• 2025/4/16 06:05

2024年シーズンレビュー Part 3 ~最新のデータから考察するドライバーたちの実力~

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 当サイトでは1990年代から2023年までのチームメイト比較を元に、マシン性能を除いたドライバー個人の競争力を分析してきた。

※参考
歴代ドライバーの競争力分析【予選編】
歴代ドライバーの競争力分析【レースペース編】

 本記事では、2024年の予選・レースペース分析を終えたところで、その最新版を更新したい。さらに、時期的な範囲を2007年以降に絞ることで、より正確な分析を試みる方針とする。

1. 結論

 先に結論を示す。表1に各ドライバーの予選での競争力、表2にレースペースを示す。なお、ある程度本来の力を発揮しきれている際のおおよそのペースを有効数字1桁で扱ったものであり、詳細に数値化可能なものではないことをお分かりいただいた上で読み進めていただければ幸いだ。

 

表1 予選でのペース

 

表2 レースペース

 

 総じて言えるのは、ハミルトン、フェルスタッペン、アロンソらは非常に高いレベルにあるということだ。また、ルクレールはベッテルとの比較、ノリスはサインツとの比較をどの程度信じて良いか疑問符はつくが、おそらく上記3名と似たようなレベルにあると考えられる。

 それに続くのが、サインツやラッセル、そしてレッドブル時代のリカルド、といった所だろう。

 また、後述する通り、「ドライバーのレースペースはデビュー2年目から0.1秒速くなる」という仮説を前提としたことで、全体を整合的に解釈できるようになった点は非常に興味深い。これは、現代F1のタイヤマネジメントの奥深さをも、同時に物語っている。

2. 予選ペース分析

2.1. 分析の前に

 各年のチームメイト比較の具体的なデータは、各ドライバーの紹介ページに記載した。

※参考
2024年(開幕戦時点)のドライバー紹介
過去に参戦したドライバー紹介

 その上で、各データを以下のように解釈した。表記については「A>B Δt」の形で示し、ドライバーAがドライバーBよりt秒速いことを意味する。例えば「VER>PER 0.4」はフェルスタッペンがペレスより0.4秒速いことを意味する。

2.2. 分析内容

まずフェルスタッペンに関連した比較を見てみよう。

VER>PER 0.4 (1)

VER>RIC 0.1 (2)

 

次にペレスに関連した比較に着目する。

PER>STR 0.2 (3)

OCO>PER 0.1 (4)

HUL>PER 0.0~0.1 (5)

PER=BUT (6)

 

続いてアロンソの周辺を見てみよう。

ALO>OCO 0.1 (7)

ALO>BUT 0.2 (8)

ALO>RAI 0.4 (9)

ALO>MAS 0.3 (10)

ALO=HAM (11)

 

ここで(4)、(7)より

ALO>PER 0.2 (12)

が言える。

 

また、(6)、(8)からも

ALO>PER 0.2 (13)

が言え、これらが最もらしいと考えられる。

 

また、

ALO>STR 0.3~0.4 (14)

であるから、

PER>STR 0.1~0.2 (15)

となり、これは(3)と矛盾しない。

 

続いてボッタスやハミルトンについて見てみよう。

BOT>MAS 0.1~0.2 (16)

HAM>BOT 0.1~0.2 (17)

 

ここで(10)、(16)、(17)より

HAM=ALO (18)

が言える。

 

また、マクラーレン時代のハミルトンは、

HAM>BUT 0.2~0.3 (19)

であるため、(8)、(19)から

HAM>ALO 0.0~0.1 (20)

が言える。以前の歴代ドライバー分析やジョック・クレアの証言などから、やはり今回もハミルトンは予選型のマクラーレン時代、レース型のメルセデス時代(正確には2014年以降)に分けて考えるべきだろう。(18)と(20)は以下のように記す。

HAM_mer=ALO (18′)

HAM_mcl>ALO 0.0~0.1 (20′)

 

続いてベッテルについて見てみよう。

VET>RAI 0.2~0.3 (21)

(9)、(21)より、

ALO>VET 0.1~0.2 (22)

となる。

ちなみに

VET>STR 0.1 (23)

で、これは(14)、(22)から得られる比較よりも0.2秒ほど遅い。アストンマーティン時代のベッテルのペースを彼本来の姿と見るのは、間違いだろう。

 

次にルクレールやサインツの周りを見ていこう。

LEC>VET 0.2~0.3 (24)

LEC>SAI 0.1 (25)

NOR>SAI 0.0~0.1 (26)

 

他のドライバーたちも比較していこう。

GAS>TSU 0.1 (27)

GAS>OCO 0.0~0.1 (28)

TSU>RIC 0.1 (29)

 

また、ラッセルについては、2024年のハミルトンの競争力を異常値と考えると

HAM=RUS (30)

 

また、ジョウの2024年は異常値と考えると、

BOT>ZHO 0.1~0.2 (31)

 

ハース勢については、

HUL>MAG 0.1~0.2 (32)

最後にピアストリは、

NOR>PIA 0.2 (33)

 

これらを総合した結論として、表1のように解釈することができた。その中でペレスはレッドブルで本来の力よりも0.1秒劣るパフォーマンスだったと仮定すると、辻褄が最も合うため、それを採用した。

3. レースペース分析

まずフェルスタッペンに関連した比較を見てみよう。

VER>PER 0.3 (1)

VER>RIC 0.1 (2)

 

次にペレスに関連した比較に着目する。

PER>OCO 0.0~0.1 (3)

PER>HUL 0.0~0.1 (4)

BUT=PER 0.2 (5)

 

続いてアロンソの周辺を見てみよう。

ALO>OCO 0.4 (6)

ALO>BUT 0.2 (7)

ALO>RAI 0.3 (8)

ALO>MAS 0.4 (9)

ALO>HAM 0.1 (10)

 

ここで(3)、(6)より

ALO>PER 0.3~0.4 (11)

が言える。

 

また、(5)、(7)からも

ALO>PER 0.4 (12)

が言え、この辺りで最もらしいと考えられる。

 

また、

ALO>STR 0.3~0.4 (13)

であるから、

PER=STR (14)

あたりと推測できる。

 

続いてボッタスやハミルトンについて見てみよう。

BOT>MAS 0.0~0.1 (15)

HAM>BOT 0.3 (16)

 

ここで(9)、(15)、(16)より

ALO>HAM 0.0~0.1 (17)

が言える。無論、ここで言うハミルトンは2014年以降を指している。

 

一方、マクラーレン時代のハミルトンは、

HAM>BUT 0.1 (18)

であるため、(7)、(18)から

ALO>HAM 0.1 (19)

が言える。予選ペース比較と同様に、こちらでも以下のように記すこととする。

ALO=HAM_mer (17′)

ALO>HAM_mcl 0.1 (19′)

 

続いてベッテルについて見てみよう。

VET>RAI 0.1~0.2 (20)

(8)、(20)より、

ALO>VET 0.1~0.2 (21)

となる。

ちなみに

VET>STR 0.0~0.1 (22)

で、これは(13)、(21)から得られる比較よりも0.2秒ほど遅い。これも予選ペース分析と同様であり、やはりアストンマーティン時代のベッテルのペースを彼本来の姿と見るのは、間違いだろう。

 

次にルクレールやサインツの周りを見ていこう。

LEC=VET 0.2~0.3 (23)

LEC>SAI 0.2 (24)

NOR>SAI 0.1 (25)

 

ここで、LECやNORがF1キャリア2年目と比べて、その後0.1秒速くなったと、ひとまず仮定してみる。すると、NORはLECレベルとなり、LECはVETよりも0.1秒速くなったことになる。これを念頭に置きつつ、次へ進む。

GAS>TSU 0.2 (26)

GAS>OCO 0.1~0.2 (27)

RIC>TSU 0.2 (28)

ここでも前述の2年目から0.1秒速くなる仮説を適用すると、角田はガスリーより0.1秒遅い程度となり、(27)と合わせると、レッドブル時代のリカルドから0.2秒遅れることになる。すると、RB時代のリカルドは一発の速さこそ鈍ったが、レースペースでは全盛期の力を取り戻していたと考えられる。これらの整合性と、現代F1のタイヤマネジメントの難しさを鑑みても、仮説の最もらしさが現実味を帯びてきた。

 

また、ラッセルについては、2024年のハミルトンの競争力を異常値と考えると

HAM>RUS 0.2 (29)

 

また、ジョウの2024年は異常値と考えると、

BOT=ZHO (30)

 

ハース勢については、

HUL>MAG 0.3 (31)

だが、これだとマグヌッセンはアロンソより0.7秒遅いことになる。マグヌッセンはライコネンと互角だったグロージャンと互角で、ライコネンがマッサより0.1秒速かったことを考えると、(9)より、本来のマグヌッセンはアロンソから0.3秒遅い程度のはずで、すなわち近年のマグヌッセンは0.4秒ほどレースペースで力を落としていたことになる。

 

これらを総合した結論として、表2のように解釈することができた。

Takumi