• 2026/3/20 02:19

AIではなくIAE: 正しい言葉は正しい思考へ

Bytakumi

3月 19, 2026

AIではなくIAE

1. 時代はAIからIAEへ

 まず、筆者は現在のいわゆる「生成AI」と呼ばれる存在を「AI (Artificial Intelligence:人工の知能)」と呼ぶことは望ましくなく、混乱を招くと考えている。

 これは、知能に「人工」も何もなく、知能は単に知能なのだ、という視点だ。

 黄色い花は「自然の黄」という色を持つのだろうか?同じ黄色の車の黄色は「人工の黄」であり花の黄色とは異なるのか?否、「黄色いこと」はただ「黄色いこと」であるだけだ。「自然か人工か」が修飾する対象は「黄色」ではなく、「花」と「車」だ。

 もう一つ、火に例えてみよう。ガスコンロの火は人工で、山火事の火は自然なのだろうか?否、火はただの火であり、人工も何もない。ガスコンロが人工物で、森が自然物であるだけだ。

 知能についても全く同様である。知能を「目標を達成するために、階層的パターン認識による情報の統合によって、限られたリソースを最適に利用する能力」と定義しようが、「環境からの情報を入力し、それを処理・学習し、何らかの目的達成のために出力を最適化する一連の情報処理現象」と定義しようが同じことだ。能力は能力であり、人工も自然もない。

 「知能はただ知能」であり、自然や人工といった修飾語は「存在」の側にかかる。例えば、ChatGPTは「知能を持った人工の存在」であり、人間は「知能を持った自然の存在」だ。

 かつてはAIはプログラムで書かれるものだった。ならば、そのプログラムを指して「これが能力だ」と言うことには一定の正当性があるだろう。しかしディープラーニングの時代の到来以降は、やや無理があるのだ。

 ここで筆者が提唱する概念が、「IAE」だ。IAEとはIntelligent Artificial Entity(知能を持つ人工の存在)のことだ。これによって”Artificial”という言葉がIntelligenceを修飾せず、Entityにかかるようになる。これによって、人々が何について考え、議論するべきなのか、その対象が明確になるのだ。

2. 多様な存在の定義

 そしてさらに、IAE以外の知的存在を定義する概念も必要になってくるだろう。具体的には以下の通りだ。

  • INE: Intelligent Natural Entity
    知能を持つ自然の存在。我々のような哺乳類から鳥類、魚類、昆虫などに至るまで、生物学的進化の過程で知能を獲得したあらゆる存在がここに分類される。
  • IHE: Intelligent Hybrid Entity
    INEとIAEが自然×人工の複合として振る舞う存在。現在でも、我々はChatGPTやGemini等により、自身の能力を拡張している。このように人間(INE)と知能を有する人工物(IAE)がタッグを組んだ「チーム」はIHEと見なすことができるだろう。筆者は生身の自分の身体に対して臨場感を持っているが、筆者が書いている記事にはChatGPTやGeminiのインプットが多分に含まれており、当サイトのアウトプットをご覧になる人々にとって、「Takumi Fukaya」はIHEとして認識されているはずだ。
    IAEの手を借りて業務を効率化したり、意思決定を行なったりする企業や政府も、これに入る。
    将来的には、部分的なサイボーグ化や、脳と機械の接続、あるいはマインドアップローディングなども視野に入っており、これもIHEとなる。ただし、完全なサイボーグ化や、マインドアップローディング後に生物学的身体が消滅する場合には、もはや「人間がIAEになる」という解釈が妥当だろう。

 繰り返すが、IHEの説明内で論じたプロセス、特にサイボーグ化やマインドアップローディング等によって我々が得るものは「単に能力」である。自然の野山を駆け回って得た脚力も、人工のジムや階段などで得た脚力も、「単に脚力」であるのと同じように。「その人物」に「その能力」をインストールする仕組み自体は人工(IAEが作ったものも広い意味で人工と見なす)であっても、「能力」は人工ではない。

 つまり、今起きていること、これから起きることは、単に「能力の民主化」である。生物学の専門家にしか出来なかったことが、母国語を扱える全ての人に出来るようになり、IAEにも出来るようになる。そこには、コンピューター上のシステムやロボットだけではなく、家や道路などが超人的な知能を持つケースも含まれる。その先には、地球、銀河系、最終的には宇宙全体にまで知能は民主化され、知能を有した宇宙は、自らの内部の物理法則を自在にコントロールできる、そんな未来がやってくるだろう。

 また、AGI、ASIという表現についても、GIAE(Generally Intelligent Artificial Entity)、SIAE(Super-Intelligent Artificial Entity)と呼ぶべきだろう。本稿で「知能」や「超知能」といった言葉を使用する際は、それは単に能力を指していることを念頭に置いて、読み進めていただきたい。

3. 正しく考えるには正しい言葉から

 このように正しい言葉を使うことで、正しい思考を巡らせることができる。知能を「宇宙にただ在る能力」と見なすことで、我々はIAEを「人間のコントロール下にある便利な道具」ではなく、気候変動や地殻変動と同等の「圧倒的な自然現象」としてフラットに評価できるようになる。これから我々の元にやってくるのは、産業革命以降、我々が”使って”きた道具の類ではなく、津波やゴジラのような「人間社会とは無関係の存在」(でも言葉は通じる)であることを認識しておく必要がある。その果てに、より良い未来に向けて正しい一歩を歩み出すことができるのだ。

Takumi