当サイトでは幾度かにわたり歴代ドライバーの競争力分析を行ってきた。
これらは、予選およびレースペースについてチームメイト比較を見ていくことで、各ドライバーが移籍を繰り返していく中で、直近20年程度のドライバーの競争力について明らかにしようという試みだった。
これはこれで有用なものではあったが、どうしても比較を繰り返していく中で誤差が伝播していくこと、また定量的な比較に固執することで本質を見落とすリスクを負うことが問題であった。
そこで今回は2026年シーズン開幕前という機会に乗じて、それらをもう少し範囲を絞りつつ、定性的な考察にも重きを置いて、改めて比較を行なっていくこととする。今回のパート1では、ライコネン、マッサから始まり、シューマッハやアロンソ、ベッテル、あるいはハッキネンなどについても見ていきたい。
1. ライコネンvsマッサ
まずライコネンのデータの中で信頼のおける安定したデータがこちらだ。
予選
2009年:vs マッサ 7勝1敗(-0.283秒差)
2008年:vs マッサ 3勝7敗(+0.124秒差)
2007年:vs マッサ 3勝6敗(+0.108秒差)
レースペース
2009年:vs マッサ 1勝4敗(+0.2秒差)
2008年:vs マッサ 7勝3敗1引き分け(-0.1秒差)
2007年:vs マッサ 6勝0敗1引き分け (-0.1秒差)
2007, 08年は予選で0.1秒遅れを取り、レースペースで0.1秒上回った。逆に2009年には予選重視型になったが、予選で0.3秒上回りつつ、レースペースで0.2秒負けることになった。トータルで見れば互角と言って良いだろう。
2. アロンソvsマッサ
対してアロンソがそのマッサに対してつけた差が以下の通りだ。
予選
2013年:vs マッサ 6勝5敗(-0.173秒差)
2012年:vs マッサ 15勝1敗(-0.335秒差)
2011年:vs マッサ 14勝3敗(-0.373秒差)
2010年:vs マッサ 11勝2敗(-0.306秒差)
レースペース
2013年:vs マッサ 13勝0敗(-0.6秒差)
2012年:vs マッサ 10勝2敗2引き分け(-0.4秒差)
2011年:vs マッサ 11勝1敗(-0.5秒差)
2010年:vs マッサ 9勝0敗(-0.4秒差)
2013年にアロンソが相対的にレースペース型、マッサが予選型になったが、基本的には0.4秒の差と見て良いだろう。よって、この時点でアロンソはライコネンとマッサよりも0.4秒ほど速かったと考えることができる。
3. アロンソvsライコネン
だが、これだけでは足りない。他の角度からも見てみよう。まずは2014年のアロンソとライコネンの直接対決だ。
予選
2014年:vs ライコネン 11勝1敗(-0.442秒差)
レースペース
2014年:vs ライコネン 9勝2敗1引き分け(-0.3秒差)
1年限りのもので、ライコネンにとってはフェラーリ復帰初年度だったため、ややクエスチョンマークがつくが、ライコネンは2007年の移籍時も適応に問題は抱えておらず、大規模なレギュレーション変更もあったため、ある程度信頼して良いと思われる。
その上で数値を見ると、基本的には0.3~0.4秒程度の差であり、先ほどのマッサを介した比較計算(0.4秒差)と合致するデータだ。
4. シューマッハvsマッサ
予選
2006年:vs マッサ 10勝0敗(-0.49秒差)
レースペース
2006年:vs マッサ 13勝1敗1引き分け(-0.4秒差)
マッサの移籍初年度ではあるが、むしろシーズン序盤の適応に苦しんでいたのはシューマッハの方で、シューマッハが適応すると無双状態になるという展開だった。ほぼ両者力を発揮したと考え、シューマッハとマッサの差は0.4~0.5秒程度。ここまでの知見と総合すると、アロンソとシューマッハのペースは非常に近いことが分かる。
5. シューマッハvsバリチェロ
さて、この知見の確度を確かめたい。そこでまずはシューマッハとバリチェロを比較し、バリチェロとバトン、バトンとアロンソという手順を踏むこととする。
予選
2005年:vs バリチェロ 7勝1敗(-0.36秒差)
2004年:vs バリチェロ 11勝0敗(-0.38秒差)
2003年:vs バリチェロ 7勝1敗(-0.24秒差)
2002年:vs バリチェロ 13勝4敗(-0.227秒差)
2001年:vs バリチェロ 15勝1敗(-0.548秒差)
2000年:vs バリチェロ 15勝2敗(-0.358秒差)
レースペース
2005年:vs バリチェロ 3勝0敗(-0.3秒差)
2004年:vs バリチェロ 9勝1敗(-0.3秒差)
2003年:vs バリチェロ 4勝0敗(-0.4秒差)
2002年:vs バリチェロ 7勝1敗(-0.3秒差)
2001年:vs バリチェロ 7勝0敗1引き分け(-0.4秒差)
2000年:vs バリチェロ 7勝0敗(-0.5秒差)
2000, 01年のシューマッハとバリチェロの差は0.4~0.5秒程度あるが、2002年以降は0.3秒程度と少し差が詰まっている。2000, 01年は他チームに対してスピード面で厳しい戦いを強いられており、シューマッハが攻めた走りを見せた可能性、尖ったマシン特性で差がついた可能性、あるいはチームのリソースがよりシューマッハ寄りであった可能性が考えられるが、ひとまずトータルで0.3~0.4秒と考えよう。
6. バトンvsバリチェロ
予選
2009年:vs バリチェロ 6勝7敗(-0.007秒差)
2008年:vs バリチェロ 8勝9敗(-0.10秒差)
ヨーロッパGP、シンガポールGPを除き 5勝9敗(+0.01秒差)
2007年:vs バリチェロ 8勝8敗(-0.05秒差)
マレーシアGPを除き 7勝8敗(+0.01秒差)
2006年:vs バリチェロ 2勝8敗(+0.01秒差)
トルコGPを除き 1勝8敗(+0.17秒差)
レースペース
2009年:vs バリチェロ 5勝3敗3引き分け(-0.1秒差)
2008年:vs バリチェロ 3勝4敗(0.0秒差)
2007年:vs バリチェロ 3勝4敗(0.0秒差)
2006年:vs バリチェロ 6勝0敗1引き分け(-0.4秒差)
2006年はバリチェロにとって移籍初年度で、レースペースの不調は異常値と見なすことができる。その後の3年間は基本的に互角、2009年のレースペースのみ僅差でバトン優勢となった。トータルで見れば、両者が力を発揮した状態では、互角と見るべきだろう。
これはバトンがシューマッハの0.3~0.4秒落ち程度であることを意味する。
7. アロンソvsバトン
そのバトンとアロンソの比較が以下の通りだ。
予選
2016年:vs バトン 13勝2敗(-0.231秒差)
2015年:vs バトン 7勝5敗(-0.056秒差)
レースペース
2016年:vs バトン 5勝1敗(-0.2秒差)
2015年:vs バトン 4勝0敗1引き分け(-0.2秒差)
移籍初年度のアロンソが予選のみ苦戦しているが、他は綺麗に0.2秒の差がついている。ここはアロンソがバトンに対して0.2秒優勢と捉えて問題ないだろう。
よって、ここまでを総合すると、シューマッハはアロンソより0.1~0.2秒速いと見るのが妥当だろう。これはマッサを介した比較よりもシューマッハに有利なものだ。これについて、単なる腕以外の要因としては、前述の通りバリチェロ時代(特に初期)はチーム内がシューマッハを優先する環境にあったことや、マシン特性によって差が拡大した可能性などが挙げられる。これらを踏まえた上で、2002年以降のデータを基準にすれば、バリチェロを介した比較でシューマッハがアロンソより0.1秒速く、マッサを介した比較では0.0~0.1秒といったところであり、実際はこの近辺が落とし所なのではないだろうか。また、この段階でもまだシューマッハ中心のチーム作りであったことは確かだろう。
8. アロンソvsハミルトン
まずアロンソとハミルトンの比較を行う。最初に2007年の直接比較を行い、それからバトンを介した比較結果と照らし合わせ、その妥当性を吟味する。その上でハミルトンとボッタス、ボッタスとマッサと比較していく。
まず2007年のアロンソのハミルトンに対するペースは以下の通りである。
予選
2007年:vs ハミルトン 7勝5敗1引き分け(+0.01秒差)
レースペース
2007年:vs ハミルトン 9勝5敗(-0.1秒差)
レースペースでアロンソが上回ったが、非常に僅差だ。とはいえ、ハミルトンはルーキーイヤー、アロンソも移籍初年度であり、この時点では軽く疑問符をつけておいた方が賢明だろう。
9. ハミルトンvsバトン
予選
2012年:vs バトン 15勝1敗(-0.272秒差)
2011年:vs バトン 12勝5敗(-0.167秒差)
2010年:vs バトン 12勝2敗(-0.282秒差)
レースペース
2012年:vs バトン 4勝4敗4引き分け(-0.1秒差)
2011年:vs バトン 6勝4敗2引き分け(-0.1秒差)
2010年:vs バトン 6勝1敗(-0.2秒差)
ハミルトンが予選では0.2~0.3秒差と差をつけたが、レースペースでは0.1~0.2秒差と接戦。トータルで見れば0.2秒程度の差と見ることができるだろう。
バトンに対して0.2秒差というのは、第7項で得られたアロンソのペースと全く同じだ。以上の比較より、アロンソとハミルトンがペース面で互角であるという解釈が非常に妥当であると言える。
10. ハミルトンvsボッタス
ハミルトンのボッタスに対するペースは以下の通り。
予選
2021年:vs ボッタス 13勝5敗(-0.157秒差)
2020年:vs ボッタス 9勝5敗(-0.119秒差)
アブダビGPを除き 9勝4敗(-0.133秒差)
2019年:vs ボッタス 14勝7敗(-0.122秒差)
2018年:vs ボッタス 12勝5敗(-0.160秒差)
2017年:vs ボッタス 12勝5敗(-0.239秒差)
レースペース
2021年:vs ボッタス 13勝0敗(-0.4秒差)
2020年:vs ボッタス 6勝1敗1引き分け(-0.1秒差)
アブダビGPを除き 6勝0敗1引き分け(-0.2秒差)
2019年:vs ボッタス 8勝2敗(-0.2秒差)
スペインGP以降 7勝0敗(-0.3秒差)
2018年:vs ボッタス 7勝0敗3引き分け(-0.2秒差)
2017年:vs ボッタス 8勝1敗2引き分け(-0.4秒差)
ハミルトンがレースペース重視型になっており、予選でのタイム差は小さく、レースペースで大差がついている。トータルでは0.2~0.3秒といったところだ。
11. ボッタスvsマッサ
ボッタスのマッサに対するペースは以下の通り。
予選
2016年:vs マッサ 14勝3敗(-0.188秒差)
2015年:vs マッサ 8勝6敗(-0.029秒差)
2014年:vs マッサ 8勝3敗(-0.192秒差)
レースペース
2016年:vs マッサ 2勝1敗3引き分け(0.0秒差)
2015年:vs マッサ 6勝2敗1引き分け(-0.1秒差)
2014年:vs マッサ 3勝4敗2引き分け(0.0秒差)
トータルで0.1秒ほどマッサより速いと言えるだろう。つまり、ハミルトンはマッサより0.3~0.4秒速いことになり、アロンソがマッサに0.4秒差つけていることを踏まえれば、アロンソとハミルトンが近いレベルにいることが、この角度からも確認できる。
12. ライコネンvsクルサード
続いてライコネンからクルサードを通じて、何人かの競争力について考えてみよう。まずはライコネンとクルサードの比較だ。
予選
2004年:vs クルサード 6勝2敗(-0.249秒差)
2003年:vs クルサード 7勝0敗(-0.604秒差)
2002年:vs クルサード 10勝7敗(-0.052秒差)
レースペース
2004年:vs クルサード 1勝0敗(-0.5秒差)
2003年:vs クルサード 3勝1敗1引き分け(-0.2秒差)
2002年:vs クルサード 1勝0敗(-0.3秒差)
非常に読みづらいが、2002年のライコネンの予選が遅いことは、F1での2年目で移籍初年度、2003年のクルサードの予選の不調は、レギュレーション変更に伴う異常値として見ると、基本的には0.3秒差程度と見ることができる。
13. ハッキネンvsクルサード
続いて、ハッキネンをクルサードと比較する。
予選
2001年:vs クルサード 1勝0敗(-0.3秒差)
2000年:vs クルサード 3勝0敗(-0.3秒差)
レースペース
2001年:vs クルサード 8勝8敗(-0.078秒差)
2000年:vs クルサード 10勝6敗(-0.136秒差)
1999年:vs クルサード 13勝2敗(-0.282秒差)
1998年:vs クルサード 12勝3敗(-0.311秒差)
1997年:vs クルサード 11勝6敗(-0.164秒差)
1996年:vs クルサード 12勝4敗(-0.258秒差)
年によって変動しているが、0.3秒程度の差であることが多く、ハッキネンとライコネンが同じようなレベルにいたことが推察できる。彼らはアロンソらの0.4秒落ち、そしてクルサードは0.7秒落ちとなる。
14. ウェバーvsクルサード
続いてウェバーがクルサードにどれだけの差をつけたかを見る。
予選
2008年:vs クルサード 13勝2敗 (-0.334秒差)
2007年:vs クルサード 9勝2敗(-0.232秒差)
レースペースのデータが無いが、予選では2年間で0.3秒程度の差で完勝している。
この時点で、ウェバーをアロンソらの0.4秒落ち、すなわちライコネンやハッキネンと同格と見なすことができる。
15. ベッテルvsウェバー
続いて、ベッテルのウェバーに対する競争力を見てみよう。
予選
2013年:vs ウェバー 9勝2敗(-0.175秒差)
2012年:vs ウェバー 9勝6敗(-0.111秒差)
2011年:vs ウェバー 14勝3敗(-0.353秒差)
2010年:vs ウェバー 11勝6敗(-0.074秒差)
2009年:vs ウェバー 11勝2敗 (-0.203秒差)
レースペース
2013年:vs ウェバー 10勝3敗1引き分け(-0.2秒差)
2012年:vs ウェバー 10勝1敗(-0.2秒差)
2011年:vs ウェバー 7勝1敗3引き分け(-0.2秒差)
2010年:vs ウェバー 0勝3敗2引き分け(+0.3秒差)
2009年:vs ウェバー 4勝1敗(-0.1秒差)
2010年は予選で僅差、レースペースでウェバー優勢となっているが、それを除けば、基本的にはベッテルが0.2秒ほど速いと考えて良いだろう。これを踏まえると、ベッテルをアロンソらの0.2秒落ちと考えることができる。
16. ベッテルvsライコネン
そのベッテルはライコネンに対して以下のようなペースを示した。
予選
2018年:vs ライコネン 14勝2敗(-0.166秒差)
2017年:vs ライコネン 15勝3敗(-0.295秒差)
2016年:vs ライコネン 8勝10敗(-0.023秒差)
2015年:vs ライコネン 9勝2敗(-0.279秒差)
レースペース
2018年:vs ライコネン 7勝1敗1引き分け(-0.2秒差)
2017年:vs ライコネン 8勝1敗3引き分け(-0.3秒差)
オーストラリア、ベルギーGPを除き6勝1敗3引き分け(-0.1秒差)
2016年:vs ライコネン 6勝2敗1引き分け(-0.1秒差)
2015年:vs ライコネン 10勝1敗1引き分け(-0.2秒差)
勝敗数で見ても2016年は少し極端な1年となっている。ここまでのデータからもライコネンは如何なる条件でも自身のペースを安定して発揮していることが示唆され、一方でベッテルは2010年のように(或いは後述する2014年のように)、時折適応しきれない条件があることが推察できる。よって、2016年の予選もベッテル側が苦戦したと考えるのが自然かもしれない。
その上で、他の条件下での比較を見ると、全体として、ベッテルがライコネンを0.2秒上回ったと読める。これは、「ライコネンはアロンソの0.4秒落ち」と、第12~15項で導いた「ベッテルはアロンソの0.2秒落ち」と完全に整合する。よって、これらの分析にはかなりの確度があると考えて良いだろう。
17. リカルドvsベッテル
リカルドのベッテルに対するペース差は以下の通り。
予選
2014年:vs ベッテル 6勝4敗(-0.107秒差)
レースペース
2014年:vs ベッテル 6勝2敗2引き分け(-0.2秒差)
これを額面通り受け取ると、リカルドはベッテルより0.1~0.2秒速く、すなわちアロンソから0.0~0.1秒落ちとなる。しかし前述の通り、この1年だけでは、ベッテルにとって過剰に不利な数値が出てしまっている可能性があり、ひとまず置いておこう。
18. フェルスタッペンvsリカルド
リカルドをアロンソの0.0~0.1秒落ちとした場合に、フェルスタッペンがどうなるのか見てみよう。フェルスタッペンのリカルドに対するペースは以下の通りだ。
予選
2018年:vs リカルド 10勝3敗(-0.155秒差)
2017年:vs リカルド 9勝6敗(-0.135秒差)
2016年:vs リカルド 6勝8敗(+0.062秒差)
レースペース
2018年:vs リカルド 5勝1敗(-0.1秒差)
2017年:vs リカルド 3勝0敗1引き分け(-0.1秒差)
2016年:vs リカルド 5勝3敗3引き分け(0.0秒差)
移籍2年目以降で見れば、0.1秒、或いはそれ以上の差をつけたと言って良いだろう。となると、フェルスタッペンはアロンソを0.1秒近く上回ることになる。
19. リカルドvsヒュルケンベルグ
では仮定したリカルドのペースの妥当性について、別角度から吟味しよう。基準はヒュルケンベルグだ。
予選
2019年:vs ヒュルケンベルグ 13勝6敗(-0.061秒差)
レースペース
2019年:vs ヒュルケンベルグ 2勝0敗1引き分け(-0.1秒差)
1年のみでレースペースのサンプル数が少ないのが気にかかるが、基本的には0.1秒リカルドが優勢だったと見て良いだろう。
その上でヒュルケンベルグのペースを把握していこう。
20. ヒュルケンベルグvsペレス
ヒュルケンベルグはペレスとの比較データが豊富にある。
予選
2016年:vs ペレス 10勝9敗(+0.012秒差)
2015年:vs ペレス 9勝6敗(-0.083秒差)
2014年:vs ペレス 7勝5敗(-0.087秒差)
レースペース
2016年:vs ペレス 2勝3敗1引き分け(0.0秒差)
2015年:vs ペレス 3勝5敗3引き分け(+0.1秒差)
2014年:vs ペレス 4勝6敗1引き分け(0.0秒差)
予選のヒュルケンベルグ、レースのペレスという傾向はあるが、トータルで互角と考えて良い。両者とも毎年安定して力を発揮しており、極めて信頼できるデータだ。
21. ペレスvsオコン
そのペレスはオコンに対して以下のようなペースを示した。
予選
2018年:vs オコン 4勝11敗(+0.121秒差)
2017年:vs オコン 13勝6敗(-0.077秒差)
レースペース
2018年:vs オコン 2勝1敗1引き分け(0.0秒差)
2017年:vs オコン 4勝2敗1引き分け(-0.1秒差)
オコンが2年目にペースを上げているのが伺える。したがって2018年のデータの方を見ると、オコンが0.0~0.1秒上回っていたと言えるだろう。
22. アロンソvsオコン
そしてアロンソとオコンの比較を行う。
予選
2022年:vs オコン 5勝5敗(-0.097秒差)
2021年:vs オコン 10勝9敗(+0.003秒差)
アゼルバイジャンGP以降 10勝5敗(-0.154秒差)
レースペース
2022年:vs オコン 12勝3敗(-0.4秒差)
2021年:vs オコン 7勝2敗3引き分け(-0.3秒差)
シュタイヤーマルクGP以降 6勝0敗2引き分け(-0.4秒差)
予選のオコン、レースペースのアロンソとなっているが、トータルでアロンソが0.2~0.3秒ほど上回っている。
リカルドがアロンソの0.0~0.1秒落ちという前提だと、ヒュルケンベルグはアロンソの0.1~0.2秒落ち、ペレスも同様、オコンは0.1秒落ちとなる。よって、この前提は間違っている可能性が高くなってきた。
23. ペレスvsバトン
さらにもう一つ、別の角度から見てみよう。1年のみになるが、ペレスはバトンに対して以下のようなペースを見せた。
予選
2013年:vs バトン 7勝6敗(+0.028秒差)
レースペース
2013年:vs バトン 3勝7敗2引き分け(+0.2秒差)
トータルでバトンの0.1秒落ちと評して良いだろう。
ここで、バトンがアロンソが0.2秒落ちであることは明らかであるため、ペレスがアロンソの0.3秒落ちであることが示唆される。これも、リカルドをアロンソの0.0~0.1秒落ちと仮定した上でのペレスの評価とは矛盾し、オコンを介したアロンソとの比較と整合する。
よってこちらを前提とすると、今度はリカルドがアロンソの0.2秒落ちとなり、フェルスタッペンはアロンソの0.0~0.1秒落ち程度になる。ただし、今度は「”レッドブルのリカルド” と “ルノー1年目のリカルド” が同じだったのか?」という問題が出てくる。
24. フェルスタッペンvsペレス
アロンソとペレスの差が0.3秒であることは、かなりハッキリと示された。ならばフェルスタッペンとペレスの差を見てみよう。
予選
2024年:vs ペレス 16勝1敗 (-0.433秒差)
2023年:vs ペレス 11勝0敗 (-0.396秒差)
2022年:vs ペレス 13勝3敗(-0.284秒)
2021年:vs ペレス 17勝1敗(-0.403秒差)
レースペース
2024年:vs ペレス 11勝1敗(-0.4秒差)
2023年:vs ペレス 15勝0敗1引き分け(-0.3秒差)
2022年:vs ペレス 10勝1敗2引き分け(-0.2秒差)
2021年:vs ペレス 15勝0敗1引き分け(-0.4秒差)
トータルでフェルスタッペンが0.3~0.4秒ほど上回った。したがって、これを素直に受け取ると、フェルスタッペンはアロンソよりも0.0~0.1秒ほど速いと見ることができる。
この場合、リカルドもアロンソの0.1秒落ち程度に落ち着き、納得の位置と言えるだろう。
24. ペース比較の結論
分析の結果、以下の結論を得た。
- シューマッハはアロンソ、ハミルトンらに0.1秒、フェルスタッペンもそれに近い差をつけて現役最速となった。ただし、シューマッハについてはフェラーリで、フェルスタッペンについてはレッドブル内でのナンバーワン待遇やプロジェクトの中心人物としてのアドバンテージが大きかったことも考えられる。マシンもオーバーステア特性で、チームメイトにとっては乗りづらかった点も共通している。したがって、それらを差し引くならば、シューマッハ、アロンソ、ハミルトン、フェルスタッペンは同等レベルのスピードを有しており、これが生物学的人間が到達できる最高レベルの競争力である可能性が高い。一方で、それらの影響は最小限で、実際にシューマッハやフェルスタッペンが頭一つ抜けている可能性も否定はしきれないだろう。
- リカルドは、そこから0.1秒落ちと考えられる。
- ベッテルやバトン、バリチェロは、最高峰クラスから0.2秒落ち、オコンは0.2~0.3秒落ちとなった。
- ペレス、ヒュルケンベルグ、ボッタスは、最高峰クラスから0.3秒落ち。
- ライコネン、ハッキネン、ウェバー、マッサらは、最高峰クラスから0.4秒落ち。
- クルサードは0.7秒落ち。
これらはそれぞれのドライバーの平均的なパフォーマンスレベルを示したものだ。逆に言えば、バリチェロに0.4~0.5秒の差をつけた2000, 01年のシューマッハ、ペレスに0.4秒以上の差をつけた2021, 24年のフェルスタッペンのパフォーマンスは、難しいマシンを手懐けた形跡と考えられ、特筆に値する。
また、アロンソやライコネン、マッサらは、どの年にも安定して自身の力を発揮し続けたと解釈でき、この点も興味深い。また、ベッテルは2010, 14, 16年など、時折適応が難しい条件があるように見受けられる。
そしてバリチェロは、シューマッハという強力なチームメイトの存在によって分かりづらくなったが、本来はバトンやベッテルといったチャンピオンと肩を並べるスピードがあったことも確認できた。2009年もシーズンを通して見ればバトンと互角だったが、マシンに競争力があった前半戦にバトンに対して劣勢で、マシンの競争力が落ちた後半戦で優勢という傾向であったため、ポイントでは破れる形となった。
次回のパート2では、今回の知見に根差して、近年のドライバーに着目する。
Takumi