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歴代ドライバーの競争力分析(予選) Ver.1.2

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 こちらでは当サイトで行ってきたドライバー達のチームメイト比較を基に、歴代トップドライバー達の予選での力関係を割り出した。またレースペースの分析は今後2~4年に渡って行っていく予定が、その過程で予選分析に対して新たな視点が見えてくることは十分に考えられる。現時点では暫定的なものと考えていただきたい。

1. 結論

 先に分析結果と結論を示す。

Table1 トップドライバー達の予選での力関係
※g=ノれている時、ng=ノれていない時

 有効数字は2桁で示したが、0.05秒を最小単位と考えていただきたい。

 さて、最上位に位置するのはミハエル・シューマッハ、マックス・フェルスタッペン、ルクレールらだ。それに続くのがハミルトン、コバライネン、アロンソといった辺りになる。ガスリーやマクラーレン時代のライコネン、リカルドもそこに肉薄するレベルと思われる。

 ハミルトンはマクラーレン時代とメルセデス(2014年以降)時代で週末に対するアプローチが異なり、2014年以降はジョック・クレアの助言によりレースペースを重視するようになった。

 ライコネンは「ノれている時」と「ノれていない時」の差が大きいのが面白いドライバーだ。さらにノれている時でもマクラーレン時代は特に速さを見せている。

 そして、ハミルトンを基準にニコ・ロズベルグの力を割り出すと、メルセデス時代のミハエル・シューマッハはフェラーリ時代よりも0.4秒ほど遅かったと考えられる。

 そこにベッテル、ロズベルグ、「ノれている」マッサや「ノれている」2007年以降のライコネンが続き、ボッタスやフィジケラらも近辺にいるだろう。グロージャン&マグヌッセンのハースで互角だったコンビもそこに比肩する。そして僅差でオコンやヒュルケンベルグ、さらにそこから僅差でバトンやバリチェロが続く形で、ペレスも近辺にいると考えられる。

 またサインツの実力は、分析本文中で後述する通り非常に測りづらく表内には示さなかった。デビュー時と近年のパフォーマンスから見ればフェルスタッペンやルクレールと同等かそれ以上、2016〜18年から見ればリカルドからその少し下辺りとなっている。

 また、これは飽くまで予選一発の分析に過ぎないことも忘れないようにしておきたい。ライコネンやアロンソ、あるいはバトン辺りは相対的にレースで力を発揮するタイプで、他のドライバー達にもその年によって予選重視のアプローチや決勝重視のアプローチがあると思われる。したがってレースペース分析を終えるまでは、暫定的なものと捉えていただければ幸いだ。

2. 分析

2.1. Ver1.1の分析内容

 以下に分析の内容を詳細に記す。まずミハエル・シューマッハを基準に見てみよう。

2000年:vs バリチェロ 15勝2敗(-0.358秒差)
2001年:vs バリチェロ 15勝1敗(-0.548秒差)
2002年:vs バリチェロ 13勝4敗(-0.227秒差)
2003年:vs バリチェロ 7勝1敗(-0.243秒差)
2004年:vs バリチェロ 11勝0敗(-0.379秒差)
2005年:vs バリチェロ 7勝1敗(-0.355秒差)

 これはバリチェロを0.35秒上回っていると表現して良いだろう。2001年はバリチェロが、2003年はシューマッハが今ひとつの出来だったと考える。また、2002年はマシンにアドバンテージがあり、シューマッハは攻めた走りをしていなかったと思われる。

 続いてバリチェロをバトンと比較すると、

2007年:vs バトン マレーシアGPを除き 8勝7敗(-0.01秒差)
2008年:vs バトン 9勝5敗(-0.01秒差)
2009年:vs バトン 7勝6敗(+0.007秒差)

 2人は互角と考えて良いだろう。

 続いてハミルトンのバトンに対する戦績を見てみよう。

2010年:vs バトン 12勝2敗(-0.282秒差)
2011年:vs バトン 12勝5敗(-0.167秒差)
2012年:vs バトン 15勝1敗(-0.272秒差)

 2011年のハミルトンはレースでもややとっ散らかっており、2003年のシューマッハと同じ扱いで本来の実力を発揮できなかったと見よう。よってバトンとは0.30秒の差と考える。

 一方でアロンソはバトンに対して

2015年:vs バトン 7勝5敗(-0.056秒差)
2016年:vs バトン 13勝2敗(-0.231秒差)

 となっている。2015年は移籍初年度のため2016年のデータを採用しよう。

 ここから導かれる結論は以下の通りだ。

Table2 

 次にこれを別角度から検証してみよう。マッサを介した比較だ。

 シューマッハはマッサに対して

2006年:vs マッサ 10勝0敗(-0.49秒差)

 一方でアロンソは

2010年:vs マッサ 11勝2敗(-0.306秒差)
2011年:vs マッサ 14勝3敗(-0.373秒差)
2012年:vs マッサ 15勝1敗(-0.335秒差)
2013年:vs マッサ 6勝5敗(-0.173秒差)

 こちらは0.35秒差と見て良いだろう。2010年はアロンソが移籍1年目、2013年は「ノれているマッサ」(※後述)と考えるのが自然だ。

 そしてマッサは

2014年:vs ボッタス 3勝8敗(+0.192秒差)
2015年:vs ボッタス 6勝8敗(+0.029秒差)
2016年:vs ボッタス 3勝14敗(+0.188秒差)

 こちらも2015年を「ノれているマッサ」と考え、通常時はボッタスの0.20秒落ちとするのが自然だろう。

 最後にハミルトンは

2017年:vs ボッタス 12勝5敗(-0.239秒差)
2018年:vs ボッタス 12勝5敗(-0.160秒差)
2019年:vs ボッタス 14勝7敗(-0.122秒差)
2020年:vs ボッタス  アブダビGPを除き 9勝4敗(-0.133秒差)
2021年:vs ボッタス 13勝5敗(-0.157秒差)

 こちらは0.15秒差と見るのが妥当だろう。まずボッタスの移籍初年度の2017年は除く。また2019、20年にやや差が縮まったのはライバルが不在だったためと考え、シューマッハの2002年と似たような扱いとするのが最も自然だろう。

 これらを総合して得られる結論は以下の通りだ。

Table3

 表2と比べて若干の誤差はあるものの、大きな矛盾は無い。ハミルトンが表1と比較して0.10秒落ちているが、これは近年のハミルトンがマクラーレン時代ほど予選型ではなくなってきていることと、マッサのシューマッハとの比較に移籍初年度の影響があった可能性が考えられる。前者については2014年にジョック・クレアの助言からレースペース重視にシフトしたようだ。両者を鑑みて、この先はハミルトンはマクラーレン時代とメルセデス時代に分けつつ、表4の扱いで進める。

Table4

 また「ノれているマッサ」の存在を確かめておこう。まずフェラーリのエンジニアによる「良い時のマッサはシューマッハ並みに速い」という発言がある。また2013年のアロンソに対する0.15秒差を表4に組み込むと、シューマッハから0.25〜0.30秒落ちとなり、こうなると2015年のようにボッタスに対して0.05秒差となっても不思議ではない。マシンやタイヤとの相性次第でこの位置まで来ることができるドライバーと考えて良いだろう。

 次にベッテルを見てみよう。

2015年:vs ライコネン 9勝2敗(-0.279秒差)
2016年:vs ライコネン 8勝10敗(-0.023秒差)
2017年:vs ライコネン 15勝3敗(-0.295秒差)
2018年:vs ライコネン 14勝2敗(-0.166秒差)

 ライコネンとの差は2015、17年を採るならば0.30秒だ。2016年については後述するが「ノれているライコネン」、2018年もライコネンがややノれていたと考えよう。

 一方アロンソはライコネンに対して

2014年:vs ライコネン 11勝1敗(-0.442秒差)

 そしてリカルドはベッテルに対して

2014年:vs ベッテル 6勝4敗(-0.107秒差)

 またフェルスタッペンはリカルドに対して

2016年:vs リカルド 6勝8敗(+0.062秒差)
2017年:vs リカルド 9勝6敗(-0.135秒差)
2018年:vs リカルド 10勝3敗(-0.155秒差)

 フェルスタッペンの移籍直後の2016年は除くと0.15秒差だ。

 一連の比較を総合すると以下の通りとなる。

Table5

スクリーンショット 2022-02-28 12.33.38を拡大表示

 アロンソとライコネン、リカルドとベッテルの比較が1年分しか無いのが心もとないが、現時点では軽い疑問符つきで一つの結論としておこう。

 これを表4と合わせると以下のようになる。

Table6

※g=ノれている、ng=ノれていない

  ここでライコネンについて考えてみよう。まず2007、08年は

2007年:vs マッサ 3勝6敗(+0.108秒差)
2008年:vs マッサ 3勝7敗(+0.124秒差)

 合わせて0.10秒差と考えよう。この時、マッサがノれているとすると、ライコネンは表6でシューマッハの0.35~0.40秒落ちとなる。先ほどのノれていないライコネンより0.20秒速い。

 また、「ノれているライコネン」についても考えてみよう。

2009年:vs マッサ 7勝1敗(-0.283秒差)
2016年:vs ベッテル 10勝8敗(+0.023秒差)

 これを表6に組み込むと、前者はマッサがノれていない前提とするとシューマッハから0.15~0.20秒落ち、後者はシューマッハから0.25~0.30秒落ちだ。2009年はレースペースに苦戦した形跡があり、これを除くとしても良い状態の時とそうでない時でかなりの差がある。ライコネンはフロントのグリップを必要とするタイプで、スロットルワークも非常に繊細なドライバーだ。故にマシンとの相性によって競争力が大きく変わってくるドライバーなのかもしれない。

 ライコネンのノれている時とノれていない時の差を考慮して表6に組み込むと以下の通りとなる。

Table7

 続いてフェルスタッペンらを別角度から見てみよう。

 フェルスタッペンはペレスに対して

2021年:vs ペレス 17勝1敗(-0.403秒差)

 そのペレスはバトンに対して

2013年:vs バトン 7勝6敗(+0.028秒差)

 そしてペレスはオコンに対して

2017年:vs オコン 13勝6敗(-0.077秒差)
2018年:vs オコン 4勝11敗(+0.121秒差)

 オコンとの比較は2年目を採用して0.10秒差としておこう。

 そしてアロンソはオコンに対して

2021年:vs オコン アゼルバイジャンGP以降 10勝5敗(-0.154秒差)

 となっており、この部分だけを総合すると、

Table8

 表7と照らし合わせても概ね納得のいく結果だ。

 オコンは2020年の前半戦こそルノーへの適応に苦しんだが、後半戦では

2020年:vs リカルド イタリアGP以降 1勝7敗(+0.118秒差)

 となっており、表7に組み込むとシューマッハから0.25〜0.30秒落ちになる。これは2021年のアロンソとの0.15秒差と辻褄が合う。

 となると、ペレスはバトンやオコン基準で導かれるスピードと、2021年にフェルスタッペンのチームメイトとして発揮したスピードが同じレベルになる。ペレスがオーバーステア傾向を好むドライバーであることは有名であり、オーバーステアの強いのレッドブルで本来の実力を発揮できたという考えにも一定の説得力はあるだろう。

 ここまでをまとめると表9のようになる。

Table9

 さて、他のドライバーを見ていこう。ヒュルケンベルグについては、

2014年:vs ペレス 7勝5敗(-0.087秒差)
2015年:vs ペレス 9勝6敗(-0.083秒差)
2016年:vs ペレス 10勝9敗(+0.012秒差)

 少し幅があるが、「ペレスと互角〜0.10秒上回っていた」と考えよう。表9ではシューマッハの0.30~0.40秒差あたりで組み込んでおくのが妥当だろう。一方で、

2019年:vs リカルド 6勝13敗(+0.061秒差)

 こちらで考えると表9でシューマッハの0.20~0.25秒落ちとなり、上述の値よりやや速い。ただしリカルドが移籍1年目で、ルノーのマシンに少しクセがあるというコメントも散見されたため、本来のリカルドより0.1秒ほど遅かったと考えるのが妥当と思われる。

 続いてルクレールだ。

2019年:vs ベッテル フランスGP以降 9勝3敗(-0.242秒差)
2020年:vs ベッテル イギリスGPを除き 11勝3敗(-0.314秒差)

 2020年はベッテルにとっては辛い時期であり、2019年後半戦を参考にすべきだろう。ベッテルを0.25秒上回ったことは、表9でフェルスタッペンと全くの互角を意味する。2019年は移籍初年度でベッテル中心に開発されたマシンだったにも関わらずこのスピードを見せたことは驚愕に値する。

 続いては少し時代を遡り、コバライネンを見てみよう。

2008年:vs ハミルトン 3勝4敗(0.00秒差)
2009年:vs ハミルトン シンガポールGPを除き 6勝6敗(+0.017秒差)

 予選では常にハミルトンの後塵を拝していたイメージが強いが、実は当時のマクラーレンはコバライネンの方にかなり多い(2周以上の差もしばしば)燃料を搭載しており、フューエルエフェクトを換算すると2年とも互角となる。驚きの声も多いかもしれないが、信頼のおけるデータだ。ただし現在分析途中ではあるが、レースペースではハミルトンに差をつけられており、少し予選に振り過ぎていた可能性はある。

 続いてフィジケラを見てみよう。

2005年:vs アロンソ スペイン、イギリスGPを除き 3勝5敗(+0.296秒差)
2006年:vs アロンソ 4勝5敗(+0.17秒差)

 となっており、特殊なマシンで移籍初年度は差がついたが、2年目はアロンソ相手に善戦している。表9に組み込むとシューマッハから0.25~0.30秒差となり、非常に速いドライバーということになる。

 そしてルーキーイヤーのコバライネンは

2007年:vs フィジケラ
    オーストラリア、モナコ、カナダ、トルコ、ブラジルGPを除き
    7勝3敗(-0.09秒差)

 これは表9に組み込むとシューマッハの0.15~0.20秒落ちとなり、翌年以降に向けて0.1秒ほど向上した形跡が見受けられる。

 続いてクビアトをリカルドと比較してみよう。

2015年:vs リカルド 6勝8敗(+0.121秒差)
2016年:vs リカルド 0勝4敗(+0.749秒差)

 クビアトが崩れていた2016年は除いて考えた方が良いだろう。表9に組み込むとシューマッハの0.25~0.30秒落ちだ。

 そんなクビアトを明確に上回ったのがガスリー

2019年:vs クビアト 日本GPを除き4勝1敗(-0.141秒差)
2020年:vs クビアト 70周年記念GPを除き 10勝3敗(-0.144秒差)

 表9に組み込むと、シューマッハの0.10~0.15秒差となり、少なくともトロロッソ/アルファタウリに乗っている以上はガスリーはアロンソやハミルトンに肉薄するレベルにいると考えられる。このことからも2019年のレッドブルでの状況が如何に特殊だったかが垣間見えるのではないだろうか?ちなみにレッドブルでの予選成績は

2019年:vs フェルスタッペン 0勝9敗(+0.572秒差)

 となっている。

 一方でアルボン

2019年:vs クビアト 5勝4敗(+0.022秒差)
2019年:vs フェルスタッペン 0勝5敗1引き分け(+0.433秒差)
2020年:vs フェルスタッペン 0勝15敗(+0.523秒差)

 ルーキーイヤーにも関わらず、クビアト相手にほぼ互角のスピードを見せたことを表9に組み込むと、ペレスと互角かやや上回る速さを有していることになる。その上でレッドブルでのフェルスタッペンとの差はペレスよりもやや大きいが、ガスリーほど顕著ではない。この中ではペレスが最も上手くレッドブルに適応しており、レッドブルとペレスの契約延長の判断はデータから見ても理に適っている。

 続いてサインツを見てみよう。

2016年:vs クビアト ベルギーGP後 4勝4敗(-0.034秒差)
2017年:vs クビアト 8勝5敗(-0.115秒差)

 トータルで見るとクビアトを0.10秒ほど上回っていそうだ。これは表9ではシューマッハの0.15〜0.20秒落ちに位置する。

 しかしサインツを分からなくしているのがルノー時代の不調とフェラーリ時代の好調だ。

2017年:vs ヒュルケンベルグ 1勝3敗(+0.199秒差)
2018年:vs ヒュルケンベルグ 6勝13敗(+0.114秒差)

 2017年はシーズン途中移籍ながら善戦したものの、2018年はヒュルケンベルグに遅れをとった。前述の通りヒュルケンベルグは表9でシューマッハの0.30〜0.40秒落ちであるため、サインツは0.45〜0.55秒落ちになる。因みにサインツは、ルノーでの環境が悪く力を発揮できなかったと述べている。

 一方フェラーリでは滅法好調に見える。

2021年:vs ルクレール 8勝8敗(+0.037秒差)
    フランスGP以降7勝4敗(-0.025秒差)

 年間平均でルクレールの0.05秒落ちとするとシューマッハの0.05秒落ち、後半戦で見ればシューマッハと互角だ。しかしクビアトやヒュルケンベルグとの比較結果と併せると、とんでもない幅を持ってしまう。ルノー時代を除いてもかなりの幅があり、これは大きな謎だ。

 ルーキーイヤーで相手が17〜18歳のフェルスタッペンとは言え、

2015年:vs フェルスタッペン 7勝4敗(-0.084秒差)
2016年:vs フェルスタッペン 1勝3敗(+0.005秒差)

 となっており、ここから考えればルクレールと同じレベルにいても不思議はない。しかしそうすると2016〜18年の予選成績は物足りない。

 ここから考えられる説明は、マクラーレンでの非常に良い環境によりサインツのポテンシャルが引き出された可能性だ。事実ノリスとの差は

2019年:vs ノリス 8勝8敗(-0.004秒差)
2020年:vs ノリス 6勝7敗(+0.050秒差)

 と、2年間で大きくは変わっていない。ルーキーのノリスは成長を遂げた筈だが、サインツもそれに近い向上を見せた可能性がある。これを別角度から見るにはノリスとリカルドとの比較が適切だろう。

2021年:vs リカルド 13勝5敗(-0.163秒差)

 リカルドが移籍初年度で苦戦したことは加味するべきだが、仮にノリスがリカルドを0.10秒ほど上回っているとするならば、表9でシューマッハの0.05〜0.10秒程度になる。サインツも近い位置にいるならば、そしてルクレールが少し力を発揮できていない部分があれば2021年のような結果になっても不思議はない。

 この仮説が正しいかどうかは今後数年間のルクレールとサインツ、そしてノリスとリカルドがどんな速さを見せるか次第だろう。

 さて、続いてはニコ・ロズベルグを見てみよう。

2010年:vs シューマッハ 11勝3敗(-0.254秒差)
2011年:vs シューマッハ 7勝0敗(-0.417秒差)
2012年:vs シューマッハ アメリカGPを除き 6勝5敗(-0.139秒差)
2013年:vs ハミルトン 7勝7敗(+0.049秒差)
2014年:vs ハミルトン 7勝4敗(-0.069秒差)
2015年:vs ハミルトン 6勝11敗(+0.133秒差)
2016年:vs ハミルトン 4勝11敗(+0.126秒差)

 シューマッハについては最初の2年はブランクの影響を鑑みて、2012年の0.15秒差をこの時点での力と見よう。

 ハミルトンとの差は2015,16年では0.15秒と見ていいだろう。2013年はハミルトンの移籍直後、14年はハミルトンがレースペース重視のアプローチに切り替えた初年度でやりすぎた可能性がある。

 となるとロズベルグは表9でシューマッハの0.25~0.30秒落ち程度になる。よって2012年のシューマッハは、フェラーリ時代の自身より0.40~0.45秒遅くなっていたと考えられるだろう。アロンソやバリチェロは年齢による顕著な衰えは見られなず、アロンソについてはシューマッハど同様にブランクがあるため、これはやや説明し難い落ち幅だ。考えられる要因として、2009年にバイクで負った怪我の影響はあるかもしれない。事実、シミュレータ酔いなどはあったようだ。

 続いては2022年に復帰するマグヌッセンについて考えてみたい。まずデビューイヤーはバトンに対して

2014年:vs バトン 6勝6敗(-0.035秒差)

 その後はグロージャンに対して

2020年:vs グロージャン 6勝7敗(+0.020秒差)
2019年:vs グロージャン アゼルバイジャンGPを除き 9勝6敗(-0.050秒差)
2018年:vs グロージャン ドイツGPまで 4勝3敗(+0.031秒差)
2017年:vs グロージャン 6勝7敗(+0.036秒差)

 2018年後半戦に大不振に見舞われたことを除けば、グロージャンとほぼ互角と考えてよいだろう。一方でそのグロージャンは

2015年:vs マルドナード ロシアGPを除き12勝1敗(-0.171秒差)
2014年:vs マルドナード 7勝4敗(-0.089秒差)
2013年:vs ライコネン バーレーンGPを除き 3勝4敗(+0.065秒差)
2012年:vs ライコネン ヨーロッパGP以降 5勝4敗(-0.038秒差)

 となっており、ライコネン(ノれていた)とは互角と考えると表9でシューマッハの0.25~0.30秒落ちだ。マルドナードに関しては2年間で0.15秒差と見よう。そのマルドナードは

2011年:vs マルドナード 9勝7敗 (-0.021秒差)

 で、バリチェロと互角と見なすと表9でシューマッハの0.35~0.40秒落ちだ。つまりこちらを基準にするとグロージャンはシューマッハの0.20~0.25秒落ちとなりライコネン基準の結論とほぼ合致する。バリチェロについては引退年のためやや力が落ちていた可能性もあり、マグヌッセンの対バトンの成績も踏まえるとグロージャン、マグヌッセンをシューマッハの0.25~0.30秒落ちとするのが現時点での最適解と考えられる。

2.2. Ver.1.2の分析内容

 まずはベッテルと5年間チームメイトだったウェバーについて見てみよう。

2013年:vs ベッテル 2勝9敗(+0.175秒差)
2012年:vs ベッテル 6勝9敗(+0.111秒差)
2011年:vs ベッテル 3勝14敗(+0.353秒差)
2010年:vs ベッテル 6勝11敗(+0.074秒差)
2009年:vs ベッテル 2勝11敗 (+0.203秒差)

 2010年までのブリヂストンで約0.15秒、2011年からのピレリでは約0.20秒の差となっており、5年間の平均で0.20秒と見てしまって良いだろう。シューマッハ基準で考えれば0.45~0.50秒差となる。

 そのウェバーとレッドブルで2年間組んだクルサードは以下の通りだ。

2008年:vs ウェバー 2勝13敗(+0.334秒差)
2007年:vs ウェバー 2勝9敗(+0.232秒差)

 平均して0.3秒程度の差と考えて、シューマッハからは0.75~0.80秒程度として良いだろう。

 そのクルサードとマクラーレン時代に組んだのがライコネンだ。

2004年:vs クルサード 6勝2敗(-0.249秒差)
2003年:vs クルサード 7勝0敗(-0.604秒差)
2002年:vs クルサード 10勝7敗(-0.052秒差)

 2002年はライコネンがF1に来て2年目で移籍初年度であるため、対象外とする。それでも2003年と04年の数値の差が大きく、扱いが難しい。

 しかし、04年基準でクルサードより0.25秒速いとすると、シューマッハの0.50~0.55秒落ちとなり、表9での「ノれていないライコネン」の値とほぼ一致する。

 さらに、03年基準でクルサードより0.60秒速いと考えれば、シューマッハの0.15~0.20秒落ちとなる。これはアロンソに肉薄するレベルで、フェラーリ時代以降の「ノれているライコネン」より0.10秒速いことを意味する数値だ。

 この数値がどの程度真っ当かは、更なる考証を経て少しずつ見えてくるものだろう。しかし、「マクラーレン時代のライコネンは非常にノれていた」と考える一般視聴者や関係者は多いと思われ、そうした印象と一致する考察結果であることは確かだ。

 さて、ハッキネンもクルサードと組んでいる。

2001年:vs クルサード 8勝8敗(-0.078秒差)
2000年:vs クルサード 10勝6敗(-0.136秒差)
1999年:vs クルサード 13勝2敗(-0.282秒差)
1998年:vs クルサード 12勝3敗(-0.311秒差)
1997年:vs クルサード 11勝6敗(-0.164秒差)
1996年:vs クルサード 12勝4敗(-0.258秒差)

 敵将ロス・ブラウンもハッキネンは計算されない部分が大きい旨を語っており、天才肌なイメージ通りやや読みづらいドライバーだ。

 ここでは2001年は除き、2000年までの5年間で平均しよう。すると約0.25秒差となり、これは表9でシューマッハの0.50~0.55秒落ちとなる。

 シューマッハとのタイトル争いで印象的だった2000年に関しても、第6戦ヨーロッパGPから第9戦フランスGPまでクルサードに対して大差で4連敗を喫しており、こうしたムラを含めるとこのように低めの数値になってしまう。一方で、ノれている時のハッキネンはクルサードよりも0.3~0.4秒ほど速く、そこだけ取るならばあと0.1秒ほど上に来ることになる。

 ここまでを総合して、表1の結論を得た。