※7/31 20:26 「レースペースを振り返って」を加筆
1. 分析結果と結論
各タイヤごとの各車のレースペースの力関係を表1,2に示す。
表1 ソフトタイヤでのレースペース
表2 ミディアムタイヤでのレースペース
そしてここまでを総合してレース全体でのレースペースの力関係を求めると、表3のようになる。
表3 全体のレースペース
☆注意点
今回は路面が濡れていた間にソフトタイヤに履き替えたノリス、ラッセル、ストロールが3人揃ってその後のスティントの出来が圧倒的に良くなるという現象が起きた。よって、その3人の中での比較を行い、アロンソとの0.4秒差が既に判明しているストロールを基準として当てはめた。
今回は中団以下のグループにおいて、ダーティエアの影響によってレースペースの定量的な分析が不可能なケースが多かった。基本的には上位から中団上位勢のペースをまとめたものと考えていただきたい。
レースペースを振り返って
フェルスタッペンが圧倒的なペースを見せた。フェラーリも競争力があり、ペレスとは近いところで戦え、ハミルトンに対しては僅差ではあるが優勢となった。ここ最近のフェラーリはレースでの失速をやや改善してきているようにも見受けられる。
また角田はまたしてもレースでかなり競争力があった。今季のアルファタウリは近年とは逆の傾向で、予選よりもレースに向いたマシンであることが今回も示唆された形だ。
また興味深いことに、ノリス、ラッセル、ストロールの最終スティントをシンプルに計算すると、上記分析内容よりも0.9秒速い結果が出ていた。ノリスに至ってはフェルスタッペンと互角の力があったことになってしまい、これは純粋なパフォーマンスを表す値でないことは明白だ。
三者の共通点はウェット路面時にソフトタイヤに履き替えたことだ。これはスティントの序盤に濡れた路面を走ることでスティント全体のパフォーマンスが上がることを示唆していると解釈できそうだ。筆者はこのメカニズムについて説明するだけのタイヤエンジニアリングの能力を持ち合わせていないが、「スローイントロダクション」の重要性を示しているとも考えられるのではないだろうか?
2. 分析方法について
フューエルエフェクトは0.10[s/lap]とし、グラフの傾きからデグラデーション値を算出。タイヤの履歴からイコールコンディションでのレースペースを導出した。また、クリア・ダーティエアやレースの文脈も考慮している。
また、スティント前半でダーティエアでも、途中からクリアエアになっており、かつ前半のダーティエア内でもタイヤを労われていて極端なペースダウンでもない場合、スティント全体をクリアエアのように扱ってよいと考え、当サイトではその状態をオープンエンドクリアエア(OEC)と定義している。
今回は予選で使用したソフトと新品ソフトの差、スクラブ済みと新品のミディアム・ハードの差は無視することとした。
※今回も「全車の走行状態」を割愛し、各チーム毎のレースペースグラフは下記「3.付録」に示した。
3. 付録
参考までに、分析に使用したグラフを添付する。
Writer: Takumi