• 2024/4/25 14:37

2021年メキシコシティGP分析

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1. 分析結果と結論

 先に分析結果を示す。分析の過程については次項「レースペースの分析」をご覧いただきたい。

Table1 全体のレースペースの勢力図

スクリーンショット 2021-11-09 11.28.00を拡大表示

※疑問符がつく部分はオレンジ色で示した

 今回はペレスがレースペースでハミルトンを凌駕し、レッドブルの競争力が光った。

 また中団グループはフェラーリやマクラーレンが相対的に競争力を落とし、アストンマーティンやアルピーヌ、アルファロメオが接近した。それは17周目にクリーンエアを得たベッテルが中団トップのガスリーに14秒ほどしか離されずにフィニッシュした事が物語っている。

2. レースペースの分析

 以下に分析の内容を示す。フューエルエフェクトは0.05[s/lap]で計算した。

 また、各ドライバーのクリーンエアでの走行時を比較するために、全車の走行状態をこちらの記事にまとめた。

各ドライバーの使用タイヤはこちらのピレリ公式より

2.1 チームメイト同士の比較

 最初にチームメイト同士の比較を見ていこう。

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Fig.1 レッドブル勢のレースペース

 第1スティント終盤ではペレスがそれまでのフェルスタッペンと近いペースで走っている。これは後述のサインツやオコンのようにハミルトンの後方でタイヤをセーブできたことも影響していると考えられる。
 第2スティントではペレスのペースが0.2秒ほど速いが、7周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると、フェルスタッペンの方が0.2秒ほど勝っていたと考えられる。

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Fig.2 メルセデス勢のレースペース

 第2スティント前半で比較すると、ボッタスが約0.1秒速く、11周のタイヤ履歴の差を、デグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると、ハミルトンの方が0.5秒ほど速かったと言える。
 ただしボッタスのクリーンエアのサンプルが少なく、データの質としても微妙なところなため、大きな疑問符つき、もしくは比較不能と結論づけた方が賢明かもしれない。

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Fig.3 アルファタウリ勢のレースペース

 比較可能なデータは無かった。

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Fig.4 フェラーリ勢のレースペース

 先に第2スティントから考えると、サインツのペースが0.7秒ほど上回っている。12周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると、実際はサインツが0.1秒ほど勝っていたことになる。
 一方で第1スティントのサインツは、ルクレールがいなくなった途端に0.5秒ほどペースを上げており、第2スティント同様にルクレールを僅かに上回る競争力があった中で前方と距離をとり、20周以上タイヤを労って走ったことで生み出した差ということが見てとれる。

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Fig.5 アストンマーティン勢のレースペース

 ストロールの第3スティントとベッテルの第2スティントは同じタイミングで両者クリーンエアの時間帯も多いが、タイヤが違うので直接の比較は困難だ。
 参考値程度に比較すると、HのベッテルのペースはMのストロールと同等で始まり、スティント終わりにはデグラデーションの違いから0.5秒差程度になっている。ベッテルのデグラデーションは0.05[s/lap]未満のため、1周のタイヤ履歴の差を加味する必要はなく、ここではHのベッテルはMのストロールより0.5秒速かったことのみが読み取れる。

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Fig.6 アルファロメオ勢のレースペース

 第1スティントでは2人が互角のようだ。
 一方第2スティントでは、ライコネンのペースが0.6秒ほど速いが、16周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.02[s/lap]で考慮すると、ライコネンが0.3秒ほど速かったと考えられる。
 またアルファロメオは他チームよりデグラデーションが小さいことにも触れておこう。

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Fig.7 アルピーヌ勢のレースペース

 第2スティントでオコンはアロンソの0.6秒落ち程度だが、25周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮するとオコンの方が0.7秒ほど速かったことになる。
 ただし今回はペレスやサインツのペースからも明らかなように、0.1秒程度のアドバンテージで後方に留まりタイヤを労ることで、前が開けてから0.5秒速いペースを刻むこともできる状態で、評価が難しいところだ。25周というタイヤ履歴の差が精度に与える影響を鑑みても今回のアルピーヌに関しては比較を控えるのが妥当と思われる。

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Fig.8 マクラーレン勢のレースペース

 リカルドにダメージがあり、戦略が逆になるので比較不可能とするのが妥当だろう。

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Fig.9 ウィリアムズ勢のレースペース

 タイムのばらつきが大きく評価しづらいが、第2スティントではラッセルが0.7秒ほど速く、4周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると、ラッセルが0.5秒ほど速かったと考えられる。

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Fig.10 ハース勢のレースペース

 比較可能なデータは無かった。

2.2 ライバルチーム同士の比較

 続いて、チームを跨いだ比較を行う。

 図11にフェルスタッペンとハミルトンの比較を示す。

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Fig.11 フェルスタッペンとハミルトンのレースペース

 第1スティントではフェルスタッペンがペースコントロールに入る25周目付近までは0.4秒ほどの差があった。第2スティントでも全体を平均すると同様の差に見えるが、4周のタイヤの差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると0.2秒となり、第1スティントより差は縮まっている。これはフェルスタッペンが余裕を持って走っていることよりもハードタイヤでハミルトンの競争力が上がったと考えるべきだろう。なぜならば、前者だとすると、第2スティントで比較したフェルスタッペンとペレスのチームメイト比較は0.2秒オフセットして考える必要があり、ペレスはフェルスタッペンの0.4秒落ち、つまり第1スティントではハミルトンとイーブンペースだったことになる。こうなると、ハミルトンが消えた後にペースアップしたことの説明がつかない。したがって、第2スティントでもフェルスタッペンはある程度本来のペースで走っていたと考えるべきだ。ここでは平均の0.3秒を両者のペース差と結論づけたい。

 続いてフェルスタッペン、ガスリー、ルクレールを比較してみよう。

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Fig.12 フェルスタッペン、ガスリー、ルクレールのレースペース

 第1スティントのガスリーはフェルスタッペンの1.0秒落ちとなっている。また第2スティントでは1.0秒落ちのペースだが、2周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると0.9秒となる。ここでは平均を四捨五入し、両者の差を1.0秒と結論づけよう。

 一方、第1スティントのルクレールはガスリーとイーブンペースだ。しかし第2スティントでハードタイヤを履くと、スティント中盤でペースを落とし、スティント全体で平均すると0.3秒落ちになっている、1周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮しても0.2秒落ちと言える。両スティントを平均し、0.1秒を両者の差と結論づけよう。
 またガスリーが対フェルスタッペンでもハードタイヤの方が0.1秒競争力が高く、ルクレールに対しては0.2秒のゲインとなり、各々のタイヤとのマッチングが見えてくる。

 続いてフェルスタッペンとベッテル、ライコネンを比較してみよう。

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Fig.13 フェルスタッペン、ベッテル、ライコネンのレースペース

 第1スティントのベッテルは前が開けてからはフェルスタッペンの1.2秒落ちとなっている。また第2スティントでも同じタイヤで1.2秒落ちのペースだ。

 一方、第1スティントのライコネンはベッテルより0.1秒速いペースとなっている。第2スティントではイーブンペースで、1周のタイヤ履歴の差を0.02[s/lap]で考慮してもそれは変わらない。ここでは第1スティントの四捨五入の関係上平均を切り捨て、イーブンペースと結論づけよう。

 続いてライコネンとアロンソを比較する。

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Fig.14 ライコネンとアロンソのレースペース

 アロンソはライコネンの0.1秒落ちのペースだが、ライコネンがいなくなってから0.5秒ほどペースアップしており、実際は疑問符つきだがイーブンペース程度だったと思われる。第2スティントではアロンソの方が0.1秒ほど速いペースだが、7周分のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.02[s/lap]で考慮するとここもイーブンとなる。このレースでの両者の力関係は互角だったと見るべきだろう。

 続いてアロンソとノリスを比較する。

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Fig.15 アロンソとノリスのレースペース

 第1スティントではアロンソが0.1秒ほど上回るペースを見せている。一方で第2スティントではノリスが0.2秒ほど上回っており、5周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮するとやはりアロンソが0.1秒上回っている。
 にも関わらず最終的にノリスがアロンソに近い位置でフィニッシュできたのは、アロンソが第1スティント終盤で本来ペースアップする際にルクレールに交わされてロスしたこと、ノリスがフェルスタッペンの後ろでピットアウトできたため青旗を回避できたことなどが影響している。

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Fig.16 オコン、ジョビナッツィ、ラッセルのレースペース

 ラッセルは青旗などでタイムのばらつきが大きく評価しづらいが、第2スティントのペースはジョビナッツィの0.5秒落ちと言えるだろう。1周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると、ジョビナッツィの0.4秒落ちだったと考えられる。

 続いて、オコンはラッセルの後方でタイヤを労り、40周目に交わしてから大きくペースアップしているため、正確な実力は測りづらいが、ペースの推移が近いジョビナッツィと比較する。
 オコンは前が開けてからはジョビナッツィよりも平均0.2秒ほど速いペースを刻んでいるが、2周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると、実際の力はジョビナッツィを0.3秒ほど上回っていたと考えられる。
 ただし、ジョビナッツィはリカルドの後方とは言え、比較的自分の本来のペースに近いスピードで走っていたと思われる。その間もオコンはジョビナッツィの0.2秒落ちで走りタイヤを温存しており、実際のオコンの力は上記の数字よりも少し下だったかもしれない。

 最後にストロール、ラティフィ、マゼピンを比較してみよう。

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Fig.17 ストロール、ラティフィ、マゼピンのレースペース

 ストロールとラティフィの第3スティントは15周の差があるため、疑問符付きとなるが、同様のミディアムで比較する。
 ストロールはラティフィを0.2秒ほど上回るペースで、15周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると1.0秒ほどになる。

 マゼピンは、青旗のためばらつきが大きく評価が難しいが、第2スティントのハードタイヤでのペースをラティフィと比較すると、0.5秒落ち程度だ。2周のタイヤ履歴の差をデグラデーション0.05[s/lap]で考慮すると、実際の力は0.6秒落ち程度だったと考えられる。

 以上を総合し、表1の結論を得た。