サンパウロGPスプリントレースが行われ、ラッセルが手負いのフェルスタッペンを抜き去りトップチェッカーを飾った。今回は24周のレースを振り返り、各車の競争力について可能な限りの情報を引き出してみよう。
1. レッドブルvsメルセデス
最初にラッセル、フェルスタッペン、ペレスのレースペースを図1に示す。
フェルスタッペンは非常に早い段階でデブリを拾ってダメージがあったとされている。実際ソフトタイヤ(以下ソフト)のペレスと比べても、9周目にペレスがマグヌッセンを交わしてクリアエアになると、その後は僅差ではあるが遅れをとっている。(注:12周目からラッセルとバトル、15,19,20周目は抜かれる際のペースダウン、19周目以降はフロントウィングも壊していたことは考慮して見る必要がある。)
今季レースペースでペレスに対して負けなしであることも踏まえると、ダメージの影響はコンマ数秒はあったと思われる。だが、クリアラップの安定感を見れば、ダメージを負う中でもその状況に適応し、マシンパフォーマンスを引き出していることが読み取れる。
一方、ペレスのクリアエアでのペースもあまり良くなさそうで、同じくソフトのラッセルより0.5秒ほど遅い。となれば、仮にフェルスタッペンにダメージが無かったとしても、ラッセルを引き離していけたかというと怪しい話になってくるかもしれない。レースではメルセデス勢がかなり強力そうに見える。
2. フェラーリ
続いて図2にサインツとハミルトン、図3にルクレールとサインツのレースペースを示す。
図2に着目すると、サインツは19周目、ハミルトンは20周目にフェルスタッペンを攻略したが、その後のペースはハミルトンの方が上回っている。
そこまでの文脈もハミルトンは6周目にマグヌッセンを交わしてからクリアエアでサインツに追いつくべく走っていたのに対し、サインツはフェルスタッペンとラッセルから距離を置いて本来より遅いペースでタイヤをセーブできる状態だった。
このことからも、ロングランではハミルトンがサインツに対して明確なアドバンテージを握っているように見える。
また、図3に示す通り、集団をかき分けてくる展開だったにも関わらず、クリアエアでのルクレールはサインツと互角となっている。ルクレールの地力が優っているならば、レースでサインツに追いついてポジションを入れ替えるか否かでドタバタする可能性が見えてくる。チームとしてはレース前からあらゆるパターンについて議論し、対策するのがベターだろう。
3. 中団勢の勢力図
続いては中団勢について見ていこう。
予選ではポールポジションを獲得したマグヌッセンだったが、レースではノリスの前をキープできなかった。それでもペース的にはガスリーと同等で、中団の中でも上位の力を有していたようだ。レースではアルピーヌ勢やベッテルから守り切るのは至難の業と考えられるだけに、自力での入賞にはあと一歩という所だが、少しの幸運があればトップ10入りも現実的な状態と言えるだろう。
ノリスはマグヌッセンの背後を追走し続けたが、前が開けるとマグヌッセンより0.5秒ほど速く、ベッテルと互角のペースを見せた。
特筆すべきはアルピーヌのアロンソで、2周目にフロントウィング交換のためピットストップを行ってからズバ抜けたスピードを見せている。ここまでの差があると、決勝では後方スタートながらすぐに中団上位まで追い上げてくる可能性が高いだろう。
アロンソに関して心配なのは、本来はこのようなミスを年に1度するかしないかのレベルだが、昨年のトルコGPに続き2年で2度目となってしまったことだ。
今回はオコンに対して頭に血が昇ってしまった面もあるだろうが、2年連続でノーミスのシーズンを送れなかった点は本来の力を考えるとやや気掛かりだ。
決勝レースは日本時間3:00からスタートする。天気は晴れる見込みなだけに、スプリントレースで垣間見えた力関係が継続するのか、何かが変わるのか、興味の尽きない展開となりそうだ。
Writer: Takumi