Part1ではフェルスタッペンとハミルトンの優勝争いにフォーカスしたが、こちらでは14番手スタートから追い上げたアロンソのレースを振り返っていこう。
1. アロンソのレースの振り返り
図1にアロンソとオコンのレースペースを示す。
アロンソは14番手スタートからガスリー・ノリス・ボッタスの集団の背後でレースを進めた。この段階では無線で「静かにしていよう」と語っており、ハードタイヤ(以下ハード)を長く持たせる方向で考えていたようだ。
そしてSCが入るとピットへ。ここでライバル勢より新しいミディアムタイヤ(以下ミディアム)に交換した。
リスタート時にはターン1でガスリーをクロスラインで仕留め、バックストレートでストロールを抜きにかかった。
しかし、この時ストロールがラインを変更するタイミングが遅く、アロンソが追突する形に。マシンは宙を舞ってしまう。しかし奇跡的に深刻なダメージはなく、ピットに戻ってフロントウィングを交換し、レースを続行することができた。尚、アロンソは「右よりも左に曲がる」と報告している。
これにより16番手まで下がったアロンソ。しかしここからの追い上げは見事だった。
まず28周目にラティフィ、31周目にリカルド、33周目にはアルボンを交わした。この中でラティフィとアルボンはタイヤの面で特に差がなかった。また図1より、アルボンとはそこまで大きなペース差があったわけではないことも見えてくる。これらの点からもアロンソのオーバーテイク技術の高さが伺える。
そしてすぐにオコンの後方まで迫ると、40周目にポジションを入れ替え。グラフを見ると、オコンはアロンソが後ろに来た時点でペースを上げており、アロンソの壁にならないようにしたものの、そのペースでは無理がありタイヤがタレてしまった形跡が伺える。逆にアロンソはこのペースでも抑えており、前が開けるとペースアップしている。
驚くべきことに、アロンソにはまだ余裕があった。効率的2ストップを選択したノリスが追い上げてくると、さらにペースを大幅に上げている。
12周新しいタイヤを履くノリスに対しても何周かに渡ってディフェンスを見せ、最終的には抜かれたものの7番手でフィニッシュした。
2. レースペースの鬼
これらレース後半の一連の流れから、今回はオコンとの間に非常に大きな差があったことが分かる。ノリスやハミルトンを介して間接的に比較すると、少なくともハードでは1.2秒のペース差があったと思われ、イギリスGPに続いて再び1秒以上の差がついたことになる。
さて、アロンソの今季のレースペースについて見ていこう。表1に今季のオコンとのレースペース比較を示す。
表1 アロンソとオコンのレースペース
実は今季のアロンソは前半戦でレースペースの不調に見舞われていた。全く新しいマシンやタイヤへの適応の面で苦戦したのかもしれないが、レースペースで年間3度チームメイトに敗れることは07年のハミルトンを除けば皆無で、昨年のブランク明けよりも悪いほどだった。
しかしアゼルバイジャン以降は連勝に次ぐ連勝で、チームメイトを寄せ付けないスピードを見せ続けている。ハミルトンやミハエル・シューマッハもそうであったように、前半戦はチームメイトに敗れることがあっても、シーズンが進んでマシンやタイヤへの理解が深まるとハズレがなくなるということなのかもしれない。
レース後の無線では「本当に彼の前でフィニッシュしたかったけど、最後のアブダビにはね。任せてくれ。」と語っており、チームメンバーにとっては頼もしいと同時に、首脳陣としては手放したことを後悔しそうな状況かもしれない。
Writer: Takumi
※本来アロンソと角田を扱う予定だったが、便宜上記事を分け、この後Part3にて角田&アルファタウリについて取り上げる