優勝争いに焦点を当てたPart1に引き続き、Part2では中段争い、そして注目の角田裕毅に着目し、彼らがどんな戦いを繰り広げたのか、そして今シーズンの展望を考察していきたい。
※レース用語は太字部分で示し、記事末尾に用語解説を加筆した
目次
- 中段最速はマクラーレン
- ルクレールに匹敵した角田
- 次戦イモラでは予選に注目
- 用語解説
1. 中段最速はマクラーレン
以下にノリスとペレスのレースペースを比較したグラフを示す。
Fig.1 Norris vs Perez
ノリスはソフト-ミディアム-ハード、ペレスはミディアム-ハード-ハードと異なるタイヤ戦略を採用したが、ペレスは第2スティントでは7周、第3スティントでは5周ぶん新しいタイヤを履いており、デグラデーションを1周0.1で考慮するとほぼ互角かややペレス優勢と言う程度で、ノリスのレースペースは特筆すべきものだった。
フェラーリとの比較でもマクラーレンは優勢に立った。以下にノリスとルクレールの比較を示す。
Fig.2 Norris vs Leclerc
最終スティントでは差が開いているが、第1、第2スティントでは比較的小さな差となっている。第1スティントでは再スタート後3周に渡ってノリス優勢で攻めたものの、オーバーテイク後はノリスがペースを落としてタイヤマネジメントに入っている。アロンソがアンダーカットに来たため結果的に12周目で防御のためのピットストップを行ったが、もっと伸びても対応できるようにペースコントロールしていたと考えられる。第2スティントも周囲に合わせて2回目のピットストップを行うまではルクレールとの差をキープしながらタイヤを労わり、相手が入ったら翌周自分も入るという非常に手堅いレースとなった。この戦略はマクラーレンが昨年から頻繁に採用しているやり方で、今後もマクラーレン戦法は中段争いのライバル達にとって大きな壁になるだろう。
以下はノリスとリカルドのチームメイト比較である。
Fig.4 Norris vs Ricciardo
タイヤ戦略は二人とも同じであるが、全体的にノリスの方が良いペースを維持している。前述の通り、ノリスのペースは第3スティントが真の実力であり、差は意外と大きい。リカルドは本来、ハミルトン・フェルスタッペン・ルクレールに次ぐ実力者と評価されており、まだ移籍初戦で伸びしろは多いように見受けられる。シーズン後半リカルドがノリスを上回り始めるとマクラーレンの実力がさらに底上げされてくることになる。
※3/31追記:リカルドは序盤のガスリーとの接触でフロアにダメージを追っていたとのことで、ノリスとのペースさはダメージによるものであることが分かった。イモラで万全な状態での比較ができることを期待したい。
2. ルクレールに匹敵した角田
以下に角田とノリス、ルクレールの比較を示す。
Fig. 5 Tsunoda vs Norris vs Leclerc
角田のペースは同じハードタイヤを履いた最終スティントではルクレールと互角のペースを示した。第2スティントではミディアムのルクレールより3周新しいハードタイヤでほぼ互角で、デグラデーションの小ささが伺える。
予選Q2でミディアムタイヤを使いこなせなかったため、スタートポジションが不利なものになってしまったが、予選とスタートを決めてさえいれば6位争いが可能だったことが分かる。これだけの競争力を毎戦安定して発揮し続ければ、レース展開次第では今シーズン中の表彰台も可能と考えても決して楽観的ではない。
3. 次戦イモラでは予選に注目
レースペースではトップドライバーの資質を伺わせた角田。今回の予選Q2ではアウトラップの走り方かセットアップか何らかの要因でミディアムタイヤを機能させられなかったが、より涼しい気候のイモラでどうなるかが注目ポイントとなるだろう。予選Q3に進めば本来の実力に見合った位置でのレースができるので、より多くの情報が見えてくると思われる。
4. 用語解説
アンダーカット:前を走るライバルより先に新品タイヤに履き替えることで速いラップタイムを刻み、その間摩耗したタイヤで数周走ったライバルがタイヤを履き替えて出てきた際には自分が前に立つ、という戦略。
デグラデーション:タイヤのタレ。1周あたり〜秒という表現が多い。使い方次第でコントロールできる。
タイヤマネジメント:タイヤを労って走ること。現在のピレリタイヤは温度は1度変わるだけでグリップが変わってくる非常にセンシティブなものなので、ドライバーとエンジニアの連携による高度な技術が求められる。基本的にはタイヤマネジメントが上手いドライバーやチームが勝者となりチャンピオンとなることが多く、最も重要な能力と考える人も多いだろう。
アウトラップ:ピットアウトした周。予選ではアウトラップを走り、2周目でアタックを行い、3周目でピットインする(インラップ)。アウトラップでは適切なタイヤの温度でラップをスタートできるよう調整する必要があり、速く走りすぎても、遅く走りすぎてもいけない。前後左右のタイヤのバランスも整えるため、例えば左コーナーを速めに回って右フロントを温めたり、少し余計にアクセルを踏んでリアを温めたりする。