現在の予選ではノックアウト方式が採用されている。しかしトラフィックの問題は根深く、最終コーナー手前で列を成している車によってアタック中のマシンが妨害される形になったり、アタックの順番待ちでタイヤの温度管理が難しかったりと、課題は山積みだ。
フェルナンド・アロンソは一発アタック方式に戻すべきだと主張しており、筆者もこの意見に賛成だ。
Alonso blasts “obsolete” F1 qualifying despite Singapore rule tweak
一発アタックならばトラフィックに出くわす事はなく、アウトラップでも自分のペースでタイヤを温めることができる。他のマシンがどのように振る舞うかという運の要素(自分でコントロールできず再現性がない要素)を排除した真の実力勝負ができるのだ。
しかし本当にそうだろうか?
無論、通常の路面コンディションが改善していく状況を想定すれば、一発アタックでは1番目に出走するドライバーよりも20番目に出走するドライバーの方が圧倒的に有利だ。2005年のハンガリーGPで序盤に出走したライコネンは、当時純粋なスピードでは現在のレッドブル+フェルスタッペン並に毎戦圧倒的な強さを誇っていたが、軽めの燃料搭載量にも関わらず予選4番手となってしまった。
しかし、筆者は路面コンディションは無限に改善していくものでは無いことに着目すべきだと考える。
図1のように、始めは路面が劇的に良くなっていく(A)が、ここで一発アタックをやると出走順による有利不利が如実に出てしまう。したがって頭打ちになって来たところ(B)で予選を始めれば良い。
実際に現在のノックアウト方式でもQ1の1回目と2回目のアタックには大きな差があるが、Q2やQ3では少しのミスでセクタータイムが黄色表示になることもしばしばある。それだけ路面コンディションが安定してきているということだ。いわゆる「サチる」である。このタイミングで予選を始めれば、出走順による有利不利の差を最小限に抑えられると考えられる。
これを実現するには2つの方法がある。
・FP3終了後、すぐに(10分程度)予選を始める。
・予選セッションの最初に「予選ウォームアップ走行」を行う。
前者はFP3が終わった直後であれば、路面の状態もまだ良いと考えられる。ある意味ありきたりな考え方だが、FP3の終了から予選までを2時間開けなければならないという点に触れてしまう。セットアップの変更やダメージの修復、あるいはデータ分析など、本来やるべきことが出来ないのは問題だ。
一方で、後者は上手くやれば良いアイディアになり得るかもしれない。
例えば、予選セッションの前に15分走行でき、2セットのタイヤを使える(2セットともセッション終了後に回収)としよう。またウォームアップから予選開始までの間に、車高やサスペンション周りなどの一部のセットアップ変更も許可すれば良い。こうすれば、ほとんどのドライバーはウォームアップを走るだろう。
すると逆にFP3では、ショートランよりもロングランを行うインセンティブが強くなるかもしれない。ここでもソフトタイヤの本数を減らすことができ、環境負荷低減の取り組みにおいても有効だろう。
あくまで一アイディアに過ぎず、現場をよく知る人間によるブラッシュアップは必要であろうが、こうした方向性も考慮してみるのもアリなのではないだろうか?
Writer: Takumi
〜おまけ〜
余談だが、アロンソはQ3での強さという点でルクレールやフェルスタッペンほどの決定力はない。2006年以降、時折小さなミスをして自己ベストを更新しきれないケースがあり、それは当サイトの競争力分析にも現れている。
アロンソ自身もこの弱点を理解していると考えられ、一方で一発予選では2005年にフィジケラに大差をつけており、自信があると思われる。アロンソはリスクテイキングをコントロールすることに長けており、一発予選では正にそれが求められるため、この傾向は頷ける。
本人が意識して発言したかは不明だが、そうした背景も踏まえて今回の発言を読むと、少しばかり味わいが変わってくるかもしれない。