• 2024/4/26 16:58

2021年エミリア・ロマーニャGPレビュー(3) 【ノリスとマクラーレンの戦略勝ち】

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※レース用語は太字部分で示し、記事末尾に用語解説を加筆した 

目次

  1. 白熱の上位争い
  2. 特筆すべきシューマッハのペース
  3. F2時代と同じ課題を抱える角田
  4. 用語解説

1. 白熱の上位争い

 筆者はレース前からイモラは抜けないサーキットであることを考慮し、トラックポジション重視の戦略を採ってくるチームが現れると予想した。DRSがあるとは言え、バリアンテアルタ出口からタンブレロ入り口までをしっかり走れば、あとはモナコ並みにタイヤマネジメントして2秒ほどペースを落としても抜かれることは無い。今回は赤旗明けでマクラーレン勢がその戦略を採用した。

​ ノリスは再スタート時にスタンディングスタートを予想していたことでソフトタイヤを履き、結果ローリングスタートとなりルクレールの出遅れにも助けられた感はあるが、ウェットセッティングでダウンフォースをつけていたルクレールをパス。そこからはソフトのタレに気を使って前半から抑えて走り、最後までタイヤを持たせた。リカルドは最後にタレており、ノリスの上手さが際立つ。

 以下にノリスとライバル2人の比較を示す。

画像1を拡大表示

 Fig.1 ノリスとルクレール、ハミルトン

 ノリスとルクレールは常に同じペースで、ルクレールは前に出れば引き離していけるペースがあったと考えられる。本来はノリスから2秒以上距離を置きクリーンエアでタイヤを労り、終盤にタイヤの差を活かして攻めるのが定石だが、ハミルトンからディフェンスする必要があった以上仕方ない。

 ハミルトンはクリーンエアでのラップが少ないが、おそらく約1秒のアドバンテージがあったと考えれらる。筆者は60周目のファステストに関してはハミルトン&メルセデスの力の高さを伺わせると感じている。この1周で本来のペースより速いタイムを記録しているという事はノリスの後ろでかなりのチャージを行なっていたという事だ。ノリスを抜くだけではなく、抜いた後DRSを使わせず引き離す事も考えて「逃げる所までがオーバーテイク」という完成された哲学とその実践がこのファステストに現れている。

2. 特筆すべきシューマッハのペース

 前半のスピンで大きく水を開けられてしまったシューマッハだが、ドライのスティントでは見事なペースを示した。以下にグラフを示す。

画像2を拡大表示

Fig.2 シューマッハとライコネン、ベッテル

 レースペースではベッテルやライコネンと同等と非常に競争力があり、タイヤの使い方にも何ら問題は無いことが分かる。因みにジョヴィナッツィはライコネンよりやや速く、ベッテルはソフトタイヤ&ストロールはベッテルより速いものの、デビュー2戦目のハースドライバーとしては非常に有望で、シューマッハのデータを元にマシン開発が進めばハースチームの未来も見えてくるだろう。

3. F2時代と同じ課題を抱える角田

 アルファタウリのチームメイト比較をグラフに示す。

画像3を拡大表示

Fig.3 ガスリーと角田のレースペース

 角田はスティント前半は見劣りするものの、後半ではタイムを上げ、中団勢どころかリカルドよりも速いペースで走っている。これはノリスやルクレールと同等である。好ペースは評価できるが、一方でこれはタイヤを使い切れていない事も意味している。彼はF2時代も前半戦でタイヤを大事に使いすぎていた。(筆者の記憶が定かではないが)アクシデントで捨てレースになったGPで思い切り走って限界を掴み、以降タイヤを使い切れるようになったようだが、F1ではフリー走行のロングランの時間が比較的しっかり取れるのでそこで感覚を磨いて行けるだろう。

4. 用語解説

ダウンフォース:F1マシンは高速で当たる空気の力をさまざまな空力パーツによって下向きの力に変える。これにより短時間のブレーキングで減速し、高速でコーナリングし、エンジンパワーを路面に伝えることができる。

クリーンエア:前に誰もいない状態。F1マシンの性能はダウンフォースに依存している。したがって高速で走るマシンの後ろにできる乱気流の中では本来の性能を発揮しきれず、前のマシンにある程度接近すると本来自分の方が速くてもそれ以上近づけなくなる。そうした乱気流の影響を受けている状態をダーティエアという。多くのサーキットでは同等のペースでは2秒以内に近づくことは難しい。0.2~0.3秒のペース差があっても1秒以内に近づくのは至難の技だ。