• 2024/11/22 02:57

【スペインGP】FP2ロングラン分析

Bytakumi

5月 21, 2022 ,

 スペインGPのFP2が行われ、各車がロングランに励んだ。本ページでは、各車のロングランデータから可能な限りの情報を引き出してみよう。

1. 各チームのロングラン比較

 まずは各チームの代表的なドライバー同士を比較する。まず図1にミディアムタイヤでのロングランを行ったドライバー達のペースを示す。

図1 ミディアムタイヤでのロングラン

 フェルスタッペンが圧倒的なペースを示しているが、これを実力と見るべきではないだろう。

 走り始めでルクレールに対して0.5秒程度、10周ほど走ると0.7~0.8秒程度のペース差がある。フューエルエフェクトを0.06[s/lap]程度とすると、10周強の差でそのペース差になるので、レッドブルはソフトタイヤスタートで第1スティントが10周前後になる展開を予想しているのかもしれない。

 他のドライバー達に目を向けると、殆どは第1スティント前提の燃料満タン状態でのロングランに見える。

 今回のメルセデスの速さが本物かどうかは蓋を開けて見ないと分からないが、もしこのラッセルのペースが第1スティント前提の燃料搭載量であれば、ルクレールからそこまで大差はつけられていないと言え、非常に競争力が高い。逆に第2スティント前提で10周ほど軽いとすると、前述の通りルクレールより0.6秒以上遅いペースとなり、ここまで5戦でのレースペースの平均0.8秒落ちと同じくらいの競争力ということになる。メルセデス復活か否か?決勝での答え合わせが楽しみな要素だ。

 中団ではアロンソがルクレールの1.0秒落ち程度で、最も競争力が高かった。一方ベッテルや角田は走り始めはアロンソに匹敵するが、デグラデーションが大きかった。特に角田の方が、より顕著なデグラデーションに見舞われていると言えるかもしれない。

 シューマッハのタイムの推移は解釈が難しいが、均して見ればベッテルに近い競争力と見て良いだろう。

 また、アルボンはアロンソから1.8秒落ちのペースでしばらく推移しており、かなり競争力に乏しいようにも見えるが、8周目以降タイムを上げており、ある程度マネジメントしてのこのペースなのかもしれない。

 続いてソフトタイヤでロングランを行ったドライバー達を見てみよう。

図2 ソフトタイヤでのロングラン

 ペレスのペースはサインツに対して圧倒的優位というわけではなく、やはりこの2人は第1スティント前提の燃料満タン状態、ミディアムではルクレールが満タンに対してフェルスタッペンが第2スティント前提で軽かったと見るのが自然であろうことが確認できる。

 その上で、走り始めはサインツの方が0.3秒ほど速そうだが、10周しないうちに互角になってきている。第1スティントが15周程度ならばトータルで見て互角となりそうな推移と言えるだろう。

 ガスリーは走り始めはペレスの0.5秒落ち程度とかなり競争力がありそうだが、7周もすれば1.0秒前後のペース差になるような推移だ。とはいえ、ミディアムで中団トップのアロンソがルクレールの1.0秒落ち程度だったことを考えれば、今回のアルファタウリはアルピーヌと共に中団トップを争う力はあるかもしれない。

 ベッテルはソフトでも熱心なロングランに励んだ。タイムの推移をどう見るかは難しいところだが、ペレスの0.9~1.0秒落ちのペースと見るならば、アルファタウリのやや後ろかもしれない。

 ジョウのタイムの推移も解釈しづらいが、ベッテルの0.5秒落ち程度だろう。ただしボッタスがジョウを明確に上回る今季ここまでの展開を考えれば、ボッタスがベッテルの上にくる可能性は十分にある。

 リカルドは3周しか無いが、走り始めはガスリーと大差ないペースだ。また、マグヌッセンも4周しかないが、0.5秒落ち程度となっている。この2チームは、この後周回を続けた場合にどういった推移になるかが不明だが、マクラーレンにそこそこのペースがあり、ハースは中団トップを狙うには少し厳しそうなのは伺えるだろう。

 ウィリアムズはこちらのソフトでもラティフィが中団勢から1秒、2秒と離されており、かなり厳しそうだ。ただし、ミディアムのアルボン同様に、8周目あたりからタイムを上げており、タイヤを持たせる点ではかなり優れているように見える。

2. 予想されるレース展開

 レース展開を占うために、2強のロングランペースを図3のような形で示した。

図3 ルクレール、サインツ、ペレス、フェルスタッペンのレースペース

 満タンでロングランを行ったと考えられるのがルクレール、サインツ、ペレスだが、ルクレールのみミディアムタイヤだ。フェルスタッペンは第2スティント前提の燃料搭載量と考えられ、タイヤはミディアムとなっている。

 サインツとルクレールを比較すると、走り始めはソフトの方が速いものの、途中から逆転する形になっている。ただし、ソフトタイヤもマネジメントして走ればデグラデーションを抑えられ、ルクレールとペレスは絶対的なペースのレベルも、ラップタイムの推移も似たようなものになっている。よってこのデータからは、スタートタイヤはソフトでもミディアムでもどちらもアリのように見える。

 あとはより長い距離を走れると思われるミディアムを取るか、スタートの蹴り出しの良いソフトを取るかの選択になってくるのではないだろうか。

 また、「どれだけアンダーカットが有効か」を見るために、ルクレールのロングランの最終周にフェルスタッペンのロングラン1周目を重ねた。

 このグラフより、第2スティント頭のフェルスタッペンは第1スティント終盤のルクレールより2秒近く速い。このことから、今回は10周過ぎた辺りでライバルの後方2.0秒以内につけていると、アンダーカットの射程圏内ということになる。

 今年のマシンは後方乱気流の影響が小さく、1.2秒あたりからはクリアエアとみて良いため、2周目終了時に1.2秒差と仮定すると、そこから約10周で0.8秒を稼げるかor食らいつくかの勝負になってくる。これは、前方のマシンがアンダーカットレンジから逃れるためには、1周0.1秒以上のペースアドバンテージが必要ということを意味する。

 実際のレースではトラフィックの状況やタイヤのウォームアップ、新品効果も加味されるため、より複雑な展開となるが、この数字を頭に入れておくと勝負がクリアに見えてくるかもしれない。

3. チームメイト比較

 続いて比較可能なチームメイト同士を見ていこう。まずはメルセデス勢だ。

図4 ラッセルとハミルトンのレースペース

 ハミルトンは1度ペースを落とした後タイムが上がっているが、1周落としたことで電気エネルギー状態に余裕ができ、タイヤもクールダウンと思われ、均して見る必要があるだろう。そう考えれば、こちらは2人とも似たようなペースと考えて良さそうだ。

 また、2人とも第2スティント前提だったと考えるのは少々不自然だ。よって、ラッセルとハミルトンは燃料満タンだった可能性が高く、管理人は今回のメルセデスの速さは本物で、中団勢から完全に抜け出し、フェラーリ勢に近い競争力を持っていると考えるのが自然と見ている。

 続いてアルピーヌを見てみよう。

図5 アルピーヌ勢のレースペース

 こちらは2人で走り方を変えてきた模様だ。オコンはかなりプッシュしており、デグラデーションが大きい。一方でアロンソはマネジメントして走っており、6周目を過ぎるとタイムが逆転している。

 今回はペースを抑えてマネジメントすれば、かなりタイヤの状態に差をつけることができそうだ。よって、誰かの後ろに引っかかってしまった際、抜けるのであればすぐ抜くことは勿論だが、抜けるほどではない場合は素早い判断が重要だ。すなわち、後ろでじっくりタイヤを労り、デグラデーションに差をつけてから仕掛けるなり、クリアエアを得てから爆発的なペースを発揮するなり、という潔い選択を素早く決断できた者に美味しい展開が待っているだろう。

Analyst: Takumi