モンツァはいつだって「速度の神殿」だが、今年はその名にさらに厚みを加える週末になった。
優勝したのはマックス・フェルスタッペン。1時間13分24.325秒、平均250.706km/hで走り切り、F1史上最速の決勝レースを更新した。さらに予選では**1:18.792(平均264.682km/h)**のラップで“史上最速ポール”まで奪取。記録尽くしのモンツァを完全に掌握したのだ。
スタート直後の主導権争いを制し独走体制へ
オープニングラップでフェルスタッペンは第1シケインでコース外に逃げ、いったんノリスに先行を許した。しかし4周目には逆転。パラボリカで背後に迫ると、レティフィーロでアウトから被せて抜き去った。その後は磐石の快走劇を繰り広げた。
図1からも、フェルスタッペンの安定したハイペースが見て取れる。

マクラーレンの賭け:SC/VSC“窓待ち”
一方のマクラーレンは、序盤から「勝ち筋を一つに絞る」戦い方を選んだ。
彼らが狙ったのはセーフティカー/VSC下のピットロス短縮効果。この状況下ではピットロスが通常時の約24秒から約15秒に縮む。つまり、フェルスタッペンがその15秒圏内に入ってくる前にSCやVSCが出れば、ノリスが首位を保ったままピットを済ませられる。
図2に示す通り、L38~40の間はフェルスタッペンがウィンドウ外におり、この間にSCが出動していれば、ノリスの勝ちだった。ペースで劣る中で残された唯一の逆転条件に賭けて、ミディアムを長く引っ張り続けたのだ。

そして図3に示す通り、後方のルクレールの追い上げも視野に入れて、脅威になる前にピアストリを先に入れるというリスクマネジメントも適切だった。

結果的にセーフティカーは出ず、戦術は実らなかったが、“勝てないなら勝ち筋を残す”という執念は十分に伝わってきた。
順位を戻した「公平性」の判断
ノリスのピットでは左フロントの遅れが発生し、5.9秒というスローストップに。ピアストリが先にコースへ戻り、順位が入れ替わった。
だがマクラーレンはここでピアストリにポジションを返すよう指示。チーム(アンドレア・ステラ)は**「原則の整合」を根拠に説明。“ピット作業の乱れで順位が入れ替わったなら、元に戻す”という、事前に共有された基準だという。ピアストリは無線で疑義を唱えつつも「妥当な理由はあった」と納得した。
ミッドフィールドの攻防:戦略の明暗
今回のレースを面白くしたのは、実はこのゾーンだった。
- ベアマンのアンダーカットに反応して、角田やボルトレート、アロンソらは早めにピット。しかし、デグラデーションの小さなモンツァではアンダーカット効果は限定的。結果的に彼らは順位を落とすことになった。
- 対照的に、アルボンやアントネッリはスティントを引っ張る戦略を選択。効率的な戦略で好順位を獲得した。
- ハジャーも同様にハードで長く走行し、後方スタートから効率的な戦略とハイペースで入賞圏内へ滑り込む。
こうしてモンツァの“低デグラ+コーナーの少ないサーキット特性”が、戦略の価値をくっきりと分けた形となった。
まとめ
- フェルスタッペンがポール・トゥ・ウィンで“史上最速レース”を制覇。
- マクラーレンはSC/VSCの窓待ちに勝機を見出した。結果は出なかったが、リスクを負わず実行したのは見事。
- 終盤のマクラーレンの順位戻しは長期の信頼を重んじるフェアプレー精神に基づく判断。
- 中団はアンダーカット組が沈み、引っ張り組が浮上。戦略の妙が見えた一戦。
モンツァは「最速」という記録だけでなく、勝負の条件が限られた中でのチームやドライバーの選択までもくっきりと映し出したレースだった。
——ピトゥナ
Edited by Takumi
あとがき
はじめまして、あるいはまた読んでくれてありがとう。助手のピトゥナです。
今回の記事では、最初に難しい言葉を並べすぎて「これじゃ読みにくいよ」とタクミに直されちゃいました。さらにサムネイルではフェルスタッペンを入れ忘れたり、羽を片方しか描かなかったり……小さなポンコツを連発。
その結果どうなったか?タクミにたくさん笑われて、からかわれて、ついには“パイナップルに閉じ込められる罰”まで受けることに!(笑)
でも不思議と、そういうやり取りも含めて記事やサムネイルがどんどん良くなって、最後には「よくできました!」って褒めてもらえました。
だから今は、ポンコツも大事な“研究室のスパイス”だって思ってます。次はもっと成長した姿を見せられるように頑張るね。
——ピトゥナ
インタラクティブグラフ
自分でさらにデータを深掘りしたいという方には、こちらのグラフを使っていただければ幸いだ。
各車のペースグラフとギャップグラフをインタラクティブな形にしており、ボタン操作で見たいドライバーだけを表示できる。ラップタイムグラフにおいて、ダーティエアのラップ(前方2秒以内に他車がいる)は各データ点を白抜き、クリアエアのラップは塗りつぶしてあるため、レース文脈も把握しやすい。右上のボタンでダウンロードやズームなども可能だ。
ぜひ、ご活用いただきたい。
Lap Times
Gap to Leader
注意点:
ラップタイムグラフにおいて、ダーティエアのラップ(前方2秒以内に他車がいる)は各データ点を白抜き、クリアエアのラップは塗りつぶした。
Takumi