋がった。
Writer: Takumi