ハミルトン&メルセデスが辛くも勝利を収めたバーレーンGPから3週間。各チーム前戦のデータを元に対策をしてくるのに十分な時間をおいてイモラサーキットを舞台とするエミリア・ロマーニャGPが開催された。今回はそんなイモラでの各チーム・ドライバーの戦力・戦略・戦術を分析していきたい。
※レース用語は太字部分で示し、記事末尾に用語解説を加筆した
目次
- 予選が弱点のメルセデス
- 移籍組に厳しい雨レース
- 用語解説
1. 予選が弱点のメルセデス
前戦バーレーンGPレビューではハミルトンとボッタスの予選でのショートランでのタイム差が実質0.5秒前後あることを指摘したが、今回も0.4秒という差がついた。今回はボッタスがタンブレロでスライドしたことにより大差になっている。
この2戦の予選から言えることは、メルセデスの今季マシンは絶対的な性能値は高いが、予選での挙動は非常に不安定ということだ。ここでリアが不安定でも対処できるハミルトンが巧みに乗りこなしていると考えられる。タイム差という形で出たり、ドライビングエラーという形で出たりするが、本質は前回触れたスナッピーなリアエンドということだろう。今回はハミルトンもQ3の2回目のアタックでミスしており、ポールラップでもトサやアクアミネラーリでリアのナーバスさが感じられた。
昨年のレッドブルやフェラーリと同じような状況にも見え、ボッタスは昨年のベッテルやアルボン、あるいは一昨年のガスリーに近い試練に直面しているのかもしれない。
ハミルトンにしてもペレスのミス(リヴァッツァ1へのターンインが早かった)、フェルスタッペンのタンブレロでのコースオフに助けられたものであり、マクラーレンやフェラーリ(雨を見込んで予選を妥協したにも関わらず0.329秒差)にもメルセデスが今後もレッドブルと戦うためには予選でのドライバビリティの改善が急務である。
地力はレッドブルが集団のトップにおり、メルセデスとマクラーレンが接近、やや下にフェラーリ、アルファタウリと続く勢力図と思われバーレーンと大差は無いものの、かつての中団勢がより接近してきたように見える。
2. 移籍組に厳しい雨レース
雨のレースとなり、移籍&復帰組が苦戦した。以下にレッドブル、マクラーレン、フェラーリのレース前半のチームメイト比較を示す。
Fig1. VER & PER
Fig2. RIC & NOR
Fig3. LEC & SAI
フェルスタッペンとペレスはウェットでのペース差が大きく、ノリスもリカルドの後ろでつっかえてしまいチームオーダー発動となった。またサインツもコースオフを繰り返した。
サインツのペースは一部ルクレールと同等に見え、移籍組の中では中では健闘している。ただし、他の多くのドライバーが22周目以降の乾きつつある路面でタイムを落としているのに対し、ルクレールはしっかりとタイムを上げており、非常にタイヤを温存して走っていたことが分かる(Part2で詳述)。サインツとルクレールの14~20周目のペースが同等なのはそこも差し引いて評価する必要がある。
このほかアロンソもオコンに5秒離される場面があり、移籍&復帰組にとって雨は厳しいものとなった。レインマイスターと言われたミハエル・シューマッハも復帰初年度となった2010年のスパでウェットコンディションでのペースが悪かったのが印象的だ。シューマッハのウェットペースは2011年からは本来の競争力に戻っており、年齢によるものよりブランクの影響が大きいと考えられる。アロンソのペースもブランク克服にやや時間を要するもののいずれ戻ってくると考えられる。
Part2では、上位勢のレースをドライチェンジから逆算したマネジメントの観点からレビューする。
3. 用語解説
スナッピー:リアタイヤが突然滑りオーバーステアが出る現象。ドライバーの予想外の急激な動きのためスピンにつながることが多い。