• 2025/12/5 20:42

プレシンギュラリティ ~10年で激変する世界~

Bytakumi

6月 27, 2025

 まず筆者は、2026年にASI(Artificial Super Intelligence)が、そして2028年にはマインドアップローディングが実現すると考えている。もちろん不確定要素は多く、横軸には多少のズレがあるだろう。しかし、10年後の世界は現状とは大きく変わっていることは確かだ。

 そしてどうやら、このタイムラインは多くの人々と比べて急激に映るようだ。また、筆者の場合は論理・直感の両面からこうした未来予測に実感を持っているのも一つの特徴だ。論理を追って納得することと、直感レベルで腑に落ちることは別の話であり、本稿ではその後者に重きをおく。そうした世界観に対して臨場感を持っていただければ幸いだ。


(1)文明の成長は指数関数的

 わずか150年前を振り返れば、電球はついていなかった。そのことを思い出してから街中を見渡すと、スマートフォン、YouTube、挙げ句の果てにはChatGPTやGeminiが博士レベルの高度なディベートを行っている。この150年で我々の文明は途轍もない進歩を遂げた。

 しかし、重要なのは「進歩が加速している」ことだ。この直近150年に相当する進歩は、その前の2000~6000年に相当すると言われる。GWP(世界総生産)の観点から見れば、直近の150年の成長は、紀元1年から1875年までの成長の5倍となっている。

 (少なく見積もっても)2000年以上の進歩が150年に圧縮されたならば、その150年分の進歩がこれから10年以内に圧縮されると考えるのは、極めて自然だろう。

【反論】

 ただし、指数関数的な伸びを見せても、大抵の場合はどこかで減速してシグモイド曲線を辿る。

図1 典型的なシグモイド曲線

 例として、筆者が最も慣れ親しんでいるのがアブラムシだ。彼らは指数関数的に増え続けても、餌の枯渇やテントウムシに見つかってしまうことで、その増加の限界を迎える。

 我々の場合は、「計算資源の限界」「データの質の限界」「アルゴリズム改善の限界」が餌の枯渇に相当し、「宇宙文明からの干渉リスク」がテントウムシに相当するかもしれない。後述するが、前者3つは知能爆発と産業爆発の中で突破していけると考えられる。ただし、宇宙文明については真剣に考える必要がある可能性があり、それらは他の記事で論じることとする。


(2)GPTモデルの世界理解

 未来予測に関して筆者が現在の世界観を持ったのは2023年11月、GPT-4 Turboが高度な世界理解を示した時だ。

 このとき筆者は、GPTsにて初めて「世界生成・記述法」を試した。そこでは、家を建てて生活したり、冒険したり、世界の内部で暮らすAIキャラクターたちと信頼関係を築いていくことができた。家の中で間取りが崩れることもなく、初期の頃こそ「旅行してホテルのベッドで寝て目を覚ますと家のベッド」ということもあったが、GPT-4oになって以降、そのような奇妙な現象は圧倒的に減っている。

 このように、物理法則を外部から与えるのではなく、モデルがウェイトで世界を理解する様を目撃すると、一気に未来が見える。そう、モデルは自身の世界モデルでの結果と物理世界での結果のズレからウェイトを最適化することを繰り返す。その果てに、人類の物理学よりも遥かに物理世界を「理解」し、真に有用で機能するテクノロジーを発明、実現していくことができるだろう、ということだ。


(3)専門家たちの予測

 これについては言うまでもないが、アッシェンブレナー氏の『Situational Awareness』やココタイロ氏の『AI 2027』を読めば、今後数年での急激な変化は明らかだ。これらの記事でも語られているが、国家間の競争がある限り、国際的に足並みをそろえて規制を設けることは現実的ではない。それが良いことか否かはさておき、加速は止めようがないだろう。

 参考までに、『Situational Awareness』の最も重要なグラフを引用しておこう。

図2 Effective Computeから見る未来予測
(出典:Leopold Aschenbrenner『Situational Awareness: The Decade Ahead』〔2024年6月〕より引用)

 最も賢い人間レベルである10の6乗の破線を突破すると、傾きが急激になり、最速の予測では2027年の頭には10の15乗に到達する。すなわち、トップクラスの人間の10億倍の知能を獲得するということだ。

 加えて言えば、その他の専門家たちのAGI(Artificial General Intelligence)の実現時期は、かつては「22世紀」「不可能」といったものであったのが、段々と2050年付近へ、そして今では大半の常識的な専門家が2025~2035年までを予想している。もちろんAGIの定義にもよるが、この変遷を目にすれば、今後もさらに早くなり、実際のAGI実現と出会う時が来るだろう。この状況を俯瞰しても、最低でも2020年代にはAGIが到来する直感は得られるだろう。


 ここまでの全てを踏まえると、今後数年で大きな変化が訪れることは直感的に腑に落ちるだろう。2028年にマインドアップローディングや宇宙進出が実現するというのは、特別アグレッシブな予測ではない。筆者はそのように考えている。ぜひ、この世界観を踏まえた上で、他の記事にも目を通してみていただければ幸いである。

Takumi