パート1ではグランドスラムを達成したルクレールのレースを掘り下げたが、表の主役がルクレールならば、今回のレースには裏の主役がいた。1人は予選で輝きを魅せたアロンソ、もう1人はハードタイヤで57周を走って最後尾から入賞したアルボンだ。
1. アロンソはフロントローを狙えたか?
予選で驚異的なパフォーマンスを見せたのはアロンソだ。Q3の1回目のアタックでは、セクター2までルクレールを約0.2秒上回るスーパーアタック。しかしターン11の進入でまさかのハイドロリック(油圧系)トラブルが発生し、操作不能に。クラッシュして予選10番手となってしまった。
当サイトでは、アロンソがトラブルなく走り切った場合にどれだけのタイムが出ていたのか、できるだけ正確に予想してみよう。まずは以下にルクレールとアロンソのQ3の1回目のアタックの詳細を示す。
表1 ルクレールとアロンソの予選ラップ比較
因みにルクレールは2回目のアタックなのに対し、アロンソは1回目だ。
ここでルクレールとの比較において「コーナーでどれだけ離されたか」「ストレートでどれだけのアドバンテージがあったか」を導けば、アロンソの幻のS3が大よそ予想できる。
まずセクター1はストレートとコーナー3つ、セクター2は同程度のストレートとコーナー1つと見よう。ルクレールがアロンソに対してストレートでS秒、コーナーでC秒速いとすると、
S+3C=0.116 ①
S+C=-0.033 ②
となる。①式から②式を引くと2C=0.149が導かれ、C=0.075、S=-0.108が導かれる。
最終セクターはセクター1,2の8割程度のストレートと6つのコーナーと見て、上記SとCを代入すると
0.8S+6C=0.364
となる。すなわちセクター3でルクレールの0.364秒落ちの33.706だったことを意味し、ラップを走り切れば、1分18秒3(計算精度上、有効数字は小数点第1位までに)付近を記録していた可能性が高い。
Q3の1回目のアタックとしてはこれは2番手で、ペレスの1分18秒398とフェルスタッペンの1分18秒399を上回っている。もちろん2回目のアタックでどれだけゲインがあるかにもよるが、流石にルクレールには届かなくとも、トラブルがなければ2位か3位だった可能性が最も高いだろう。
レースではダーティエアの中でのデグラデーションが読みづらく、レースペースを算出することはできなかったが、2位や3位からミディアムでスタートしていれば表彰台をかけて戦うことも可能だったと思われ、本当に勿体無いレースだった。
2. 純粋に速かったアルボン
アルボンは最後尾スタートからハードタイヤで57周を走り切り、ラスト1周でミディアムタイヤに交換してタイヤ交換義務を果たし、10位入賞を勝ち獲った。以下にアルボンとラティフィ、そして基準として先頭のルクレールのレースペースを示す。
アルボンがクリアエアで走れているのは、VSCが明けてからの41周目からの部分だけだが、ここでのペースはラティフィを1.2秒ほど上回っている。因みにラティフィのタイヤは23周目に履き替えたものだ。
それまでアルボンがダーティエアの中でどのようなタイヤの使い方をしてきたかは正直わからない。しかしデグラデーションが単独走行時と同じ0.02[s/lap]の場合は、ラティフィとの地力の差は1.5秒、デグラデーションを0.00[s/lap]に抑えて走っていたとしてもラティフィとの差が1.2秒となり、これは大きなペース差だ。
ラティフィ自身は、レースペース分析からルクレールの2.7秒落ちと出ており、これはここまでの2戦のウィリアムズの戦闘力から考えて普通の数字だ。一方のアルボンはルクレールの1.2~1.5秒落ちだったことになり、これはマクラーレン勢の前後に位置することになる。
ストロールがトレインを形成し、ライバルたちがタイムを失う中、アルボンはこの好ペースでジョウ以下にピットストップ1回分の差をつけることに成功した。
今回のアルボンは戦略自体も上手くやったのは勿論だったが、そもそも素のレースペースが中団トップを狙えるほど優れていたことが大逆転劇につながった。
3. 次戦は聖地イモラ
さて、次戦の舞台はフェラーリのお膝元イモラだ。非常にチャレンジングなドライバーズサーキットであり、ここで誰がどんな活躍を見せるのか非常に興味深い。
また、オーバーテイクチャンスにも注目だ。抜きにくいサーキットで知られるメルボルンは、ペレスがハミルトンやラッセルを交わすシーンが見られたかと思えば、依然として抜きにくい一面も見られた。次戦イモラも非常に抜きにくいサーキット特性だが、今年のマシンでどういった展開になるのか、目が離せないポイントになるだろう。
聖地イモラで行われるエミリア・ロマーニャGPは4/22に開幕する。
Writer: Takumi