• 2024/5/4 14:13

2024年中国GP レビュー

 2019年以来の開催となった中国GP。ミハエル・シューマッハの最後の勝利や、リカルドの劇的オーバーテイクなど印象的なシーンも多いサーキットの復活となり注目度も高かった中、今回もエキサイティングなバトルが繰り広げられた。

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遅かったVSC導入

 さて、レース自体もフェラーリvsマクラーレンの戦略勝負や、アロンソの3ストップなど見どころはあったが、今回最も話題になったのは、やはりボッタスがストップした際のVSCの導入が遅れたことだろう。

 20周目、ボッタスのマシンが停止してからイエローフラッグが提示された。驚くことに、この時点でのイエローフラッグはダブルイエローではなかった。そしてあろうことか、その後VSCが導入されるまで1分19秒が経過した。この間にオコン、ハミルトン、リカルド、角田、アルボン、ジョウ、サージェント、ガスリー、マグヌッセン、フェルスタッペン、ノリス、ルクレール、ペレス、アロンソ、ラッセル、ピアストリ、ストロール、サインツの18台がその横を通過した。

 ボッタスのマシンは停止直前に白煙を上げており、オイルが路面に撒かれていたことも、今回の危険性に拍車をかけていた。過去にも多くのドライバーがオイルに乗ってスリップしてきた。にもかかわらず、ボッタスがマシンから降りた後も、すぐにはVSCが出されず、大きな危険にさらされていた。

 この際の各車のストレートエンドのスピードとターン11での速度を分析すると、その後に続いた角田、アルボン、ジョウ、サージェント(図1)には明確な減速は見られなかった。続くガスリーは軽くリフトオフし(図2)、マグヌッセンは極めて小さな減速に留まった。その後から来た上位勢(21周目に突入)は殆どが明確に減速したが、それでもある程度のスピードは出ていた(図3)。ペレスに至っては減速は見られなかった(図4)。

図1 サージェントの走行データ(created with F1-Tempo
図2 ガスリーの走行データ(created with F1-Tempo
図3 フェルスタッペンの走行データ(created with F1-Tempo
図4 ペレスの走行データ(created with F1-Tempo

 特に図3に着目すれば、最も減速していたフェルスタッペンですら、ブレーキング前に200[km/h]以上のスピードが出ている。このグラフからも如何に危険な状況であったかが分かる。

 今回、大事故に至らなかったのは幸運に過ぎない。2014年の日本GP以降FIAはVSCシステムを導入し、このようなケースにおける安全性向上に多大なる尽力を捧げてきた。そうした努力を水の泡と帰さないためにも、FIAはこの問題を真剣に受け止め、対策を講じる必要がある。この一件が未来のドライバーやマーシャルの安全に対する教訓となることを望みつつ末筆としよう。

Writer: Takumi

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