• 2024/11/21 15:26

2022年日本GPレビュー(1) 〜データで振り返るフェルスタッペンの2連覇〜

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 大雨の鈴鹿サーキット。決勝はスタート直後に赤旗となり、再開後は3時間ルールにより28周の中距離走となった。フェルスタッペンが2年連続のワールドチャンピオンを決めた日本GPとここまでの1年を、グラフと表を交えつつ分析的視点で振り返ってみよう。

各ドライバーの使用タイヤはこちらのピレリ公式より

初心者向けF1用語集はこちら

1. 異次元のフェルスタッペンとファインプレーのペレス

 スタートからフィニッシュまで全く危なげなく独走での優勝を飾ったフェルスタッペン。その圧勝劇を数字でも確認しつつ、ルクレールとペレスの2位争いにも焦点を当ててみよう。図1に表彰台3人のレースペースを示す。

図1 フェルスタッペン、ペレス、ルクレールのレースペース

 ルクレール視点で見れば、インターに履き替えてから序盤こそついていけたものの、スティント4周目からは1周1.0秒の急激なデグラデーションに見舞われた。

 対するフェルスタッペンは、タイヤを労わりつつもハイペースを維持し、ルクレールが後退してからはタイヤの温度を保てる範囲でペースコントロールしていたようだ。そしてその状況でも全力で走っていたペレスやルクレールよりも速いのだから、異次元以外の何者でもなかった。

 一方、ペレスはスティント序盤はかなり抑え気味だったが、その後のデグラデーションが非常に小さかったことがグラフから読み取れる。これによりルクレールとの差を縮め、最終ラップ最終シケインでの逆転劇に繋がった。

 スティント全体を均して見れば、ペレスはルクレールより0.5秒ほど速い程度で、ずっとルクレールと同じようなペース配分で進めた場合は抜けずじまいだったかもしれない。しかしルクレールが飛ばしてフェルスタッペンを追う中で、タイヤマネジメントに徹したペレスの判断が後半のペース差を生み出し、2位を呼び込んだ。それがフェルスタッペンの鈴鹿での戴冠に大きく寄与したことも間違いないだろう。

2. フェルスタッペン2度目のタイトル確定

2.1. 混乱のポイントシステム

 今回はレース後にフェルスタッペンのチャンピオンが確定したかしていないかで混乱が起きた。本来はこのレースでフェルスタッペンが優勝&ルクレールが3位以下ならば無条件でタイトル決定だったが、レース距離が予定周回数の50%以上75%未満となったことで、多くの関係者がフルポイントが与えられない可能性を考えていた。フジTVの解説陣やレッドブルチーム、フェルスタッペン自身、そして筆者もそのように考えていたが、F1側はタイトル確定とし、かなり混沌とした状況となっていた。

 しかしスポーティングレギュレーションの6.5には、レースが中断され「再スタートができなかった場合」にポイントが減算(50%以上75%未満では1位から19,14,12,10,8,6,4,3,2,1)されることになっており、レースが再開してチェッカーフラッグを受けているならばポイントは通常通りに付与される。この点を勘違いしていた関係者が多かったのが混乱に繋がってしまった。

参考:スポーティングレギュレーションの日本語訳版

2.2. 後半戦で加速したフェルスタッペンの強さ

 今季はフェラーリの自滅による取りこぼしの影響もあったとは言え、後半戦ではレッドブルがスピード面でもアドバンテージを見せるようになった。またフェルスタッペン個人を見ても、後半戦になって好調になったように見える。本項ではフェルスタッペンとペレス、ルクレールの予選およびレースペースでの比較を行うことで、今季のタイトル争いを紐解いていこう。

 まずはフェルスタッペンとペレスの比較を見ていこう。表1に今季のドライ予選での比較、表2にレースペースでの比較を示す。なお予選は両者クリーンなセッションを過ごしたもののみを対象とし、レースペースではフューエルエフェクト、タイヤのデグラデーションやレース文脈(ダーティエアやダメージなど)を考慮した。

表1 予選での比較

表2 レースペースでの比較

 前半戦は特に予選でペレスと互角という状況が続いており、アンダーステア気味のマシンで本来の持ち味を発揮しきれていないとの見方が広まっていた。しかしオーストリア以降は全勝で、タイム差もかなり大きく、年間平均でもすでに0.3秒差まで広がっている。ちなみに昨年は0.4秒差であり、今年もアブダビGPの頃にはその数字に近づいている可能性が高そうだ。

 レースペースでも前半戦では勝つ時の差が小さかったが、後半戦に入ってその差は広がっている。

 次にフェルスタッペンとルクレールの予選・レースペースも同様に比較してみよう。

表3 予選での比較

表4 レースペースでの比較

 前半戦では予選では勝負にならず、レースペースで互角に持ち込めるという展開だった。しかし後半戦に入ってからは、予選で(僅差とは言え)何度か上回ることができるようになり、レースペースでは完勝が続いている。

 このように、後半戦に入ってからフェルスタッペンがペレスに差をつけることができるようになり、ルクレールに対する相対的な競争力も増したことが、データからも読み取ることができる。

 これをレッドブルが速くなりペレスが調子を落としたと考える人もいるだろう。あるいは、車の力関係はさほど変わらずフェルスタッペンがギアを上げたと見る人もいるだろう。

 だが筆者は、「フェルスタッペンとマシンというトータルパッケージが速くなった」と解釈している。F1は道具を使うチームスポーツだ。その中でシャシー、パワーユニット、タイヤその他多くの要素の一つにドライバーがいる。ドライバーを含めたチーム全体が協働し、そのトータルパッケージとしての力を最大化したのがこの結果なのではないだろうか。決して順風満帆とは言えないシーズンスタートから、圧倒的な問題解決能力でここまで上り詰めたレッドブル&フェルスタッペン。鈴鹿の夕闇に歴然と輝いたその勇姿は、これ以上ないほどに2022年ワールドチャンピオンに相応しい存在だったと断言できるだろう。

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Writer: Takumi

※この後Part2では、ラストランのベッテルvs追い上げのアロンソ、タイヤを履き替えて追い上げを図った母国凱旋の角田などについて取り上げる