ハンガリーGP後に突如発表されたアロンソのアストンマーティン移籍。来季はストロールと組んでシルバーストーンのチームを上位へ押し上げるべく奮闘することになるだろう。
この記事では現時点でのアルピーヌとアストンマーティンの力関係を分析する。それが来季以降の展開を予想するのに多少は貢献するかもしれない。
1. これまでのドライバーパフォーマンスの確認
1.1. 予選
現在当サイトでは2000年以降の予選についてチームメイト分析を行い、間接的な比較を通して歴代ドライバーの予選一発の競争力について考察し、一定の結論を得ている。それを踏まえると2チーム4人の競争力は表1のようになる。
表1 予選パフォーマンス比較
ただし、ベッテルの数値は2019年までのパフォーマンスを基準にしており、21年後半戦と、22年前半戦に関しては、ストロールを0.1秒程度しか上回れていない。また19年にルクレールに0.242秒差で敗れたが、20年には0.345秒に開いてしまった。したがって、アストンマーティンの競争力を測る際に、ベッテルが全盛期と同様の力を有している前提では考えない方が利口だろう。
よって、本記事ではアロンソとストロールを比較対象とする。
参考
・歴代トップドライバーの競争力分析
・ベッテルの対チームメイト比較
1.2. 予選
レースペースについては、アロンソに関して注意が必要だ。これまでの対フィジケラ、マッサ、オコンらを見ていくと、アロンソはレースペースで予選と比べて0.1~0.2秒ペースアップする傾向がある。
一方、ストロールは過去数年にわたる定量的な分析はまだ行っていないものの、ここ2年のベッテルとの関係やこれまでの経緯を大まかに振り返る限り、特に極端な「予選型」「レースペース型」という傾向は無さそうに見える。
よってアロンソとストロールの差を0.6~0.7秒としておくのが妥当だろう。
2. 今季のパフォーマンス分析
2.1. 予選
今季の予選比較は表2のようになる。
表2 アロンソとストロールの予選比較
ここに表1のドライバーパフォーマンス差を加味すると、現時点ではアルピーヌの方が0.1秒ほど上回っているといえるだろう。
2.2. レースペース
今季の予選比較は表3のようになる。
表3 アロンソとストロールのレースペース比較
ここに1.2.項で考察した力関係をそのまま加味すると、現時点ではアストンマーティンが0.1~0.2秒ほど上回っていると言えるだろう。
ただし、今季序盤戦でのアロンソはレースペースに苦しんでおり、それによって前半戦の平均値に0.1~0.2秒ほど影響を及ぼしていることが、オコンとの比較を通して分かっている。
よって、今季前半戦のアロンソはストロールを0.5秒上回る程度だったと考えられ、その前提だとアストンマーティンとアルピーヌのマシン自体は互角ということになる。
2.3. 総括
現状では中団最上位を争っているアルピーヌと、コンストラクターズランキング9位のアストンマーティンだが、ドライバーの力の影響も大きい。予選ではややアルピーヌが上回っていると言えないこともないが、誤差範囲内とも言えるレベルで、両チームの力は接近しており、単純計算上はドライバーを逆転させれば結果は逆転する程度だ。
ただし、ストロールは若いドライバーで、ベッテルの力が落ちたのではなくストロールが成長したという可能性を完全に否定するのも間違っているだろう。その場合、現在のベッテルが2019年までの力を発揮している前提で考えると、アルピーヌのマシン性能をあと0.2~0.3秒ほど上方修正することになる。
現在のベッテルとストロールがどういう状態なのか?そしてアルピーヌとアストンマーティンの現時点での競争力はどうなっているのか?今後2年のアロンソとストロールのペース差が、その問いに答えを出してくれるだろう。
Writer: Takumi