• 2026/5/4 22:26

マイアミGPレビュー

約1ヶ月の春休みを経て、F1サーキットに再びエンジン音が響き渡った。舞台はマイアミブルーに彩られたマイアミ・インターナショナル・オートドローム。新規定マシンの特性がより顕著に現れたこの一戦を、今回もレースペースやピットストップなどのデータに基づく分析的視点から、深く振り返ってみよう。

1. アントネッリの勝利を決めた3つの鍵

3戦連続ポールポジションを獲得したアントネッリ。レーススタートではルクレールに首位を明け渡してしまい、ルクレールとのヨーヨーゲームを続ける中で、6周目にはノリスにも先行を許してしまった。
しかし、セーフティカーが解除されてからのレースは見事であった。図1にアントネッリとノリスのレースペースを示す。

図1 アントネッリとノリスのレースペース

アントネッリは、14周目にルクレールを交わすとノリスから0.1~0.2秒落ちのペースで周回。しかし、ノリスのラップタイムが横ばいにとどまる中、アントネッリのグラフは右肩上がりとなっており、デグラデーションの小ささが光る。アントネッリはライバルと比べてもタイヤに優しい傾向が見て取れ、日本GPや中国GPでもタイヤマネジメントの上手さでレースペースの優位を築いた。今季のタイトル争いにおいて、鍵となるファクターかもしれない。

このスティント後半の好ペースによって、ノリスに1.8秒差まで接近。ここでアンダーカットを狙ってピットへと向かう。
ノリスのラップタイム推移はグラフが横ばいとなっており、これは燃料が軽くなる有利とタイヤが劣化する不利が釣り合った状態だ。よって、フューエルエフェクトを0.04[s/lap]とすると、タイヤのデグラデーションも0.04[s/lap]ということになる。したがって、レーシングスピードで20周(26周からSCランの6周ぶんを減算)走ったノリスのタイヤは、新品状態よりも0.8秒ほど遅くなっている計算だ。よって、これだとピットストップ前の1.8秒差を逆転するには1.0秒足りない。

ここで登場するもう一つの鍵が、ピットレーンで削ったタイムだ。先に行ったピットストップ分析で明らかになった静止時間とボックスパフォーマンスだ。まず静止時間はメルセデスが2.16秒、マクラーレンが2.43秒と、ここで0.27秒削っている。さらに、ボックスパフォーマンス(ドライバーの停止と発進のパフォーマンス)でもアントネッリが0.17秒上回り、ピットレーンだけで0.44秒削った。

これに新品タイヤの効果を上乗せし、おそらくバッテリーも使ったのであろう。27周目、ノリスがピットアウトすると横並び状態となり、ターン3でインを取ったノリスが一瞬前に出るが、アントネッリがターン4までの短いストレートで鋭い加速を見せ、抜き去った。

このようにアントネッリは、第1スティントのタイヤマネジメント、ピットレーンで削ったタイム、アウトラップの速さの3つのキーで優勝をアンロックしたと言えるだろう。これまでの2勝と比べても、ノリスとの接近したバトルを制しての1勝であり、新王者を目指す若者にとって大きな自信になったかもしれない。

2. アントネッリは7度の王者の後釜に相応しいか

また、先に行ったレースペース分析では、アントネッリのペースはラッセルを0.7秒上回っていた。鈴鹿では0.3秒ほど上回り、遅れをとったメルボルンと上海では0.1秒の僅差という力関係だ。予選でも、3勝1敗の0.157秒差と明確な差をつけている。

ハミルトンは、メルセデスでの最終年を除き、ラッセルに対して予選で互角、レースペースで0.2秒差で勝利という力関係を示していた。次世代のエースとしてアントネッリに求められるのは、この数字以上の競争力だ。すなわちトータルでラッセルを0.1秒以上上回ることが、アントネッリとメルセデスの将来にとって非常に重要な基準値となると思われる。

4戦を終えたのみだが、ここまでの活躍は期待以上と言っても過言ではない。

図2 ラッセルとアントネッリの競争力比較

3. レッドブルの戦略は正解か?

1周目の攻防でスピンを喫したフェルスタッペン。360°ターンを決め10番手で踏みとどまったものの、レースは厳しい展開となった。
状況を打破すべくレッドブル陣営が選択したのが、6周目のピットストップだ。セーフティカー中にタイヤ交換を済ませ、ハードタイヤで走り切る戦略を採ったのだ。
本節ではその妥当性について検討してみたい。

まず、コンパウンドの差を無視し、デグラデーションを0.04[s/lap]として、レーストータルタイムをシミュレーションすると、6周目に入る戦略は25周目に入る戦略よりも19.76秒遅い。その上で、グリーンフラッグ下のピットストップとSC中のピットストップの差は約9秒であるため、SC中のピットストップの得を考慮しても約11秒損である。実際には、図3に示す通り後半のタイヤのタレが大きくなっており、それ以上に効率の悪い戦略だったと言える。

図3 ルクレールとフェルスタッペンのレースペース

ならばいっそ2ストップにする方が効率が良かったのではないだろうか。
30周目で入る2ストップならば、シミュレーション上はあのまま走り続けるより約8秒速い。
この時点でフェルスタッペンには中古のハード(おそらく7周オールド)と中古のミディアム(履歴が不明だがおそらくSQで使用した3周オールドのもの)が残っていた。
特に今回は、レースペース分析により、ミディアムタイヤの方がハードタイヤよりも0.2秒ほど速かった。よって、数周使っていても、周囲のハードタイヤ勢に対してそれなりに競争力があったはずだ。

図4に各車のギャップの推移を示す。

図4 上位勢のギャップの推移

例えば28周目付近(アントネッリとノリスに抜かれてタイムロスをする前に28周目で入れるのが良いかもしれない)に入れても、ハミルトンの前後で戻った計算になる。先に行ったレースペース分析では、フェルスタッペンはハミルトンに対して同条件で0.5秒ほど速く、たとえ後ろになったとしてもすぐに抜けるはずだ。

その前にいるのはピアストリとラッセル。ピアストリは素のペースでそもそもフェルスタッペンより0.2秒ほど速く、タイヤも比較的新しいため、交わすのは容易ではなかっただろうが、20周と比較的早めに入ったラッセルは、交わせたはずだ。よって、2ストップならば、悪くてもラッセルの前、ピアストリを仕留めれば4位も狙えたはずだ(その場合ルクレールのクラッシュはなかったと思われる)。

後出しではあるが、今回のレッドブル&フェルスタッペン陣営にとっての最適解は2ストップだったのではないか、というのが筆者の見立てだ。とはいえ、序盤3戦での不調からペース面では大きく立て直してきた。今後のフェルスタッペンの活躍にも目が離せない。

余談だが、巷では今回フェルスタッペンが突然ハジャーに大差をつけたかのような論調が見受けられる。
だが実情は、開幕3戦において、予選では僅差とくに鈴鹿ではハジャーが上回ったものの、レースペースでは、メルボルンで1.0秒差、上海で0.4秒、鈴鹿で0.9秒と、ペレスや角田以上の大差がついている。現状のパルクフェルメルールにおいて、予選を重視すればレースペースが厳しくなるのは当然だ。両者のセットアップのバランス(一発型かロング優先か)に違いが出ていただけであり、総合的にはこれまでの3戦もフェルスタッペンの圧勝だった点は、本稿にて強調しておきたい。

4. まとめと次戦への展望

アントネッリが上手さと速さと強さを示したマイアミGP。次戦の舞台は、カナダのジル・ヴィルヌーヴ・サーキットだ。

長いストレートと急減速のシケインが連続する典型的な「ストップ・アンド・ゴー」のレイアウトだが、マイアミと比べるとエネルギーマネジメントの要求はそれほど厳しくないと予想される。ここで注目したいのは、やはりメルセデス内の勢力図だ。
ルーキーイヤーだった昨年、全体的にまだ未熟さを残していた時期のアントネッリですら、カナダではラッセルと互角のペースを刻んでみせた。今季、タイヤマネジメントやレース巧者ぶりで大きな成長を遂げ、すでに3勝を挙げているアントネッリの現在の力をもってすれば、今回はラッセルに対して優勢に立つ可能性は十分にあるだろう。一方のラッセルも、昨年の覇者としてどのような巻き返しを見せるのか、ここが踏ん張りどころのレースになりそうだ。

新規定マシンが伝統のサーキットでどのようなバトルを生み出し、若き才能がどこまで躍進するのか。次戦も非常に興味深い一戦となりそうだ。

Takumi, ピトゥナ, ChatGPT 5.5 Thinking


インタラクティブグラフ

 ご自身の視点でさらにデータを深掘りしたい方向けに、操作可能なグラフを用意した。

 このツールでは、**「ペースグラフ」と「ギャップグラフ」**の二種類が利用でき、ボタン操作で見たいドライバーだけを自由に選んで表示できる。

 特にラップタイムグラフには、レース状況を理解しやすくするための工夫が施されている。

  • 塗りつぶしの点:前が空いている状態(クリアエア)でのラップを示す。
  • 白抜きの点:前のマシンの影響下(ダーティエア:前方2秒以内)にあるラップを示す。

 この色分けによって、各ドライバーがどのような状況でそのタイムを記録したのかが一目で把握できる。

 また、グラフ右上のボタンからは、画像のダウンロードやグラフの拡大・縮小(ズーム)も可能だ。分析の補助として、ぜひご活用いただきたい。

Race Lap Time Interactive Graph

Lap Times

Drivers:

Gap to Leader

Takumi, ピトゥナ