• 2024/11/21 15:22

2021年オランダGP分析

1. 分析結果と結論

 先に分析結果を示す。分析の過程については次項「レースペースの分析」をご覧いただきたい。

Table1 全体のレースペースの勢力図

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Table2 チームメイト比較(速かった方に✅マーク)

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 今回はハードタイヤの競争力が低く、フェルスタッペンは第3スティントでハードを履いたことで、ハミルトンとの本来の実力差よりも接戦となった。
 フェラーリ勢もハードタイヤで競争力を欠いたことが、本来上回っているはずのガスリーやアロンソに先行される要因となった。

 勢力図としてはレッドブルとメルセデスが抜け出し、フェルスタッペンとハミルトンがチームメイトを圧倒する、通常通りの展開となった。中団勢もフェラーリとマクラーレンにアルファタウリが続く形で、今シーズンの最も典型的な内容と言える。

 チームメイト比較でも、(普段レースペースで上回っている側の)エースドライバーがもう一方に大きな差を付けており、ザンドフールトがマシンとドライバーの力を試すチャレンジングなサーキットであることが伺える。

 また下記の分析過程で、ハミルトンの第3スティントのペースがフェルスタッペンより優れていた事に触れているが、実際にはブルーフラッグがことごとくハミルトンに不利に働いたことで、フェルスタッペンが差を広げる形となっていたことが分かった。今回の優勝争いは、ボッタスのチームプレイとタイヤ選択によって本来よりも接戦になり、ブルーフラッグによって本来よりも差が開いた形だったことが分かった。

2. レースペースの分析

 以下に分析の内容を示す。フューエルエフェクトは0.06[s/lap]で計算した。

 また、各ドライバーのクリーンエアでの走行時を比較するために、全車の走行状態をこちらの記事にまとめた。

各ドライバーの使用タイヤはこちらのピレリ公式より

2.1 チームメイト同士の比較

 最初に直接の比較が可能なチームメイト同士を見ていこう。

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Fig.1 フェルスタッペンとペレスのレースペース

 ペレスの第2スティントについて、クリーンエアの部分から推測すると、平均的に1:15:2程度だったと考えられる。フェルスタッペンの第2スティントでの本来のペースが1:14.1程度と考えられるため、1.1秒落ちだ。ペレスのタイヤが12周古いことを、デグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると、実力的には0.5秒程度と言える。

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Fig.2 ハミルトンとボッタスのレースペース

 第1スティントでは、ハミルトンが0.3秒ほど上回っている。
 ハミルトンの第3スティントとボッタスの第2スティントを比較すると、ハミルトンが0.8秒上回っている。ボッタスのタイヤが8周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には0.3秒程度と言え、ソフトでの力関係と同様だ。

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Fig.3 ガスリーと角田のレースペース

 第1スティントでは、クリーンエアを得た角田が、ガスリーのスティント全体の平均より0.6秒落ちのペースを刻んでいる。
 第2スティントで比較すると、クリーンエアの部分ではガスリーが0.6秒ほど上回っている。ガスリーのタイヤが7周古いことを、デグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、実力的には0.7秒程度と言える。

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Fig.4 ルクレールとサインツのレースペース

 第1スティントではルクレールが0.3秒ほど上回っている。
 第2スティントではルクレールが0.5秒ほど上回っている。サインツのタイヤが3周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には0.3秒程度と言える。こちらもタイヤによる力関係の変化はなしだ。

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Fig.5 アロンソとオコンのレースペース

 第1スティントは、ピットアウトしてきたガスリーの影響が出始める27周目より前で評価すべきだろう。スティント全体で0.3秒ほどアロンソが上回っている。ただし、ペースマネジメントが過激なため、やや疑問符がつく数字だ。
 一方、第2スティントのクリーンエア部分では0.4秒ほどアロンソが上回っている。ここでの両者のタイヤマネジメントの差はそれほど無いと思われ、オコンのタイヤが2周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には0.3秒程度と言える。これは第1スティントの数字と一致し、今回は各チームでタイヤによる力関係の変化が見られないことから、第1スティントの疑問符を外して良いだろう。

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Fig.6 リカルドとノリスのレースペース

 第2スティントではノリスが1.0秒ほど上回っている。リカルドのタイヤが12周古いことを、デグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、実力的には0.8秒程度と言える。ただし、スティントの前半で比較しているため、疑問符付きとなる。

 また第1スティントではクリーンエアを得てからのタイムを見ても、スティント全体を平均しても、ミディアムのノリスがソフトのリカルドを0.7秒上回っている。

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Fig.7 クビサとジョビナッツィのレースペース

 60周目付近を見ると、ジョビナッツィが0.4秒ほど上回っている。ジョビナッツィのタイヤが7周古いことを、デグラデーション0.03[s/lap]で考慮すると、実力的には0.6秒程度と言える。

 ちなみに第1スティントでは、ソフトのジョビナッツィがミディアムのクビサを0.3秒ほど上回っている。他チームでタイヤによる力関係の変化が見られないことから、0.3秒をアルファロメオのミディアムとソフトの差として問題ないと判断しよう。

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Fig.8 ラッセルとラティフィのレースペース

 第2スティントで比較すると、ラッセルが0.7秒ほど上回っている。ラティフィのタイヤが4周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には0.5秒程度と言える。

2.2 ライバルチーム同士の比較

 続いて、チームを跨いだ比較を行う。まずは、フェルスタッペン、ハミルトン、ガスリー、ルクレールを比較してみよう。

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Fig.9 フェルスタッペン、ハミルトン、ガスリー、ルクレールのレースペース

 まずはフェルスタッペンとハミルトンを比較する。
 第1スティントは、ソフト同士でフェルスタッペンが0.1秒ほど上回っている。
 第2スティントでは、ミディアム同士でボッタスのチームプレイや青旗の影響を加味すると、フェルスタッペンが0.3秒ほど上回っていたと考えられる。

 ちなみに、第3スティントでは、ハードのフェルスタッペンとミディアムのハミルトンがイーブンペースだ。ハミルトンのタイヤが1周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には0.1秒程度と言える。

 次にガスリーの第1スティントは、ソフト同士でフェルスタッペンの1.4秒落ちだ。
 また第2スティントでは、ミディアム同士でハミルトンの1.7秒落ちとなっている。ガスリーのタイヤが15周古いことを、デグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、実力的には1.4秒程度と言える。

 次にルクレールについて見てみよう。
 第1スティントでは、ソフト同士でガスリーを0.1秒ほど上回っている。
 第2スティントでは、ハード同士でフェルスタッペンの1.5秒落ちだ。ルクレールのタイヤが6周古いことを、デグラデーション0.04[s/lap]で考慮すると、実力的には1.3秒程度と言える。

 ちなみに第2スティントでガスリーと比較してみると、ハードのルクレールがミディアムのガスリーを0.2秒ほど上回っている。ガスリーのタイヤが10周古いことを、デグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、実力的には互角と言える。これはここまでで導き出した数字と辻褄が合っている。

 続いて、アロンソ、リカルド、ジョビナッツィをルクレールとの比較で見てみよう。

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Fig.10 ルクレール、アロンソ、リカルド、ジョビナッツィのレースペース

 ソフトタイヤの第1スティントで比較すると、アロンソはルクレールの0.6秒落ち程度だ。
 また、リカルドは1.0秒落ち、ジョビナッツィは1.1秒落ちとなっている。

 次にハードの第2スティントで比較する。
 リカルドはルクレールの0.2秒落ち程度だ。リカルドのタイヤが4周古いことを、デグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、実力的には0.1秒程度と言える。
 ジョビナッツィは60周目付近でルクレールの0.6秒落ち程度だ。デグラデーションは0.03[s/lap]程度のため、30周程度でルクレールとは0.3秒ほどの差がついていると考えられ、実力的には0.3秒程度と言える。

 続いて、第2スティントのラッセルをルクレールとの比較で見てみよう。

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Fig.11 ルクレールとラッセルのレースペース

 ラッセルはルクレールの0.7秒落ち程度だ。ラッセルのタイヤが7周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には0.3秒程度と言える。 

 次にアロンソとシューマッハのミディアムでのペースをハミルトンと比較しみよう。

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Fig.12 ハミルトン、アロンソ、シューマッハのレースペース

 アロンソのタイヤマネジメントは、レース終盤にサインツをオーバーテイクする事を見据えているが、デグラデーション0.06[s/lap]で走った場合は1:15.2程度だったと考えられる。これはハミルトンのスティント平均の1.6秒落ちだ。アロンソのタイヤが6周古いことを、デグラデーション0.02[s/lap](第1スティントから推察)で考慮すると、実力的には1.5秒程度と言える。

 シューマッハは第3スティントのミディアムでハミルトンの2.6秒落ちだ。シューマッハのタイヤが9周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には2.1秒程度と言える。

 続いてベッテルをハミルトンと比較する。

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Fig.13 ハミルトンとベッテルのレースペース

 ベッテルの最終スティントは評価しにくいが、平均的に1:14.4程度だったと思われ、これはハミルトンの1.2秒落ちだ。ハミルトンのタイヤが5周古いことを、デグラデーション0.06[s/lap]で考慮すると、実力的には1.5秒程度と言える。

 最後に、他のドライバーとの直接の比較上の接点はないが、クビサとマゼピンを比較しよう。

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Fig.14 クビサとマゼピンのレースペース

 第1スティントでは、ミディアム同士でクビサが0.4秒上回っている。これは後にアルファロメオのチームメイト比較とタイヤのパフォーマンス差から総合の勢力図に組み込むとしよう。

 またミディアムタイヤとハードタイヤのパフォーマンス差を割り出すため、アロンソとルクレールの比較もしておこう。

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Fig.15 ルクレールとアロンソのレースペース

 第1スティントではアロンソを0.6秒上回っていたルクレールだが、第2スティントではイーブンペースとなっている。
 フェルスタッペンもミディアムタイヤで0.3秒上回ったハミルトンに、ハードタイヤでは0.1秒劣っていたことから、今回はミディアムがハードより0.4~0.6秒ほど速かったと結論づけるのが妥当だろう。

2.3 各タイヤでの勢力図

 これらを踏まえると、2種類のタイヤでの勢力図は以下の通りとなった。

Table3 ソフトタイヤでのレースペース

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Table4ミディアムタイヤでのレースペース

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Table5 ハードタイヤでのレースペース

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 仮にアルファロメオで確認できたソフトとミディアムの0.3秒のパフォーマンス差が、マクラーレンにも当てはまるとなると、ノリスのリカルドに対するアドバンテージは0.4秒程度となり、ハードタイヤでの競争力も頷けるものになる。ハードタイヤでの疑問符付きの0.8秒差を信じてしまうと、ノリスがルクレールを0.7秒上回ることになり、前者を採用するべきなのは明白と思われる。逆にノリスのハードタイヤでの競争力が高く見えたことから、スティント前半にかなり飛ばしていた事が読み取れる。0.3という数字そのものには疑問符が残るが、大きく外れた数字では無いと考えられ、念の為疑問符は付加するものの、これを信憑性のある最終結論としたい。

 これらを踏まえると、レース全体を通しての結果は、前述の表1のようになる。