• 2024/11/21 15:40

2022年アメリカGPレビュー(3) 〜角田はもっと上を望めたか?〜

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 Part1,2ではフェルスタッペンやアロンソについてフォーカスしたが、こちらでは優れたレースペースで久々の入賞を果たした角田のレースを掘り下げていこう。

各ドライバーの使用タイヤはこちらのピレリ公式より

初心者向けF1用語集はこちら

1. 角田のレース振り返り

 マシンの戦闘力の面で厳しい戦いが続く中、久々にポイントを獲得した角田。グラフを見ながら今回のレースを振り返ってみよう。

図1 角田、アルボン、ガスリーのレースペース

 第1スティントはアルボンに引っかかってしまったが、アルボンがピットに入りクリアエアを得た10周目には0.4秒ほどタイムを上げている。

 新品ミディアムタイヤ(以下ミディアム)に交換して出てくるとアルボンの後ろになってしまったが、すぐさまDRS圏内に入ると16周目にオーバーテイクした。アルボンは走り始めは飛ばしていたがデグラデーションが大きく、角田が追いつく直前の周では0.5秒のペース差があった。

 そして2度にわたるセーフティカーが明けると、ガスリーに引っかかりベッテルに離されてしまい、33周目にピットに入る直前にはその差は8秒に広がっていた。さらに後ろからはノリスとシューマッハが迫っていた。

 そして新品ハードタイヤ(以下ハード)に履き替えてからは36周目にラティフィを交わし、40周目にはジョウのDRS圏内に。しかしここから長らくジョウに引っかかってしまう。

 だが、ピット作業の遅れから追い上げてきたベッテルにより動きが生まれた。ベッテルは48周目に角田、50周目にジョウを交わす。すると51周目には角田がジョウをオーバーテイク。激しいバトルの末、54周目にはアルボンも交わして10番手でのチェッカーとなった。

2. SC後に入れ替えた場合

 今回はSC後にペースの遅いガスリーが角田を押さえ込んだことが話題を呼んだ。当サイトでも角田視点でSC後にガスリーと入れ替えていた場合にどこまで行けたか考えてみよう。

 とはいえ、今回の角田はクリアエアで走れている部分が非常に少なく、真のレースペースを数値化することは難しい。ただし、

・第1スティントでアルボンがいなくなった後に0.4秒ほど上げたこと
・第2スティントの頭でアルボンより2周新しいタイヤで平均0.3秒ほど速くデグラデーションが少なかったこと

を踏まえると、アルボンより0.3秒前後速そうに見えるというのが妥当なところではないだろうか。ちなみにこれは当サイトのレースペース分析でベッテルの0.2秒落ちを意味し、中団トップに近い数値だ。

 対するガスリーは特にハードでペースがかなり悪く、デグラデーションを考慮して計算すると地力のペースはアルボンの0.3秒落ちだった。よって角田は地力でガスリーより0.6秒速かったことになる。アルファタウリのマシンでのミディアムとハードの差は不明だが、両コンパウンドが同等として、角田のタイヤが1周古いことを加味しても、SC明けの数周では角田の方が0.7秒速かったと考えられる。

 こうなれば角田はガスリーの後ろで過ごした7周で5秒ほど失ったことになる。ならば入れ替えていた場合はジョウの前で復帰でき、アルボンの5秒ほど後ろで戻った可能性が高い。角田にとってはジョウは抜きにくい相手であったが、アルボンは実際に第2スティントでオーバーテイクしている通り比較的楽な相手だったと思われる。となれば、ノリスやアロンソの脅威となることも視野に入り、少なくともベッテル、マグヌッセンの前ではフィニッシュできただろう。

3. 現実問題としてのチームオーダーの是非

 ただし、現実問題としてチームオーダーを出すべきだったかどうかは微妙なところだ。

 少なくとも、SC明けで各車が接近している状態で順位の入れ替えを行えば、後続に対して隙を与えることになる。しかしこの論理ならばその後も順位の入れ替えは難しかったのではないだろうか?

 問題はガスリーのペースが遅く、ノリスが角田の0.3~0.7秒後方につけてしまったことだ。こうなればガスリーにとっては角田だけに譲りノリスの前に留まるのが難しくなる。セクター1のS字の中などで譲り、バックストレートで角田のDRSを使わせて貰えば可能かもしれないが、実際にベッテルに抜かれた後でDRS圏内に留まっていたジョウを角田が交わしていることからも、いささかリスキー過ぎると考えられる。

 昨年までのマシンでは通用する論理も、今年の後方乱気流の少ないマシンでは必ずしも成り立たない。実際にチームの裏側でどのような判断プロセスが行われたかは不明だが、この事は考慮しておいた方が良いだろう。

 予選で前をとりレースのこの段階で前にいたガスリーに、ポジションを3つ失うリスクを犯してまで角田に譲れというのはあまりに酷ではないだろうか?筆者としてはアルファタウリの戦術的判断はそこまで間違ったものには見えなかった。

 また31周目には5秒ペナルティが出たが、ガスリーは2秒後ろのシューマッハや5秒後ろのマグヌッセンとも争っており、その争いを犠牲にしてまで角田を優先するのも厳し過ぎると言えるだろう。

4. 2年目で大躍進

 今回はガスリーを上回るレースペースを見せた角田。その躍進ぶりは昨年との比較からも明らかだ。表2に昨年、表3に今年のガスリーと角田のレースペース比較を示す。

表1 2021年のレースペース

表2 2022年のレースペース

 昨年は完敗というほかない内容だったが、今季は互角のレースが非常に多い。仮に今回のレースで角田が0.6秒上回っていたとするならば、年間平均はさらに0.1秒縮まることになる。

 ガスリーは現在のF1でもトップレベルの速さを有しており、この差でレースを進められるドライバーは稀だろう。今後も成長を続けていけば、トップドライバーとして名を馳せていくことも期待できる逸材なのは間違いない。

Writer: Takumi