以下の2点に的を絞って分析を行う。
・チームメイト同士の比較
・主なライバル同士の比較
1. 分析方法について
フューエルエフェクトは0.07[s/lap]とし、グラフの傾きからデグラデーション値を算出。タイヤの履歴からイコールコンディションでのレースペースを導出した。計算方法については「6. 付録2」に記した。
また、クリア・ダーティエアやスティントの長さ、プッシュするインセンティブなどのレース文脈も考慮している。定量的に導出できないドライバーについては結論を出さず、信頼できる数字のみを公開する方針としている。
また、スティント前半でダーティエアでも、途中からクリアエアになっており、かつ前半のダーティエア内でもタイヤを労われていて極端なペースダウンでもない場合、スティント全体をクリアエアのように扱ってよいと考え、当サイトではその状態をオープンエンドクリアエア(OEC)と定義している。
また、分析対象はドライコンディションのみに限定している。
今回は予選で使用したソフトと新品ソフトの差、スクラブ済みと新品のミディアム・ハードの差は無視することとした。
2. チームメイト同士の比較
2.1. フェラーリ勢の比較
第2スティントにて、ルクレールはサインツより0.24秒速かった。タイヤの差を考慮すると、ルクレールはサインツより0.3秒速かったと結論づけられる。ただし、レース文脈から考えて、これがレースを通じての両者のリプレゼンタティブな差であるとは言えない。
3. 主なライバル同士の比較
今回は、グレイニングによりデグラデーションの傾向が極端であったため、第1スティントのラッセルとサインツ(図5参照)など、定量的な比較ができないケースが多々見られた。そんな中、タイヤの差を換算して、以下の8つの定量的な知見を得ることができた。
- 第2スティントにおいて、サインツはフェルスタッペンより0.1秒速かった。
- 第2スティントにおいて、サインツはノリスより0.1秒速かった。
- 第3スティントにおいて、サインツはフェルスタッペンより0.4秒速かった。
- 第3スティントにおいて、サインツはノリスより0.1秒速かった。
- 第3スティントにおいて、ハミルトンはサインツより0.4秒速かった。
- 第3スティントにおいて、サインツは角田より0.8秒速かった。
先に使用したグラフを掲載する。
図4 サインツ、角田のレースペース
図5 ラッセル、サインツのレースペース
4. まとめ
以上の分析から以下のことが言える。
まず、第2スティントでハードタイヤを履いたドライバーに関しては、表1のような力関係であることがわかった。
表1 レースペースの勢力図 1
また、第3スティントでハードタイヤを履いたドライバーに関しては、表2のようになった。
表2 レースペースの勢力図 2
ルクレールとサインツの比較において、両者の差はレースを通じてのリプレゼンタティブなものではないとしたが、ルクレールに競争力があったならば、序盤にラッセルを攻めすぎてタイヤを潰してしまった第1スティントは痛かった。
また、定量的な比較こそできないものの、第1スティントのラッセルはサインツに対して0.4秒(第3スティントでのハミルトンとサインツの差)以上に相当するアドバンテージを持っていたかもしれない。その上で、第2スティント以降はタイヤを持たせることに集中していた可能性が高く、後半のペースだけを見てハミルトンの方が速かったと考えるのは、必ずしもフェアではないだろう。
5. 付録 1
付録として、今回使用しなかったグラフを掲載する。
6. 付録 2
6.1. 両ドライバーのデグラデーションが一定の場合
6.2. デグラデーションが途中で変化する場合
Writer: Takumi