低中高速コーナー、ロングストレートそしてアップダウンと、凡ゆる要素が盛りだくさんのCOTA。フェルスタッペンが勝利でレッドブルのコンストラクターズタイトルを決定したアメリカGPを、今回もグラフを交えつつ振り返っていこう。
今回の優勝争いはフェルスタッペンとハミルトンによって行われた。両者のレースペースを図1に示す。
1. ハミルトンをカバーした好判断
第1スティントでは、両者ミディアムタイヤ(以下ミディアム)でフェルスタッペンが平均0.3秒上回るペースを見せた。ハミルトンのタイヤが先にタレてしまい12周目にピットインとなったが、レッドブルが翌周反応したのは賢かったと言えるだろう。
今回アンダーカットはそれほど有効ではなく、ピットストップ前の両者の4.8秒という差を鑑みれば、もう数周引っ張って第2スティント以降をライバルより新しいタイヤで戦うという選択肢もあったはずだ。
しかし引っ張れば引っ張るほど、ピットアウト時のハミルトンとの差は小さくなる。即ちピット作業で失敗があった場合に逆転される確率が高まるのだ。
今回のように純粋なスピード面でアドバンテージがあるなら、欲をかいてアドバンテージを広げようとするより確実に相手の前でフィニッシュできる戦略を選択するのが懸命だろう。今回もレッドブルの戦略は「勝負師」のそれであった。
2. 逆のタイヤでリスクを潰す
しかし第2スティントで両者ハードタイヤ(以下ハード)に交換すると様相が一変。ハミルトンがフェルスタッペンとの差を2秒以内に保ちながら追走する展開となった。
そして34周目、ハミルトンはアンダーカットに来る。これは勝機を見出す上でほぼ唯一の一手であり、頷ける選択だ。
しかし翌周反応したフェルスタッペンのピット作業で大幅なロスが発生。静止時間11.1秒となってしまい、ハミルトンどころかルクレールにすら先行を許してしまった。
因みに、ピットアウト後のハミルトンとのギャップから計算すると、この作業が2.5秒だった場合はハミルトンの1.4秒前で戻れていたことになる。レッドブルが先に動かなかったこと自体は正しかったということだ。
だが筆者がここで注目したいのは、レッドブルはフェルスタッペンにミディアムを装着したことだ。
この時レッドブルにはハードという選択肢もあったが(参考:スタート時の持ちタイヤ)、ここは2つの点でミディアムが正解だったと思われる。
まずミディアムの第1スティントでハミルトンを引き離し、ハードの第2スティントでは食い下がられたという事実だ。ドライバビリティの問題などもあったのかもしれないが、ミディアムの方が相性が良い可能性が高そうな状況だった。
さらにハミルトンにアンダーカットされる可能性は前述の通り高くはなかったものの、ピットストップが4秒近くかかってしまうと危ない状況だった。その場合コース上で交わすには相手と異なるタイヤを履いていた方が勝率は高まる。そして実際そうなった。
これらの点からレッドブルのミディアム選択はペース面、そしてリスクマネジメント面で優れた判断だったと言えるだろう。
3. フェルスタッペンの追い上げ
そして迎えた第3スティント。フェルスタッペンは39周目にルクレールを交わすと、1周平均0.3秒のペースでハミルトンを追い上げる。そして49周目にDRS圏内に入ると50周目に一発でオーバーテイク。鮮やかに首位に返り咲いた。
今回もレッドブルはストレートが非常に速かった。今年のレッドブルは、そこまで大きくないペース差でもオーバーテイクを実現し、逆にライバルにとって抜きにくいマシンであることが多い。このマシン特性もレース戦略の妙技と相まってチャンピオンチームをチャンピオンチーム足らしめているのではないだろうか。
Writer: Takumi
※この後Part2では、宙を舞って16番手から7位まで追い上げたアロンソ、レースオペレーション面で注目を集めている角田&アルファタウリなどについて取り上げる