• 2024/11/21 15:27

2023年 各チームのピットストップ分析(速さと安定性の評価)

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 今日のF1では、全てのピットストップの静止時間が計測されている。

 そこで本記事では、各チームの年間を通じたピットストップタイムの平均値とそのバラツキ(標準偏差)を算出することとした。なお、5.00[s]以上のピットストップは異常値とし、計算には含めないこととした。

 以下に分析結果を示す。

図1 各チームのピットストップタイムの平均と標準偏差

 ちなみに標準偏差とはバラツキを表す指標で、この値が大きいほどシーズンを通してのパフォーマンスが不安定であることを表す。また、標準偏差をσとすると、平均値からプラスマイナスσの範囲内に約68%、プラスマイナス2σの範囲内に約95%のデータが存在することになる(正規分布を前提とするため厳密には異なる)。例えばレッドブルなら、平均が2.57[s]、標準偏差が0.382[s]のため、7割程度の確率で2.2~3.0[s]の範囲に入り、1.9[s]クラスのスーパープレイや3.3秒以上の失敗は5%程度の確率で生じることを意味する。

 さて、それらを踏まえて各チームのパフォーマンスを見ていこう。

 レッドブルが最速の平均タイムをマークしたが、さらに特筆すべきは標準偏差だ。ライバルのフェラーリが0.505[s]とバラツキが大きい中で、レッドブルは0.382[s]に抑え、スピードと安定感の両方で全チーム中トップのパフォーマンスを示した。

 ドライバー、マシン、戦略、ピットストップ、全てにおいてトップのレッドブル。チームとしてあまりにも強く、死角がない。ここまでの組織としての完成度の違いを見せつけられると、彼らを倒すのは非常に困難なチャレンジだと言わざるを得ないだろう。

 レッドブルに続いたのはフェラーリ、アルファタウリ、マクラーレンで、アストンマーティン以降とは少し差がついた。さらにアルピーヌとウィリアムズの間にも差がある。

 ただし、マクラーレン、アストンマーティン、アルピーヌあたりは標準偏差が大きいのが気になる。マクラーレンは1.80[s]のスーパーピットストップを記録したが、こうして見ると、安定性よりもピークパフォーマンスに振っていたとも解釈できそうだ。

 また、メルセデスは18インチタイヤでのタイヤ交換に苦しんでいるが、彼らなりにベストを尽くしていたことが分かる。標準偏差0.427[s]はレッドブルに次ぐ2番手で、苦しいなりに自分たちの力を安定して発揮してきている点は流石チャンピオンチームだ。

 全体を見ると、やはりマシンが速いチームがピットストップでも良い仕事をしている傾向がある。最も極端な例外はアルファタウリで、マシン的には予選で9番目、レースで7番目の車であったにも関わらず、ピットストップでは3番手だった。角田のボックスパフォーマンス(当サイトで分析している「停止と発進のパフォーマンス」)は20人中トップクラスであり、これと組み合わさると、アンダーカット&オーバーカットの瀬戸際では大きな強みとなるだろう。

 なお、この分析は今後のレースにおいて戦略を考える上で有用な情報になる。例えば、「フェルスタッペンが95%の確率でルクレールの前に出るためには22.8[s]必要だ」「このタイミングでノリスを入れたのは上位30%クラスのピットストップが必要だったのでかなりのギャンブルだ」のような見方ができるだろう。あるいは「このチームは勝負所になると上位30%レベルのピットストップを90%の確率で行うことができる、勝負強いチームだ」のような分析も可能になってくる。そこにボックスパフォーマンスのパラメータも含めるとやや複雑になるが、非常に深い戦略分析が可能となってきそうだ。

参考
マシン性能分析
2023年分析&レビュー(ボックスパフォーマンス含む)

Writer: Takumi