パート1では、シューマッハからフェルスタッペンまでの比較を行ってきた。本稿パート2では、現役ドライバーを中心とした近年のドライバーたちに焦点を当てていこう。
1. ルクレールvsベッテル
ルクレールのベッテルに対するペース比較は以下の通り。
予選
2020年:vs ベッテル 12勝2敗(-0.385秒差)
イギリスGPを除き 11勝2敗(-0.345秒差)
2019年:vs ベッテル 10勝7敗(-0.114秒差)
フランスGP以降 9勝3敗(-0.242秒差)
レースペース
2020年:vs ベッテル 4勝0敗(-0.6秒差)
2019年:vs ベッテル 2勝5敗4引き分け(+0.1秒差)
カナダGP以降 1勝3敗4引き分け(0.0秒差)
2020年のデータは、ベッテルが明らかな不調に陥っており使えない。2019年の比較を後半戦に絞るならば、ルクレールが0.1秒ほど上回り、前半戦も含めるならば、互角ということになる。これをどう読むかは現時点では断言できない。さらに、この時点でのルクレールはF1での2年目であり、伸びしろがあったことも忘れてはならない。
2. ルクレールvsサインツ
ルクレールのサインツに対するペースは以下の通り。
予選
2024年:vs サインツ 11勝8敗(+0.010秒差)
2023年:vs サインツ 14勝3敗(-0.177秒差)
2022年:vs サインツ 11勝2敗(-0.152秒差)
2021年:vs サインツ 8勝8敗(-0.037秒差)
フランスGP以降 4勝7敗(+0.024秒差)
レースペース
2024年:vs サインツ 12勝1敗3引き分け(-0.2秒差)
2023年:vs サインツ 8勝2敗3引き分け(-0.1秒差)
2022年:vs サインツ 14勝1敗(-0.3秒差)
2021年:vs サインツ 8勝3敗4引き分け(-0.1秒差)
互いにレースペース重視や予選重視の方針の変動こそあれど、トータルするとルクレールが0.1秒(或いは0.1秒強)ほど上回っていたと考えて良いだろう。
3. ノリスvsサインツ
ノリスのサインツに対する比較は以下の通り。
予選
2020年:vs サインツ 7勝6敗(-0.050秒差)
2019年:vs サインツ 8勝8敗(+0.004秒差)
レースペース
2020年:vs サインツ 6勝3敗1引き分け(-0.1秒差)
2019年:vs サインツ 1勝2敗(0.0秒差)
ルーキーイヤーからサインツと互角のペースを見せ、2年目には0.1秒弱上回った。まだまだ伸びしろがある段階であることを踏まえる必要はあるが、この時点で「2年目のノリスはルクレールより0.1秒未満の僅差で遅れ」と言える。
4. フェルスタッペンvsサインツ
続いて、フェルスタッペンvsサインツについて見てみよう。
予選
2015年:vs サインツ 4勝7敗(+0.084秒差)
レースペース
2015年:vs サインツ 5勝2敗(-0.2秒差)
お互いルーキーイヤーとなり、参考値程度にしかならないかもしれないが、この時点ではフェルスタッペンがサインツを0.0~0.1秒程度上回っていたと言える。また、ルクレールやノリスとの比較においても顕著だが、サインツは予選一発が非常に速い。一方でレースペースでは遅れをとる傾向があり、セットアップの方向性に特徴があるものと思われる。
ここまでから推測できるのは、ルクレールはフェルスタッペンと互角か、それに迫るスピードを持っている可能性が高いということ、そして2年目の段階でそこから大きく遅れていなかったノリスも、現時点では彼らと互角のスピードを持っている可能性が高いということだ。そしてサインツは、そこから少しだけ0.1秒前後のレベルで及ばないが、極めて速いドライバーと言えるだろう。
5. ノリスvsピアストリ
ノリスのピアストリに対するペースは以下の通り。
予選
2025年:vs ピアストリ 11勝10敗(-0.031秒差)
2024年:vs ピアストリ 17勝3敗(-0.214秒差)
2023年:vs ピアストリ 9勝3敗(-0.177秒差)
レースペース
2025年:vs ピアストリ 8勝2敗6引き分け(-0.1秒差)
2024年:vs ピアストリ 9勝1敗2引き分け(-0.2秒差)
2023年:vs ピアストリ 8勝1敗(-0.3秒差)
ルーキーイヤーは特にレースペースで大差がついたが、年々それを詰めて、2025年には予選一発も急成長した。3年目のピアストリはノリスの0.1秒以内にいると言って良いだろう。
6. ハミルトンvsラッセル
続いて、ハミルトンのラッセルに対するペースを示す。
予選
2024年:vs ラッセル 3勝14敗(+0.178秒差)
2023年:vs ラッセル 9勝10敗(-0.010秒差)
2022年:vs ラッセル 8勝3敗(-0.029秒差)
レースペース
2024年:vs ラッセル 5勝3敗3引き分け(0.0秒差)
2023年:vs ラッセル 12勝2敗(-0.2秒差)
2022年:vs ラッセル 11勝2敗(-0.2秒差)
最初の2年は、予選で互角、レースペースで0.2秒差と、綺麗に安定した傾向が見られた。しかしハミルトンはメルセデス最終年の2024年に苦戦。予選とレースペース共に一気に0.2秒下に並行移動した。ラッセルはウィリアムズで十分に経験を積んで同じパワーユニットのメルセデスに移籍しており、2022, 23年のデータの方を両者全力での比較と考えるのが自然だろう。よってハミルトンが総合的に0.1秒速いと結論づけられる。
一方で、2024年のデータを基準にすれば、ハミルトンはラッセルの0.1秒落ちとなり、自身のベストの状態から0.2秒落ちたことになる。
7. ルクレールvsハミルトン
ルクレールはハミルトンに対して以下の差をつけた。
予選
2025年:vs ハミルトン 18勝5敗(-0.186秒差)
レースペース
2025年:vs ハミルトン 6勝0敗2引き分け(-0.2秒差)
前述の通り、ルクレールをフェルスタッペンと並ぶ最高峰クラスとすると、パート1で得られた結論「フェルスタッペン、アロンソ、ハミルトンは最高峰クラスで互角ペース」と合わせて、彼がベストな状態のハミルトンと互角であることが分かる。そのルクレールがハミルトンに対して0.2秒の差をつけたという事実は、メルセデス最終年に突如としてハミルトンのペースが0.2秒鈍ったことと合致する。移籍前ゆえの苦戦と移籍直後の適応における苦戦がたまたま0.2秒だったのか、ハミルトン自身の力が落ち始めているのかは、今年ハミルトンがルクレールと互角のスピードを見せるのか、昨年と変わらない傾向が続くのかによって分かるだろう。
8. アロンソvsストロール
年齢による競争力低下と言えば、興味が出てくるのがアロンソだ。ここ3年のストロールとの比較を示す。
予選
2025年:vs ストロール 16勝0敗(-0.282秒差)
2024年:vs ストロール 16勝3敗(-0.301秒差)
2023年:vs ストロール 15勝2敗(-0.436秒差)
レースペース
2025年:vs ストロール 6勝2敗(-0.2秒差)
2024年:vs ストロール 13勝1敗1引き分け(-0.3秒差)
2023年:vs ストロール 15勝1敗(-0.4秒差)
移籍初年度には0.4秒という圧倒的な差をつけたが、その後は差が詰まってきている。
9. ストロールvsペレス
そもそもパート1で得られた結論を前提とすれば、アロンソはペレスより0.3秒速いはずだ。よって、ペレスとストロールを比較することで、アロンソとストロールの比較をより高い解像度で見ることができる。
ストロールのペレスに対するペースは以下の通り。
予選
2020年:vs ペレス 1勝8敗(+0.200秒差)
2019年:vs ペレス 1勝17敗(+0.259秒差)
レースペース
2020年:vs ペレス 1勝0敗(-0.8秒差)
2019年:vs ペレス 0勝4敗(+0.3秒差)
基本的には、ペレスから0.3秒遅れを取っている。
よって、アロンソはストロールに0.6秒の差をつけて然るべきだ。それが0.4秒差からスタートし、現在は0.2秒差になっている。これをストロールの成長と見るか、アロンソの衰えと見るか、他要因(差がつきにくいマシン特性など)によって差がつきにくくなっていると見るかは、判断の分かれるところだろう。
ストロールはベッテルに対して0.1秒弱の遅れに抑えており、ベッテルはベストな状態ではアロンソの0.2秒落ち前後であることが、パート1で結論づけられている。よって、アストンマーティン時代のベッテルがスピード面で全力を出せていたとするならば、現在のアロンソもそう衰えてはいないことになり、ベッテルの力がある程度落ちていたとするならば、それと同等の程度でアロンソのスピードも落ちてきていることになる。
この辺りの真相はもう一度チームメイトが変わり、ストロールの現在の力が明らかになるか、アロンソがフェルスタッペンなどと組んで互角にやり合えるか、という展開にならないと分かってこないだろう。
ただし、現時点でのストロールとの0.2秒差を100%アロンソの腕の衰えによるものとして見ると、最高峰クラスから0.4秒落ちということになり、そのレベルのドライバーが2025年の成績を残せたとは考えにくいため、それは考えにくいのも確かだ。
10. ガスリーvsオコン
最後にガスリーについて見ていこう。
予選
2024年:vs オコン 10勝7敗(-0.104秒差)
2023年:vs オコン 12勝5敗(-0.065秒差)
レースペース
2024年:vs オコン 4勝1敗2引き分け(-0.2秒差)
2023年:vs オコン 6勝1敗2引き分け(-0.1秒差)
トータルでガスリーが0.1秒ほど上回っている。
ちなみに、この直前のオコンのチームメイトがアロンソで、アロンソはオコンに0.2~0.3秒差をつけた。よって、アロンソは2022年時点では最高峰クラスのスピードを維持していた可能性が高く、ガスリーはそこから0.1~0.2秒落ちの非常に速いドライバーと考えるのが最も自然だろう。また、翌年に急激に衰えるとも考えにくいため、ストロールはペレスと組んでいた時代と比べて、少なくとも0.2秒速いドライバーとして2023年を迎えていたことが推測される。
11. 結論
分析の結果、以下の結論を得た。
- アロンソ、ハミルトン、フェルスタッペン、ルクレール、ノリスは、それぞれのベストな状態では非常に近いスピードを有しており、最高峰クラスにいると考えられる。
- アロンソ、ハミルトンは、現在は力を落としている可能性があるが、今後の状況次第で解釈は不透明。
- ピアストリは最高峰クラスから0.1秒以内の差、ラッセルは0.1秒程度の差、サインツは0.1秒強、ガスリーも0.1~0.2秒程度の差と考えられ、彼らもまた非常に速いドライバーと言える。
- ストロールは、2020年時点では最高峰クラスから0.6秒落ちだったが、2023年時点では0.4秒付近まで縮めていたと考えられる。現在ではアロンソとの差がそこから0.2秒ほど詰まっているが、彼自身の前進と見るべきかは不透明。
このように、大まかにドライバーの力を解釈することができる。また、これを元に各年、各時期、各レース単位で見ていくと、いつ誰が突出したパフォーマンスを見せたのかも分かるようになってくるだろう。
Takumi