以下の2点に的を絞って分析を行う。
・チームメイト同士の比較
・主なライバル同士の比較
1. 分析方法について
フューエルエフェクトは0.07[s/lap]とし、グラフの傾きからデグラデーション値を算出。タイヤの履歴からイコールコンディションでのレースペースを導出した。計算方法については「6. 付録2」に記した。
また、クリア・ダーティエアやスティントの長さ、プッシュするインセンティブなどのレース文脈も考慮している。定量的に導出できないドライバーについては結論を出さず、信頼できる数字のみを公開する方針としている。
また、スティント前半でダーティエアでも、途中からクリアエアになっており、かつ前半のダーティエア内でもタイヤを労われていて極端なペースダウンでもない場合、スティント全体をクリアエアのように扱ってよいと考え、当サイトではその状態をオープンエンドクリアエア(OEC)と定義している。
また、分析対象はドライコンディションのみに限定している。
今回は予選で使用したソフトと新品ソフトの差、スクラブ済みと新品のミディアム・ハードの差は無視することとした。
2. チームメイト同士の比較
2.1. レッドブル勢の比較
両者ミディアムの第1スティントにて、L8~33を平均すると、フェルスタッペンはペレスより0.85秒速かった。四捨五入して「フェルスタッペンはペレスより0.9秒速かった」と結論づける。
2.2. フェラーリ勢の比較
サインツは最終的に離されているので、OECとして扱う。
両者ミディアムの第1スティントにて、L8~33を平均すると、ルクレールはサインツより0.13秒速かった。四捨五入して「ルクレールはサインツより0.1秒速かった」と結論づける。
2.3. メルセデス勢の比較
スティントの長さとデグラデーションの傾向が異なるため、直接の比較はできないが、3項にてフェルスタッペンを介した間接的な比較を行う。
2.4. RB勢の比較
両者ミディアムの第1スティントにて、L16~34(L30を除く)を平均すると、ローソンは角田より0.10秒速かった。「ローソンは角田より0.1秒速かった」と結論づける。
3. 主なライバル同士の比較
先に使用したグラフを掲載する。
3.1. 第1スティントのフェルスタッペンとノリス(図5)
ノリスはスティント終盤に離されているので、OECとして扱う。
両者ミディアムの第1スティントにて、L6~34を平均すると、フェルスタッペンはノリスより0.06秒速かった。四捨五入して「フェルスタッペンはノリスより0.1秒速かった」と結論づける。
3.2. 第1スティントのフェルスタッペンとラッセル(図5)
両者ミディアムの第1スティントにて、L6~22を平均すると、フェルスタッペンはラッセルより0.38秒速かった。フェルスタッペンのデグラデーションを0.02[s/lap]、ラッセルの17周目までのデグラデーションを0.01[s/lap]、それ以降を0.07[s/lap]として、両者の平均スティント長である29周のスティントを走ったと仮定すると、「フェルスタッペンはラッセルより0.6秒速かった」と結論づけられる。(※計算方法は6.2.に記載)
3.3. 第1スティントのフェルスタッペンとルクレール(図5)
両者ミディアムの第1スティントにて、L10~34を平均すると、フェルスタッペンはルクレールより0.26秒速かった。四捨五入して「フェルスタッペンはルクレールより0.3秒速かった」と結論づける。
3.4. 第1スティントのフェルスタッペンとハミルトン(図6)
両者ミディアムの第1スティントにて、L8~32(L28を除く)を平均すると、フェルスタッペンはハミルトンより0.86秒速かった。四捨五入して「フェルスタッペンはハミルトンより0.9秒速かった」と結論づける。
3.2と3.4で得られた知見を合わせると、ラッセルがハミルトンより0.3秒速かったことも導ける。
3.4. 第1スティントのフェルスタッペンとマグヌッセン(図7)
両者ミディアムの第1スティントにて、L13~26を平均すると、フェルスタッペンはマグヌッセンより1.39秒速かった。四捨五入して「フェルスタッペンはマグヌッセンより1.4秒速かった」と結論づける。
3.5. 第1スティントのフェルスタッペンとアロンソ(図7)
両者ミディアムの第1スティントにて、L14~33を平均すると、フェルスタッペンはアロンソより1.34秒速かった。四捨五入して「フェルスタッペンはアロンソより1.3秒速かった」と結論づける。
3.6. 第1スティントのフェルスタッペンとガスリー(図7)
ガスリーはスティント終盤ではクリアエアとなっている。OECと見るのに十分かは判断が難しい所だが、ガスリーにとってやや不利な数値であることを念頭においた上で、比較を行おう。
両者ミディアムの第1スティントにて、L13~33(L21を除く)を平均すると、フェルスタッペンはガスリーより1.18秒速かった。四捨五入して「フェルスタッペンはガスリーより1.2秒速かった」と結論づける。
3.7. 第1スティントのフェルスタッペンとローソン(図8)
両者ミディアムの第1スティントにて、L14~34を平均すると、フェルスタッペンはローソンより1.97秒速かった。四捨五入して「フェルスタッペンはローソンより2.0秒速かった」と結論づける。
3.8. 第1スティントのフェルスタッペンとジョウ(図8)
両者ミディアムの第1スティントにて、L15~34を平均すると、フェルスタッペンはジョウより1.42秒速かった。四捨五入して「フェルスタッペンはジョウより1.4秒速かった」と結論づける。
3.9. その他
第2スティントについては、クリアエアで全力で走るインセンティブが十分あったドライバーは少なく、今回は比較は行わないこととした。
4. まとめ
以上の分析から以下のことが言える。
まず、第1スティントでミディアムタイヤを履いたドライバーに関しては、表1のような力関係であることがわかった。
表1 レースペースの勢力図 1
フェルスタッペンとノリスが拮抗した速さを見せ、緊迫感のあるレースになった。また、予選では速さを見せたメルセデスだったが、レースペースではデグラデーションが大きく、厳しい戦いとなった。
また、アルピーヌのガスリーが高い競争力を示した。前述の通り、ガスリーの数値はやや不利な値が出ている可能性があることも踏まえると、マグヌッセンに引っかかっていなければ、ペレスやハミルトンから大きく離されずについていけたかもしれない。
5. 付録 1
付録として、今回使用しなかったグラフを掲載する。
6. 付録 2
6.1. 両ドライバーのデグラデーションが一定の場合
6.2. デグラデーションが途中で変化する場合
Writer: Takumi