F1はついにヨーロッパラウンドへと帰って来た。エミリア・ロマーニャGPの中止によってその初戦となったモナコGP。追い抜きが困難なサーキットだけに、予選から凄まじいドッグファイトが見られた。今回は決勝レースのフェルスタッペンとアロンソの優勝争いにフォーカスし、データを交えて振り返りを行なっていこう。
1. 別れたタイヤ選択
スタートタイヤはフェルスタペンがミディアムタイヤを選んだのに対し、アロンソはハードタイヤ。他にもラッセルやガスリー、フェラーリ勢などハードを選択したドライバーが散見された。これは雨が降るタイミングまでピットストップを引っ張ることができるようにするためのものだろう。
ドライでのペースを比較するため、図1にフェルスタッペンとアロンソのレースペースを示す。
全体の平均ではフェルスタッペンの方が上回っており、トラフィック等の影響を除くと、その差は0.3秒ほどだ。
しかし40周目を過ぎてからのペースはほぼ互角で、フェルスタッペンのタイムはスティント終盤にかけて落ち始めている。その後雨が降り出すと、54周目に入る時点で13秒あった差が、ピット手前までに一気に8秒まで縮まっており、摩耗したミディアムタイヤでウェット路面を走るのはかなり厳しかったことが分かる。
2. 理想ではなくとも…
実は今回のフェルスタッペンは危うく優勝を逃す所だった。それはピットストップのタイミングの問題だ。
前述の通り、54周目のピット手前で2人の差は8秒まで縮まっていた。
そして55周目には雨足が強まり、インターミディエイトタイヤが圧倒的に速いコンディションへと化していた。54周目にインターミディエイトに履き替えたドライバーが、55周目のピット入り口までにフェルスタッペンとの差をどれだけ縮めているかを見てみると、オコンは12秒、ハミルトンに至っては14秒も縮めている。たった1周でだ。
よって、アロンソが54周目にインターミディエイトに交換していれば、フェルスタッペンの5秒ほど前で戻れた可能性が高い。結果的に天候が悪化して、アロンソ&アストンマーティンのミディアム選択が失敗となったが、フェルスタッペン&レッドブルにとってはかなり危うい状況だった。
裏を返せば、それだけ天候の先行きが読みづらい状況だったということでもある。その中で「理想的なタイミング」で入ることよりも、後ろを見ながらリスクの少ない選択をしたのがレッドブルとも言える。今回は相手のミスという運(自身でコントロールできず再現性のない要素)に救われた形となってしまったが、一方でこうした手堅さも年間でチャンピオンを獲るために必要な強さということだろう。
3. 惜しかったアロンソ
予選でキレた走りを見せ、10年ぶりの優勝が期待されたアロンソ。しかし54周目にミディアムタイヤに交換する判断が結果的に外れてしまった。
前述の通り、インターミディエイトを選択していれば楽に優勝できたはずで、実に勿体無い。しかし、アロンソ&アストンマーティン陣営としては、コースの一部しか濡れておらず、それほどの雨量は降らないと考えていたようで、これも結果論に過ぎないだろう。(一部にはコミュニケーションミスとの話も聞こえてくるが…)
逆にタイヤ選択次第で優勝が見える所まで来たのは大きな成果だ。54周目時点で20秒離されていればタイヤ云々関係なくノーチャンスだ。先に行ったレースペース分析では、アロンソのドライでのレースペースは同じハードタイヤのルクレールを0.6秒上回っており、今回は非常に競争力が高かった。
今季はまだハンガリーやシンガポールといったコーナリングサーキットが残っており、今回の力を見ると、実力でレッドブル勢に挑んでいくチャンスがまだあと何回か見られるかもしれない。
Writer: Takumi