• 2024/11/21 17:44

2023年オランダGPレビュー 〜いかなる条件下でも完璧〜

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 4週間の夏休みが終わり、2023年のF1もいよいよ後半戦の開幕だ。その舞台オランダGPは起伏に富んだ難コース「ザンドフールトサーキット」で開催された。

 GP週末は予選・決勝を通じて激しい天候変化が影響し、ドラマに満ちた展開となった。この記事では、各チーム・ドライバーの活躍を、データを交えながら振り返っていこう。

1. いかなる条件下でも完璧だったフェルスタッペン

 今回のレースは、スタート直後に雨が降って、殆どのドライバーがインターミディエイトへ交換、その後ドライへ、そして終盤には大雨で赤旗中団となり、残り6周で再開という、レースの難しい要素を考えられるだけ詰め込んだかのような、非常にチャレンジングなレースとなった。

 その中で、完璧なレースを展開して、F1史上最多タイとなる9連勝を達成したのがフェルスタッペンだ。

 フェルスタッペンはポールポジションから完璧にレースをコントロールしてみせたが、完全な一人旅というわけでもなかった。

 序盤の雨に関しては、1周目にインターに換えるのが正解で、フェルスタッペンは1周遅れてしまったために、コースに戻った際にはペレスが独走状態、ジョウやガスリーにも先行を許して、実質的な4番手となっていた。

 しかし6周目にガスリー、7周目にはジョウをなんとターン3で交わした。雨天時はDRSが使えないため、このようにコーナーで仕留める力を持ったドライバーは非常に強い。ターン3は大きなバンクがついており、アウト側が絶対的に有利なレコードラインだ。しかしフェルスタッペンはインから相手のラインを上手く潰しつつ抜き去っていった。

 そしてここからが、雨に強いフェルスタッペンの真骨頂だ。図1にフェルスタッペン、ペレス、アロンソのレースペースを示す。

図1 フェルスタッペン、アロンソ、ペレスのレースペース

 序盤のウェット路面ではフェルスタッペンのペースが群を抜いており、ペレスよりも1秒以上速い。このハイペースによって、ドライタイヤに履き替える直前の11周目までにペレスとの差を2.7秒まで詰めることに成功した。そしてこれがアンダーカットへと繋がることになる。

 ドライでのペースもペレスを平均0.3秒上回っており、これも文句なしと言って良いだろう。

 そして何といってもミスをしない所が素晴らしい。ここ最近のフェルスタッペンの走りにはツッコミどころが殆どなく、今回もこれほど変化の激しいコンディションにも関わらず、終始非常に安定していた。この走りならば、ベッテルの記録に並ぶ9連勝も誰もが納得することだろう。 

2. いかなる条件下でも完璧だったアロンソ

 今回のような難しいレースで、フェルスタッペンと同様に輝きを放ったのがアロンソだ。

 アロンソはまずスタートで魅せた。ターン2でアルボンのアウト側に並びかけると、そのままターン3でインを取り、ラッセルの前まで出てしまった。このラインは立ち上がりの速度を犠牲にすることになるが、ラッセルの前に自身のマシンを置き、行き場を塞ぐことでオーバーテイクを成立させた。

 そして2周目には、濡れた路面をドライタイヤで走る難しい条件の中、再びターン3でノリスを交わした。ここでもインから抜いているが、これは1周目の追い抜きとは本質的に異なる。濡れゆく路面ではラバーが乗っているレコードラインを外した方がグリップしやすい。だからこそ、通常のドライラインを走ってしまったノリスよりも、イン側のアロンソの方がスムーズにトラクションを駆けられたと考えられる。このコーナーはバンクによってアウト側の優位性がかなり高いため、ドライ時と同じラインを選んだノリスの気持ちもよく分かるが、ここはアロンソの判断が正解だった。

 そしてアロンソもフェルスタッペンと同じく2周目にピットイン。順位を下げてしまったが、6周目のターン10でルクレールのインを突いて交わすと、フェルスタッペンほどではないものの、ペレスよりは明確に速いペースで周回。ジョウ、ガスリーの背後につけた。

 そしてジョウと同時にドライタイヤに履き替えると、ジョウのミディアムタイヤが温まる前にターン3でインを突きオーバーテイク。この時イン側は濡れていたことを考えると、かなり凄まじい動きと言える。おそらくピットレーン出口とターン2でジョウのタイヤのグリップを把握したのだろう。そして、あの速度差で飛び込めば、進入では濡れたイン側で踏ん張って、アウト側に出てからマシンの向きをしっかり変えて綺麗に完遂できる、そういったコンセプトだと考えられる(と言いつつ進入時でもかなり車の向きを変えられているが…)。この引き出しの多さには感心せざるを得ない。

 ちなみに、ドライでのペースはフェルスタッペンの0.5秒落ち、ペレスよりも0.2秒遅い程度で、ガスリーを0.1秒上回るレベルだった。ここ最近のレースで序盤戦の勢いを失っていたアストンマーティンだが、このペースを見る限りかなり復調したように見える。

 その後の雨でもペレスがコースオフする中、フェルスタッペンと同じく全く危なげない走りを見せ、堂々の2位チェッカーをもぎ獲った。

3. まとめと展望

 路面のうねり、低・中・高速コーナー、複合コーナー、道幅の狭さ、グラベル…と、ただでさえ難しいザンドフールト。その中で目まぐるしく変わるコンディションという、考えられうる最もチャレンジングな条件下で、偉大なチャンピオン2人の腕前が光った。

 この2名は前半戦総括レビューでも触れた通り、絶対的なペースでチームメイトに0.4秒という大差をつけている。速さ、安定性、バトル技術、チームとのコミュニケーション等々、全てにおいて非常に高いレベルにいるのは明白だ。モナコGP予選での白熱のアタック合戦も記憶に新しい。

参考:前半戦レビュー(1)

 ここからの後半戦、モータースポーツの最高峰F1で彼らがどんなものを魅せてくれるのか?そしてハミルトンやルクレール、ノリスらも絡んでどのようなバトルが生まれるのか?非常に楽しみな3ヶ月9戦の幕開けだ。

Writer: Takumi