• 2024/11/14 16:02

2024年 メキシコGPレースペース分析

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 管理人の健康状態を踏まえ、今回から以下の2点に的を絞る。

・チームメイト同士の比較
・注目のライバル同士の比較

1. 分析方法について

 フューエルエフェクトは0.07[s/lap]とし、グラフの傾きからデグラデーション値を算出。タイヤの履歴からイコールコンディションでのレースペースを導出した。また、クリア・ダーティエアやスティントの長さ、プッシュするインセンティブなどのレース文脈も考慮している。定量的に導出できないドライバーについては結論を出さず、信頼できる数字のみを公開する方針としている。

 また、スティント前半でダーティエアでも、途中からクリアエアになっており、かつ前半のダーティエア内でもタイヤを労われていて極端なペースダウンでもない場合、スティント全体をクリアエアのように扱ってよいと考え、当サイトではその状態をオープンエンドクリアエア(OEC)と定義している。

 また、分析対象はドライコンディションのみに限定している。

各ドライバーの使用タイヤはピレリ公式より

 今回は予選で使用したソフトと新品ソフトの差、スクラブ済みと新品のミディアム・ハードの差は無視することとした。

2. チームメイト同士の比較

2.1. フェラーリ勢の比較

図1 フェラーリ勢のレースペース

 第1スティントにて、両者ミディアムタイヤで、サインツは、ルクレールがクリアエアを得たL11からL30までの平均で、0.31秒速い。デグラデーションとスティントの長さに極端な差はないため、このままの値を採用し、四捨五入して「ミディアムタイヤの第1スティントにおいて、サインツはルクレールより0.3秒速かった」と結論づける。

 また、第2スティントにて、両者ハードタイヤで、L34~61まで(両者本来のペースで走っていたと思われる範囲)の平均を取るとルクレールはサインツより0.05秒速い。ルクレールのタイヤが1周分古く、ルクレールのデグラデーションが0.04[s/lap]、サインツが0.03[s/lap]であることを考慮すると、ルクレールのタイヤの不利は、

0.04*1+(0.04-0.03)*29/2≒0.19[s]

 したがって両者新品の状態では、ルクレールが、

0.05+0.19=0.24[s]

速かったことになる。

 本来のスティントの長さは、チェッカーまでサインツが39周、ルクレールが40周のため、平均の39.5周スティントを走った場合を考えると、ルクレールのペースアドバンテージは、

0.24-(0.04-0.03)*39.5/2≒0.04[s]

 四捨五入して、「ハードタイヤの第2スティントにおいて、ルクレールとサインツは互角であった」と結論づけられる。

2.2. メルセデス勢の比較

図2 メルセデス勢のレースペース

 第1スティントにて、両者ミディアムタイヤで、ラッセルは、クリアエアを得たL16からL23までの平均で、0.32秒速い。ハミルトンのスティント終盤の落ちが気になるが、これをラッセルの周回数との平均である29.5周目まで延長するわけにもいかないため、このままの値を採用し、四捨五入して「ミディアムタイヤの第1スティントにおいて、ラッセルはハミルトンより0.3秒速かった」と結論づける。

2.3. ハース勢の比較

図3 ハース勢のレースペース

 第1スティントにて、両者ミディアムタイヤで、両者が本来のペースで走り始めたL8から28(L10,11を除く)の平均を取ると、マグヌッセンはヒュルケンベルグより0.15秒速かった。四捨五入して「ミディアムタイヤの第1スティントにおいて、マグヌッセンはヒュルケンベルグより0.2秒速かった」と結論づける。

 また、第2スティントにて、両者ハードタイヤで、最初は両者同じようにトラフィックをかき分けてくる展開だったため、L43~69(極端に落ちているところは除く)までの平均を取る形で良いだろう。ここでは、マグヌッセンがヒュルケンベルグより0.39秒速い。ヒュルケンベルグのタイヤが1周分古く、ヒュルケンベルグのデグラデーションが0.03[s/lap]、マグヌッセンがL61(自身のスティントの32周目)まで0.00[s/lap]、L62(自身のスティントの33周目)以降は0.08[s/lap]であることを考慮すると、ヒュルケンベルグのタイヤの不利は、

0.03*1+(0.03-0.00)*31/2-(0.08-0.03)*8/2≒0.30[s]

 したがって両者新品の状態では、マグヌッセンが、

0.39-0.30=0.09[s]

速かったことになる。

 本来のスティントの長さは、チェッカーまでマグヌッセンが42周、ヒュルケンベルグが41周のため、平均の41.5周スティントを走った場合を考えると、マグヌッセンのペースアドバンテージは、

0.09+(0.03-0.00)*32.5/2-(0.08-0.03)*9.5/2≒0.33[s]

 四捨五入して、「ハードタイヤの第2スティントにおいて、マグヌッセンはヒュルケンベルグより0.3秒速かった」と結論づけられる。

2.4. ザウバー勢の比較

図4 ザウバー勢のレースペース

 第1スティントにて、両者ハードタイヤで、両者がクリアエアで本来のペースで走れている部分を抜き出して平均を取ると、ボッタスが0.14秒速い。スティントの長さはやや異なるが、デグラデーションとに極端な差はないため、このままの値を採用し、四捨五入して「ハードタイヤの第1スティントにおいて、ボッタスはジョウより0.1秒速かった」と結論づける。

 また、第2スティントにて、両者ミディアムタイヤで、L52~68(極端に落ちているところは除く)までの平均を取るとボッタスはジョウより0.54秒速い。デグラデーションは両者同程度で0.05[s/lap]程度だったため、単純にジョウが6周古いことの不利は

0.05*6=0.30[s]

 よって、同条件では、ボッタスが

0.54-0.30=0.24[s]

 四捨五入して、「ハードタイヤの第2スティントにおいて、ボッタスはジョウより0.2秒速かった」と結論づけられる。

3. 注目のライバル同士の比較

 今回は、以下の8つについて定量的な知見を得た。

  • 第1スティントのサインツとフェルスタッペン
  • 第1スティントのフェルスタッペンとハミルトン
  • 第1スティントのサインツとラッセル
  • 第1スティントのサインツとマグヌッセン
  • 第2スティントのノリスとサインツ
  • 第2スティントのノリスとフェルスタッペン
  • 第2スティントのノリスとハミルトン
  • 第2スティントのサインツとマグヌッセン

 先に使用したグラフを掲載する。

図5 サインツ、ノリス、ハミルトン、フェルスタッペンのレースペース
図6 サインツ、ラッセル、マグヌッセンのレースペース

3.1. 第1スティントのサインツとフェルスタッペン(図5)

 第1スティントにて、両者ミディアムタイヤで、両者が本来のペースで走っているL11~25の平均を取ると、サインツが0.53秒速い。ただし、デグラデーションとスティントの長さに明確な差がある。

 サインツのデグラデーションが0.05[s/lap]、フェルスタッペンが0.12[s/lap]で、この区間でのフェルスタッペンのタイヤの不利は、

(0.12-0.05)*14/2=0.49[s]

となる。したがって新品ではサインツが

0.53-0.49=0.04[s]

速かったことになる。

フェルスタッペンは26周スティント、サインツは32周スティントであるため、平均の29周(11周目から18周)走った場合を考えると、サインツのペースアドバンテージは

0.04+(0.12-0.05)*18/2=0.67[s]

 四捨五入して「ミディアムタイヤの第1スティントにおいて、サインツはフェルスタッペンより0.7秒速かった」と結論づける。

3.2. 第1スティントのフェルスタッペンとハミルトン(図5)

 スティントの長さが近い2人を比較することで、前項のような補正の必要性を避けることとする。両者自分のペースで走れている区間ではフェルスタッペンが0.47秒速い。四捨五入して「ミディアムタイヤの第1スティントにおいて、フェルスタッペンはハミルトンより0.5秒速かった」と結論づける。

3.3. 第1スティントのサインツとラッセル(図6)

 サインツがラッセルより0.86秒速い。四捨五入して「ミディアムタイヤの第1スティントにおいて、サインツはラッセルより0.9秒速かった」と結論づける。

3.4. 第1スティントのサインツとマグヌッセン(図6)

 ここでもスティントの長さが近い2人を選択する。両者自分のペースで走れている区間ではサインツが1.59秒速い。四捨五入して「ミディアムタイヤの第1スティントにおいて、サインツはマグヌッセンより1.6秒速かった」と結論づける。

3.5. 第2スティントのノリスとサインツ(図5)

 両者ハードタイヤの第2スティント。サインツは62周目まで本来のペースで飛ばして、終盤は緩めて走っていたと考える。また、ノリスはルクレールに接近する中でもタイムを落としておらず、当該区間のラップタイムも計算に含めるものとする。

 L34~62までの平均を取るとノリスはサインツより0.17秒速い。ノリスのタイヤが2周分古く、ノリスのデグラデーションが0.02[s/lap]、サインツが0.03[s/lap]であることを考慮すると、ノリスのタイヤの不利は、

0.02*2-(0.03-0.02)*30/2≒-0.11[s]

 したがって両者新品の状態では、ノリスが、

0.17-0.11=0.06[s]

速かったことになる。

 本来のスティントの長さは、チェッカーまでサインツが39周、ノリスが41周のため、平均の40周スティントを走った場合を考えると、ノリスのペースアドバンテージは、

0.06-(0.03-0.02)*40/2=0.26[s]

 四捨五入して、「ハードタイヤの第2スティントにおいて、ノリスはサインツより0.3秒速かった」と結論づけられる。

3.6. 第2スティントのノリスとフェルスタッペン(図5)

 両者ハードタイヤの第2スティント。フェルスタッペンが本来のペースで走れるようになったL39からL70までの平均を取るとノリスが0.87秒速い。フェルスタッペンのタイヤが4周分古く、フェルスタッペンのデグラデーションがL57(自身のスティントの31周目)まで0.02[s/lap]、L58(自身のスティントの32周目)からは0.08[s/lap]、ノリスが0.02[s/lap]であることを考慮すると、フェルスタッペンのタイヤの不利は、

0.02*4+(0.08-0.02)*13/2≒-0.47[s]

 したがって両者新品の状態では、ノリスが、

0.87-0.47=0.40[s]

速かったことになる。

 本来のスティントの長さは、チェッカーまでノリスが41周、フェルスタッペンが45周のため、平均の43周スティントを走った場合を考えると、ノリスのペースアドバンテージは、

0.40+(0.08-0.02)*12/2=0.76[s]

 四捨五入して、「ハードタイヤの第2スティントにおいて、ノリスはフェルスタッペンより0.8秒速かった」と結論づけられる。

3.7. 第2スティントのノリスとハミルトン(図5)

 両者ハードタイヤの第2スティント。「ハミルトンはラッセルとバトルをしながらも単独走行時と同程度のデグラデーションで走っていた」という仮定を前提とすると、L35~47, 66~69までの平均を取って良いだろう。

 ノリスはハミルトンより0.49秒速い。ハミルトンのタイヤが2周分古く、ハミルトンが0.03[s/lap]、ノリスのデグラデーションが0.02[s/lap]であることを考慮すると、ハミルトンのタイヤの不利は、

0.03*2+(0.03-0.02)*41/2≒0.27[s]

 したがって両者新品の状態では、ノリスが、

0.49-0.27=0.22[s]

速かったことになる。

 本来のスティントの長さは、チェッカーまでノリスが41周、ハミルトンが43周のため、平均の42周スティントを走った場合を考えると、ノリスのペースアドバンテージは、

0.22+(0.03-0.02)*42/2=0.43[s]

 四捨五入して、「ハードタイヤの第2スティントにおいて、ノリスはハミルトンより0.4秒速かった」と結論づけられる。

3.8. 第2スティントのサインツとマグヌッセン(図6)

 両者ハードタイヤの第2スティント。L40~62の平均を取ると、サインツがマグヌッセンより0.56秒速い。マグヌッセンのタイヤが1周分古く、マグヌッセンがL61(自身のスティントの32周目)まで0.00[s/lap]、L62(自身のスティントの33周目)以降は0.08[s/lap]、サインツのデグラデーションが0.03[s/lap]、であることを考慮すると、マグヌッセンのタイヤの不利は、

(0.00-0.03)*29/2+(0.08-0.03)*/2-(0.08-0.03)*1/2≒-0.41[s]

 したがって両者新品の状態では、サインツが、

0.56+0.41=0.97[s]

速かったことになる。

 本来のスティントの長さは、チェッカーまでマグヌッセンが42周、サインツが39周のため、平均の40.5周スティントを走った場合を考えると、サインツのペースアドバンテージは、

0.97-(0.03-0.00)*32/2+(0.08-0.03)*8.5/2≒0.70[s]

 四捨五入して、「ハードタイヤの第2スティントにおいて、サインツはマグヌッセンより0.7秒速かった」と結論づけられる。

4. まとめ

 以上の分析から以下のことが言える。

 まず、第1スティントでミディアムタイヤを履いたドライバーに関しては、表1のような力関係であることがわかった。

表1 レースペースの勢力図 1

 

 また、第2スティントでハードタイヤを履いたドライバーに関しては、表2のようになった。

表2 レースペースの勢力図 2

 

 ノリスのハードタイヤでの第2スティントは非常に強力で、第1スティントでフェルスタッペンに抑え込まれなければ、サインツとの非常に緊迫した優勝争いが見られたと思われる。

 また、ハミルトンは第1スティントでフロントが全くグリップしなかったが、ピットストップでウィングを調整し、第2スティントでは見違えるような好ペースとなった。

 ハース勢は非常に好調で、特にハードタイヤではフェルスタッペンに近いスピードを見せた。

5. 付録 1

 付録として、今回使用しなかったグラフを掲載する。

6. 付録 2

 計算方法を一般化したものを掲載する。(※10/30 10:03 「最終的なペース差」式内のSの符号の間違いを修正。および文字を変更。)

 デグラデーションが途中で変化する場合については以下の通り。

Writer: Takumi