※7/10 17:37:表3のストロールの数値を修正
1. 分析結果と結論
各タイヤごとの各車のレースペースの力関係を表1,2に示す。
表1 ソフトタイヤでのレースペース
表2 ミディアムタイヤでのレースペース
そしてここまでを総合してレース全体でのレースペースの力関係を求めると、表3のようになる。
表3 全体のレースペース
☆注意点
ラッセルはハミルトンと逆のタイヤ選択だったため、それぞれのペースから連立方程式を解いて求めた。また、その解から得られたソフトとミディアムの差から、第1スティントのアルファタウリ勢のペースを求めた。
またソフトでの最終スティントについて、素の状態ではアロンソがフェルスタッペンの0.9秒、ボッタスが1.1秒、角田が1.3秒、デ・フリースが1.4秒落ちとなったが、フェルスタッペンは全力で走っていなかった可能性が高い。アロンソとの差はミディアム装着時と大差ないが、ソフトでのアロンソはミディアム装着時には上回っていたアルボンにも攻め立てられており、ソフトでのアロンソは競争力を落としていたと見るのが自然だ。
ここで、アルファタウリ勢について、第1スティントではデ・フリースの方が0.4秒速かったが、最終スティントでは角田の方が0.1秒速かった。これを前述の最終スティントでの力関係に当てはめる(角田の方が安定したパフォーマンスを発揮したことを前提とする)と、フェルスタッペンが0.4秒ほど抑えて走っていたことが読み取れるため、ソフトでのアロンソはフェルスタッペンの1.3秒落ち、ボッタスは1.5秒落ちと評価でき、表1の結論を得た。アロンソの周囲との力関係の変遷からも極めて妥当と考えられる。
レースペースを振り返って
フェルスタッペンが圧倒的なスピードを見せた。一方でペレスは後方からゆっくりとしか追い上げて来れず、クリアエアを得てからも今ひとつのペースとなった。レッドブルのドライバーがペレス2人だった場合、RB19に対する評価も現在とは180度変わっていたかもしれず、どのような条件下でも安定してパフォーマンスを最大化するフェルスタッペンという特別な存在がいかにレッドブルにとって大きなものかが分かる。F1におけるドライバーの重要性が顕在化している一例だ。
また、マクラーレン勢の速さは本物で、フリー走行で印象的なペースを見せたメルセデス(特にハミルトン)をも2台揃って凌駕した。2戦連続でフロントリミテッドのトラックで好調を示したが、今後リアリミテッドのトラックでどのような競争力を示すか、注目したい所だ。
2. 分析方法について
フューエルエフェクトは0.07[s/lap]とし、グラフの傾きからデグラデーション値を算出。タイヤの履歴からイコールコンディションでのレースペースを導出した。また、クリア・ダーティエアやレースの文脈も考慮している。
また、スティント前半でダーティエアでも、途中からクリアエアになっており、かつ前半のダーティエア内でもタイヤを労われていて極端なペースダウンでもない場合、スティント全体をクリアエアのように扱ってよいと考え、当サイトではその状態をオープンエンドクリアエア(OEC)と定義している。
今回は予選で使用したソフトと新品ソフトの差、スクラブ済みと新品のミディアム・ハードの差は無視することとした。
※今回も「全車の走行状態」を割愛し、各チーム毎のレースペースグラフは下記「3.付録」に示した。
3. 付録
参考までに、分析に使用したグラフを添付する。
Writer: Takumi