• 2024/11/21 17:50

2021年サウジアラビアGPレビュー(2)【中団トップは…?角田のアプローチは本当に正しいか…?】

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 ハミルトンとフェルスタッペンの熾烈な戦いに注目が集まったサウジアラビアGP。しかしその後方ではフェラーリのルクレールやアルピーヌのオコンが良いレースを見せた。

各ドライバーの使用タイヤはこちらのピレリ公式より

※レース用語は太字部分で示し、記事末尾に用語解説を加筆した

目次

  1. 出来が良かったルクレール
  2. オコンのベストレース?
  3. 苦戦のアロンソは上海のシューマッハ?
  4. 角田のレースペースは?
  5. 次戦は新レイアウトのアブダビ
  6. 用語解説

1. 出来が良かったルクレール

 今回のルクレールは、予選Q3での得意の一発で4番グリッドを獲得すると、レースペースでも非常に高い競争力を見せた。図1にハミルトン、ルクレール、オコンのレースペースを示す。

画像1を拡大表示

Fig.1 ハミルトン、ルクレール、オコンのレースペース

 ハミルトンとルクレールは共に第1スティントでクリーンエアだが、ここでのルクレールはハミルトンの0.9秒落ち程度だ。また、第2スティントではハミルトンが自分のペースで走れている部分と比較して、0.5秒程度の差となっている。しかもルクレールはサインツの2秒弱後方を走っていたため、実際はもう少し速く走れた可能性がある。
 今季、優勝したドライバーから1.0秒以内のレースペースは中団トップの中ではかなり先頭に接近できた時の数値で(2021年ページより各GPの勢力図分析をご覧いただければ幸いだ)、フェラーリは2台揃って(しかもサインツはミディアム)かなりの好ペースを見せた。似た速度域のシルバーストーンでも競争力を発揮しており、頷ける内容とも言える。

 それだけに、赤旗により1回目のタイヤ交換が無駄になってしまったことが悔やまれるが、こうした不運にペースを乱されず、自分たちのレースをオペレーションした点もチーム力として評価でき、フェラーリは明らかに変わってきている。

2. オコンのベストレース?

 今回はオコンが非常に良い走りを見せた。4位フィニッシュの背景にはライバルたちが10周目のセーフティカー時にタイヤ交換をした後に赤旗が出たことや、ペレスとルクレールの事故など、運の要因が大きいが、上記の図1では中団最速のルクレールからは0.6秒ほど遅れているものの、圧倒的に速いボッタス相手に怯まず、最後の最後までミスらしいミスをしなかった事が1つ目の評価できる点だ。初優勝を遂げたハンガリーでもベッテルの攻めに全く動じずミスをしなかったことから、これはオコンの一つの強みなのかもしれない。

 そして今回何よりもオコンが株を上げたのはペースの面でアロンソを大きく上回ったことだ。以下にアルピーヌ勢のレースペースを示す。

画像2を拡大表示

Fig.2 アロンソとオコンのレースペース

 レース後半のアロンソはクリーンエアでオコンより1秒以上遅いが、これは25周目のスピンでタイヤを傷めたことも寄与している思われる。とはいえ、1秒もの影響があれば、危険なほどの振動が出ていたと思わるため、地力でオコンが上回っていたのは確かだろう。
 加えて、アロンソはソフトに履き替えて1周アタックした際に、使い古したハードタイヤのオコンを僅かに上回る程度のペースしか刻めておらず、非常に苦戦していた。

 そんなアロンソを尻目にマシンを適切な状態にセットアップし、安定した走りを披露したオコンは賞賛され て然るべきだろう。

3. 苦戦のアロンソは上海のシューマッハ?

 一方でアロンソの不調ぶりは、復帰1年目で苦戦したミハエル・シューマッハの中国GPを彷彿とさせた。予選から流れが悪く、第1スティントでも一度は交わしたジョビナッツィやサインツに交わされ、角田にも迫られる展開は、まだ復帰2年目に向けて課題があることを露呈した。ミハエル・シューマッハも復帰後にはキマっている週末には往年のシューマッハの姿を披露したが、前述の中国を始めとするいくつかのレースで、セットアップに頭を抱えてしまっていたのが印象的だった。

 来シーズンに向けてアロンソが得意の問題解決能力をどう発揮してくるのか、楽しみに見守りたい。

4. 角田のレースペースは?

 今回は残念ながらベッテルとの接触で後退してしまった角田。その後はタイヤを履き替えて、自分のペースでの走行ができた。

画像3を拡大表示

Fig.3 アルファタウリ勢のレースペース

 タイヤのタレも含めるとトータルでガスリーの0.2秒落ちのペースだ。ただしガスリーより10周新しいタイヤで、そのうちレーシングスピードで走っていたのが7周なので、デグラデーションを0.03[s/lap]とすると、実力的には0.4秒落ち程度だったと考えられる。

 シルバーストーンやハンガリーでガスリーと互角のペースを見せていた頃と比べると若干の物足りなさはあるが、後半戦になってガスリーと0.5秒以上のレースペース差が常となってしまっていた中で、一つの光明にもなり得る走りだったのではないだろうか?

 一方で後半戦からアプローチを変えたものの、ガスリーとのレースペースの差は、比較可能なGPで、

バーレーン +0.6?
イモラ +0.3?
ポルトガル +0.3
アゼルバイジャン +0.1
オーストリア +0.2
イギリス 0.0
ハンガリー 0.0
オランダ +0.7
ロシア +0.6?
カタール +0.5

 となっており、明らかにハンガリーGPまでの方がパフォーマンスが良い。
 果たして現在の慎重なアプローチから、来年以降に向けての問題点の洗い出し、課題設定、問題解決に繋げられるのか?という点には筆者個人としては疑問に感じている。チーム内でよく検討して、中長期的な視野でベストな判断が為されていることを願いたい。

5. 次戦は新レイアウトのアブダビ

 最終戦アブダビは昨年レッドブルが席巻したサーキットだ。しかし、今年はレイアウトが2箇所大きく改修されており、勢力図の変化とともに、バトルの在り方も変わってくると考えられる。ストレートエンドのコーナーの改修はブレーキで強引に突っ込む戦術を取りにくくなると考えられ、最終戦でタイトル争いが最悪の形で決着してしまう不安を多少和らげてくれるのではないだろうか?

 泣いても笑っても最後。チャンピオンの称号は誰の手に?セットアップの難しいサーキットで中団勢の序列は?見どころをあげればキリがないが、一ファンとして10チーム20人それぞれの魅力を遺憾無く発揮してもらえれば何よりだ。

アブダビGPは以下のスケジュールで開催される。

FP1 12月10日 (金) 18:30 
FP2 12月10日 (金) 22:00 
FP3 12月11日 (土) 19:00 
予選 12月11日 (土) 22:00 
決勝 12月12日 (日) 22:00 

6. 用語解説

デグラデーション:タイヤのタレ。1周あたり〜秒という表現が多い。使い方次第でコントロールできる。