F1はその伝統と歴史のみならず、チャレンジングなレイアウトで名高いドライバーズサーキット “イモラ” へとやってきた。今回も分析的視点でレースを振り返っていこう。
1. 苦しい中で勝ち獲った優勝
今回のレッドブルは決して圧倒的とは言えない状況だった。その中で勝利を勝ち獲れたのは、フェルスタッペンがズバ抜けたパフォーマンスを発揮したからに他ならないだろう。
まず予選では、ペレスがQ2落ちを喫する中で、フェルスタッペンは僚友に0.530秒差をつけてQ3に進み、最後はヒュルケンベルグのトゥをもらえる幸運もあったものの、ポールポジションを獲得することができた。
以下はQ2でのペレスとのテレメトリデータの比較である。
フェルスタッペンは、特にタンブレロで大きく稼いでいるが、その他の区間のどこを取っても少しずつ速い。ちなみに、この傾向はQ1でも同様であり、今回のフェルスタッペンが難しいマシンを腕でグリッドの前方に持ってきたことがわかる。
またQ3でのノリスとの比較も示す。
アタック開始時にヒュルケンベルグのトゥを使えたことで、ノリスに対して0.18秒ほど、自身のトゥなしのアタックと比較しても0.14秒稼いでいる。その後の走りも流石のもので、グングンと差を広げたが、リバッツァ2が上手く決まらず(Q3最終アタックに限らず、全体的に他チームに負けていた。)、最終的にはノリスまで0.091秒差でのポールポジション獲得となった。
したがって、トゥがなければ、2番手スタートになっていた可能性が高い。そして、優位に立てるミディアムでノリスの後ろで引っ掛かってしまい、アンダーカットを仕掛けたとしても、ハードで優位なノリスにオフセットを作られて追い上げられ、非常に厳しい展開になっていただろう。したがって、ヒュルケンベルグの存在は、今回の勝利の一つのキーとなったのは間違いないだろう。
さて、レース展開については、見た目通りではあるが、レースペースグラフを載せておこう。
第1スティントでは普段通りのフェルスタッペンの独走劇のように映った。ここではフェルスタッペンが平均で0.3秒のペースアドバンテージを持っていた。そしてハードタイヤに履き替えても、スティント前半は6秒前後の差をキープし、レースを支配しているように見えた。
しかし、スティント後半、ノリスがペースアップしても、フェルスタッペンは反応することができず、あっという間に差は縮まり、57周目にはその差は2秒以内まで縮まった。ここからは、タービュランスの影響を受けながらも、スライドするマシンをねじ伏せて攻めるノリスと、それをDRS圏内に入れぬよう全力で逃げるフェルスタッペンという、実に迫力のあるレースとなった。
先に行ったレースペース分析では、第2スティントではノリスの方が平均0.11秒速く、ノリスのタイヤが2周古かったことを、デグラデーションを0.04[s/lap](フューエルエフェクト0.06[s/lap]に対し、ラップタイムが0.02秒ずつ上がっていくため)として計算すると、0.11+0.08=0.19[s]、すなわち、ノリスが0.2秒速かったことになる。
また、フェルスタッペンはペレスよりもイコールコンディションで0.7秒ほど速く、まさに全力を振り絞っての勝利だった。2022年の後半戦以降、フェルスタッペンにとってここまで緊迫した状況になるのは稀であるが、その中でも決してベストとは言えないマシンで優勝を掻っ攫っことには非常に価値があるだろう。
2. 次戦は伝統のモナコ
さて、次はF1カレンダーの中でも最も象徴的なレースの一つ、モナコGPだ。昨年は予選が一つのハイライトとなり、オコン、ルクレール、アロンソと順にトップタイムをマークし、最後はフェルスタッペンが、壁に当たりながらの極限のアタックでポールポジションをもぎ獲った。
今季も、一年でも最も重要な土曜日となると考えられ、伝統の市街地サーキットでのスリリングな戦いが、今から楽しみにしつつ、末筆としよう。
Writer: Takumi